さて、問題。スペイン語のアルファベットの数はいくつでしょうか?【まいにちスペイン語】
テキスト『まいにちスペイン語』の連載「スペイン語をめぐる『素朴な疑問』」では、スペイン語講師の木越勉さんが、スペイン語の仕組みや文法、地域性などを毎月解説。スペイン語にまつわるエトセトラを伝えるコラムも人気があります。
今回ご紹介するのは、2026年4月号よりコラム「スペイン語のアルファベット物語」。スペイン語のアルファベットの変遷をひも解いてみましょう。
※本記事はデジタルマガジン向けに編集しています。
『まいにちスペイン語 2026年4月号』書影
スペイン語のアルファベット物語
スペイン語のアルファベットはalfabetoまたはabecedarioと言いますが、ラテンアルファベット26文字にñ[エニェ]を加えた27文字です。
ñの文字の由来は、中世スペインの修道院においてラテン語の文献を書き写す写字生が、ラテン語のanno[アンノ](年〈に〉)のようにnが繰り返されるときに、書写の省力化のためnnと書く代わりにnの上にニョロニョロ記号 ~ を付けてñと表記していたことによります。日本語で「年年」の代わりに「年々」と書くのに似た発想です。やがてラテン語にはなかったニャ行の子音がスペイン語で確立し、ñがこれを表す文字になりました。
世界の諸言語においてニャ行の子音を1文字で表すことは少ないです。ロマンス諸語を見渡しても、「スペイン語」はスペイン語ではespañol[エスパニョル]ですが、ポルトガル語ではespanhol[エスパニョル]、カタルーニャ語ではespanyol[エスパニョル]、フランス語ではespagnol[エスパニョル]、イタリア語ではspagnolo[スパニョーロ]のように大概2文字で表します。
また、スペイン語でchとllは、2文字ですが1つの子音を表します。1754年発行のアカデミア正書法以降、ch、llは独立した文字として扱われ、アルファベットは29文字になりました。辞書を引くときに、chubasco(にわか雨)という語はc[セ]の項ではなくその次のch[チェ]の項を、lluvia(雨)という語はl[エレ]の項ではなくその次のll[エイェ]の項を探さないと見つかりませんでした。
ところがコンピューターによるデータ並べ替え合理化の観点から、アカデミアは1994年にch、llのアルファベット上の扱いを見直し、2001年のアカデミアの辞書第22版以降アルファベットは現在の27文字になりました。さらに2010年の正書法では、yの文字の名称がそれまでのi griega[イグリエガ](ギリシャのiの意味)からye[イェ]に変更されました。
きごし・つとむ。スペイン語講師。東京外国語大学大学院博士後期課程満期退学。元中京大学教授。NHKラジオ『まいにちスペイン語』元講師「(応用編)日本のことをお話ししましょう」(2012、2013、2014年)。著書:『どみなーる Dominio del español』(朝日出版社、2018年)ほか。
木越勉さんの連載『スペイン語をめぐる「素朴な疑問」』では、「前置詞を必要とする動詞にはどんなものがあるの? (コラム:大きな数にご用心!)」(2026年8月号)、「英語の知識が邪魔をしてスペイン語が上達しません!(コラム:英西語彙力増強法)」(2026年9月号)などをご紹介しています。『まいにちスペイン語』シリーズはこちら。
◆『まいにちスペイン語』2026年4月号「スペイン語をめぐる『素朴な疑問』」コラムより
◆文 木越勉
◆イラスト 遠藤佐登美

