(※写真はイメージです/PIXTA)

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内閣府の『人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)』によると、シニア層が不安や悩みを相談する相手の9割以上が「家族・親族」に集中しており、子への精神的依存が高まりやすい傾向にあります。お盆休みは、家族が久しぶりに顔を合わせる貴重な機会です。遠方に一人で暮らす親としては、子や孫との再会を心待ちにしている人も多いでしょう。しかし、その再会が思わぬ形で家族関係に“亀裂”を生んでしまうことも……。74歳の母と46歳の娘の事例を紹介します。

「たまには顔を出しなさい」夫を亡くした74歳母の“娘への執着”

ケイコさん(仮名・74歳)は、3年前に夫を病気で亡くし、現在は関東近郊にある築40年の分譲マンションで一人暮らしをしています。年金収入は月10万円ほどで、住宅ローンはすでに完済しているもののマンションの管理費や医療費などを差し引くと家計にゆとりはなく、夫が残した貯金800万円を取り崩しながら生活しています。

そんなケイコさんには、一人娘のミサキさん(仮名・46歳)がいます。新幹線で2時間ほどの距離にある街で夫と中学生の子どもと三人暮らし。共働きで毎日慌ただしく、ケイコさんのことを気にかける余裕は正直ありませんでした。

しかし夫を亡くして寂しさを抱えるケイコさんは、離れて暮らす娘がもっと頻繁に実家へ顔を出したり、連絡をしたりするのが“普通”だと考えていました。

「こっちが連絡してるのに、どうして返事がそっけないの? 忙しいのかわからないけど、たまには顔を出しなさい」

ケイコさんに悪気はなかったものの、ミサキさんにとっては嫌味にしか聞こえませんでした。

内閣府の『人々のつながりに関する基礎調査(令和7年)』によると、不安や悩みが生じた場合に「相談相手がいる」と答えた人は全体の90.2%にのぼります。しかし、その相談相手の具体的な内訳を見ると、92.9%が「家族・親族」と回答しており、友人・知人(58.9%)や近所の人(5.3%)を上回っています。

日本のシニア世代にとって、不安や寂しさを埋めてくれる精神的な拠りどころは、そのほとんどが「身内(家族)」に集中しているのが実情です。

地域社会や友人との付き合いが希薄になり、コミュニケーションの相手を「たった一人の娘」に依存。ケイコさんの期待は徐々に大きくなり、それがミサキさんを精神的に追い詰めることになったのです。決定的だったのは、今年のお盆休みのことでした。

「親孝行しないと後悔するわよ」お盆の帰省時、娘にぶつけた“日頃の不満”

数年ぶりに、ミサキさん一家が実家へ帰省してきたのです。久しぶりの再会にケイコさんも喜んでいましたが、いざ顔を合わせると、つい日頃の不満がこぼれます。

「普段からちっとも連絡してこないじゃない。寂しいじゃないの」

「私だっていつまでも元気じゃないのよ。今のうちに親孝行しないと、あとで絶対に後悔するわよ」

不満はしだいに説教に変わり、ミサキさんが沈黙していることをいいことにヒートアップしていきます。ミサキさんは表立って反論することはありませんでしたが、「明日は予定があるから」と予定よりも早く自宅へと帰ってしまいました。

「お母さんとは、もう会いません」娘からのLINEに唖然…反省した母が踏み出した“新たな一歩”

それから数日後。ミサキさんから一通のLINEが届きました。

「お母さんとは、もう会いません」

絶縁宣言ともとれるひと言に、ケイコさんはスマートフォンを握りしめたまま唖然としました。

最初は「どうせちょっと機嫌が悪くなっただけでしょう」と思っていましたが、それ以降、何度電話をかけてもつながることはなく、LINEは既読すらつかなくなってしまいました。

ミサキさんと連絡が取れなくなってから、ケイコさんの生活には、どこか寂しさが漂っています。当初は「あんなに手塩にかけて育てたのに」と怒りを募らせていましたが、時間が経つにつれ、自分がミサキさんに過剰な期待を押しつけ、追い詰めていたことに気づき始めました。

「今後のことを考えても、娘とは仲良くしたいし、このままではいけないと思います。でも、まずは自分が変わらなければいけないのかもしれないなって」

内閣府の『令和7年版高齢社会白書』によると、高齢期の社会参加や人とのつながりが、生きがいや安心に影響するとされています。家族は大切なつながりですが、家族だけに心の支えを求めると、その関係が揺らいだときに孤立は深まります。

調査結果を具体的に見ると、ボランティア活動を行っている高齢者の91.2%、地域社会活動(町内会や行事など)を行っている人の91.4%、趣味の活動を行っている人の93.1%が、日々の暮らしに「生きがいを感じている」と回答しています。これは、仕事や家庭以外の“多様な居場所”が、高齢期の精神的な安定と関連していることを示した結果といえるでしょう。

ケイコさんは現在、孤独を少しでも和らげようと、市の地域包括支援センターに足を運び、地域のボランティア活動やシニア向けの集まりに参加し始めました。たった一人の家族だけに依存するのではなく、地域とのつながりを持つことで、自分の生き方を立て直そうと、ケイコさんは前を向き始めたのでした。

[参考資料]

・内閣府「令和7年版高齢社会白書」

・内閣府「人々のつながりに関する基礎調査(令和7年) 調査報告書」