「もう一度、日本代表に」 重傷から復帰で決意…フル出場で示した“覚悟”「自分がいれば」
長期離脱から完全復活に近づいている柏レイソルMF熊坂光希
右膝に負った大怪我で長期離脱を余儀なくされてきた柏レイソルの大型ボランチ、熊坂光希が新たな目標を胸に秘めて完全復活を遂げつつある。
14日のJ1リーグ・東京ヴェルディ戦で、昨年5月以来となる先発フル出場を達成。今夏に開催された北中米ワールドカップ(W杯)でスペイン代表を優勝に導いたアンカーで、大会MVPにも輝いたロドリのプレーを強く意識するようになった25歳は、柏に続いて日本代表への挑戦も加速させていく。(取材・文=藤江直人)
ごく自然なやり取りのなかで、世界のサッカー界で注目を集めている選手の名前が飛び出した。
4シーズンぶり6度目の開幕連勝をマーク。町田ゼルビアとサンフレッチェ広島に次ぐ3位につける好調の柏レイソルのボランチとして大きな存在感を放つ熊坂光希が、意識する中盤の選手を尋ねられたときだった。
「ロドリ選手ですね」
W杯北中米大会を制したスペイン代表のキャプテンおよびアンカーとして、大会最優秀選手(MVP)にあたるアディダス・ゴールデンボール賞を受賞。新シーズンの開幕を前にプレミアリーグのマンチェスター・シティからラ・リーガのバルセロナへ移籍した30歳の名前をあげた熊坂は、さらにこう言及した。
「攻守両面でロドリ選手がスペインの中心だし、自分もそういう選手になれれば、と思っています」
北中米W杯を視聴していても自然とスペインに、そのなかでも「16番」を背負うロドリの一挙手一投足に目を奪われていた。そしてスペインが勝ち進むとともに、熊坂のなかでこんな思いが頭をもたげてきた。
「もう一度、日本代表に入る。ワールドカップを見ていて、そういう決意がより強くなりました」
柏のアカデミーで育ち、東京国際大学を経て柏へ加入して2年目の昨シーズン。スペイン出身のリカルド・ロドリゲス監督のもとで大ブレークを果たし、6月シリーズに臨む森保ジャパンにも大抜擢された。
すでに北中米大会を決めていた状況で、出場歴が少ない選手が数多く招集されたアジア最終予選。敵地で行われたオーストラリア代表戦をリザーブで終えていた熊坂は、帰国後の10日にパナソニックスタジアム吹田で臨むインドネシア代表との最終戦でのデビューへ向けて、大阪・堺市内で行われた練習に参加した。
しかし、好事魔多しと言うべきか。怪我のために森保ジャパンを離脱したと日本サッカー協会(JFA)から発表された9日に、柏からは「右膝前十字靱帯断裂」と怪我の詳細が発表された。熊坂が振り返る。
「一番いいときに怪我をしてショックでしたし、もちろん悔しい思いもしましたし、すごく落ち込みました」
開幕から18試合連続で出場し、そのうち17試合で先発フル出場を果たしていたJ1リーグでの軌跡も、5月25日の横浜FCを最後に途切れた。6連勝でフィニッシュしながらも、優勝した鹿島アントラーズに勝ち点わずか1差の2位で終え、2011シーズン以来の優勝を逃した悔しさをチームメイトたちと共有した。
「あと一歩で優勝できたところに自分がいればもしかしたら、とも思いました。ただ、それはたらればの話だし、だからこそACLエリートもある今シーズンにかける思いは本当に強いものがありました」
こう振り返った熊坂は、ジェフ千葉をホームの三協フロンテア柏スタジアムに迎えた5月23日のJ1百年構想リーグ地域リーグラウンドEAST最終戦で復帰。大歓声を浴びるなかで後半34分からピッチに立った。
好感触とともに迎えたオフには、4年に一度のサッカー界最大の祭典から刺激を受けた。身長190センチ、体重90キロのロドリには及ばないものの、熊坂も185センチ、80キロと日本人のボランチでは恵まれた巨躯を誇る。
「自分にしかない武器みたいなのがあると思うし、特徴もあると思うし、そういうところはレイソルのなかでもすごく出せている。自分が再び代表を目指すのであれば、そういう部分をもっともっと出していきたい」
新シーズンをにらむ25歳が力を込めた「そういう部分」とは何か。熊坂はこんな言葉を紡いだ。
「中盤での高さや守備範囲の広さ、ボール奪取力というものはやはり自分の特徴だと思うので」
8月1日の千葉とのちばぎんカップで先発に復帰した熊坂は26分間プレー。8日の水戸ホーリーホックとの開幕戦でさらに80分に伸ばすと、14日の東京ヴェルディ戦ではついにフル出場を果たした。
「開幕に合わせていたし、もっとできる部分もありますけど、感覚的には8割くらいなのかな、と」
ヴェルディに3-1で逆転勝利したMUFGスタジアム(国立競技場)内の取材エリア。森保ジャパンに初招集された昨年6月時と比べたコンディションを「8割」とした熊坂は、右膝に大怪我を負った瞬間から抱いてきた思いや自身の現在地を振り返るとともに、柏に代表を加えた今後へ向けてさらにこう続けている。
「自分的にも個人で違いを作るというよりは、周りとの連係やポジショニングを大事にしています。そのなかでとにかく怪我をせずに、このまま試合に出場し続けるのが大事だと思っていますし、チームが勝ち続けるほど自分に対する評価も上がってくるので、まずはチームのために全力を尽くしていきたいですね」
9月下旬からの4連戦を含めて代表戦は年内に6試合が予定され、来年1月にはサウジアラビアで開催されるアジアカップが待つ。不慮のアクシデントとともに、無念の“一時停止”を余儀なくされた日本代表での挑戦へ。森保一監督が大きな期待を寄せる大型ボランチのなかで、止まっていた時計が大きく、そして力強く動き出した。(藤江直人 / Naoto Fujie)

