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経営者として働くうえでも、頻繁に発生する飲食費。これはいったいどこまで経費として認められるのでしょうか。多くの経営者が経費にできるものを見逃している一方で、不適切な処理を続け、税務調査で否認されて追徴課税を受けるケースもあとを絶ちません。本記事では、税理士法人グランサーズ共同代表の黒瀧泰介氏が、取引先との会食や従業員のランチ代を合法的に経費計上するための条件や、税務調査を見据えた対策について解説します。

会食、カフェ代…経費にできる「飲食費」5選

1.取引先との会食

まず「取引先との会食」は、事業に関連する交際費として経費計上が可能です。

ただし、税金計算の原則は、交際費は全額損金不算入(経費にならない)です。現状は特例措置として、年間800万円までであれば損金算入が認められていますが、裏を返せばこの枠を使い切ってしまうとそれ以上の支出は経費と認められず、すべて法人税の課税対象となります。

したがって、すべての会食を安直に交際費へ計上する運用は避けるべきです。

なお、1人当たり1万円以下の取引先との飲食費であれば、交際費から除外して「会議費」として処理することが認められています。税務対策として、このルールを活用して交際費の枠を温存するといいでしょう。

また、接待の飲食費を割り勘にした場合でも、自身が支払った分の領収書を個別に発行してもらえば経費計上が可能です。万が一領収書をもらい損ねた場合は、出金伝票に記録し、相手の名刺のコピーや当日の業務内容を裏付ける資料をセットで保管することで、客観的な証拠として扱うことができます。

2.出先でのカフェ代

外回りの際など、移動の合間に立ち寄るカフェ代も、仕事のための利用であることが明確であれば「会議費」または「雑費」として経費計上が可能です。具体的には、取引先の訪問時間までパソコンを開いて作業を行うためにカフェを利用した場合が該当します。

ただし、経費として認められるのは仕事場として場所を利用するための最低限の飲み物代に限られ、食事代が含まれている場合や、あまりに高額すぎる場合は否認される可能性が高いため注意が必要です。また、純粋な休憩目的で立ち寄ったカフェでの飲食費は、当然ながら経費にはなりません。

3.出張中の食事代

出張中の食事代については、原則として個人の消費とみなされるため、直接経費にすることはできません。しかし、会社で「出張旅費規程」を定め、出張先の食事代も考慮した出張手当を支給する運用にすれば、その手当自体を経費として計上できるため、実質的に会社の経費で食事をしたことと同等の効果を得ることができます。

また、出張先で取引先と会食した場合は、当然「交際費」や「会議費」として直接計上することが可能です。

「カウンター1席のラーメン店」が経費として認められないワケ

4.打ち合わせ中の食事代

社内会議や打ち合わせ中に食事を取った場合、その費用は「会議費」として経費計上できます。従業員とのランチミーティングや、お弁当を手配して全員で食事をしながら業務上の会議を行った場合がこれに該当します。

しかし、毎日のランチをすべて会議費として処理することは避けるべきです。税務調査では、その場所が会議にふさわしいかどうかが厳格に見られます。過去には「カウンター1席しかないラーメン店で会議をした」と主張して経費計上を試みたケースもありましたが、調査官が納得するはずもなく、否認される結果となりました。

会議費として経費計上するためには、ファミレスや喫茶店のように落ち着いて話し合いができる場所を選ぶことが前提です。また、場所が適切であったとしても、頻度が高すぎる場合は実態を疑われます。

議事録を残す、次のアクションを明確に説明できる状態にしておくといった、業務上必要な会議を実際に行っていたという客観的な証拠を示すことが重要です。

5.従業員のランチ

従業員のランチ代を会社が補助する制度は、給与を上げずに従業員の満足度を高める有効な手段となります。これを「福利厚生費」として経費計上するには、従業員自身が食事代の半分以上を負担していること、そして会社の負担額が従業員1人当たり月額7,500円以内であることという条件を満たす必要があります。

この月額上限は2026年4月に42年ぶりに改定され、従来の3,500円から大幅に引き上げられました。

給与として支給すると個人の所得税や住民税が増加し、会社が半分負担する社会保険料のコストも跳ね上がりますが、福利厚生費の枠組みでランチ補助として支給すればこれらの税負担が発生しません。会社と従業員の双方にとってメリットの大きい制度です。

残業中の夜食については、現金支給ではなくお弁当といった現物支給であれば、全額を会社負担として福利厚生費で処理することが可能です。忘年会をはじめとする社内行事の費用も、一部の従業員のみを対象とするのではなく、全社員に参加する権利・機会が平等に与えられている場合は、社会通念上妥当な金額の範囲内で全額経費として計上できます。

過去7年分を遡る税務調査…“客観的な証拠”が最強の防衛策

会社の業務にまったく関係のない家族や友人との食事代、業務時間中であっても1人で取った食事代は、いかなる場合も経費にはなりません。家族を事業専従者として雇用している場合でも、客観的に見て業務上必要とされた飲食であり、会議の記録がなければ経費計上は困難です。

適法な飲食費を経費として守り抜くためには、証拠書類の徹底した保全が求められます。レシートや領収書を単に保管するだけではなく、その裏面や余白に「誰と」「何の目的で」食事をしたのか、相手の役職や参加人数を都度メモしておく習慣が不可欠です。税務調査は最大で過去7年分まで遡って行われます。

数年前の記憶に頼るのではなく、明確な記録を残しておくことが、税務調査官に不当な疑いをかけられず、リスクを最小限に抑えるための最強の防衛策となります。

黒瀧 泰介

税理士法人グランサーズ共同代表/公認会計士・税理士