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借金を返済するために「個人再生」を選択したら、余剰金はすべて「返済に全振り」しなければならず、貯金はできない…。そのように認識している方は多いようですが、実情はどうなのでしょうか。ココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」へよせられた質問をもとに、個人再生中の貯金の可否について、澁谷望弁護士に解説していただきました。

個人再生したら「余剰金は返済に全振り」「貯金NG」は本当か?

ギャンブルで作った1,000万円ほどの借金を抱えている男性相談者は、住宅ローン返済中のマイホームを残すために「個人再生」を検討しています。男性には共働きの妻と、未就学児の子どもがいます。

個人再生とは、原則3~5年かけて再生計画に基づいた返済を続けていく手続きです。男性とその妻には定期的な収入はあるものの、「個人再生中は、余剰金をすべて返済に充てなければならないのでは」「そのため、貯金がまったくできなくなるのではないか」という不安を抱えています。

一方で、近い将来、子どもが小学校に入学するため、どうしても貯金を作っておきたいという思いがあります。そんな男性から、ココナラ法律相談「法律Q&A」に以下の4点について相談がありました。

(1)個人再生中、生活の余剰金を貯金に回すことは可能か

(2)住宅ローンを残したまま個人再生をするための要件は何か

(3)借金の原因が「ギャンブル」であっても個人再生は認められるのか

(4)マイホームを残すために、今の段階で「やってはいけないこと」は何か

個人再生中でも貯金は可能

結論から言うと、個人再生中でも貯金は可能です。「余剰金はすべて返済に充てなければならない」というのは誤解です。

個人再生は、原則3~5年かけて再生計画に基づいた返済を続けていく手続きですが、その間の生活費や将来の支出に備えた貯金まで禁止されているわけではありません。むしろ、無理な返済計画を組んで途中で破綻してしまっては本末転倒なので、現実的な家計を前提に計画を立てることが重要です。

ただし、注意しておきたいのが「清算価値保障原則」という考え方です。

これは、個人再生の再生計画において、少なくとも自己破産した場合に債権者が受け取れる金額(清算価値)以上を弁済しなければならないというルールです(民事再生法174条2項4号等)。清算価値が総債務額(住宅ローンを除く)の約5分の1よりも大きい場合、個人再生における返済額が通常の場合と比べて増額することになります。

清算価値には、申立て時点で保有している預貯金や解約返戻金のある生命保険、住宅ローンの返済額を上回った不動産の査定額との差額なども含まれます。

つまり、貯金ができるとはいえども、その額が多いと、その分、清算価値が上がり、結果として再生計画上の返済額が増える可能性があるのです。

清算価値が返済額に影響がするかどうかは、申立てをする裁判所によって多少運用が異なる場合があり、一概に言えません。実際の見通しについては弁護士相談のうえ確認することをおすすめします。

住宅ローンを残したまま個人再生するための要件4つ

個人再生には「住宅資金特別条項」(いわゆる「住宅ローン特則」)という制度があります。これを使えば、住宅ローン以外の借金を大幅に減額しながら、住宅ローンには影響を出さずに、マイホームだけは手放さずに残すことができます。

ただし、無条件に使えるわけではありません。主な要件は次のとおりです。

① 住宅の購入・建設・改良のためのローンであること

資金使途が住宅の購入・建設・リフォームのためのものである必要があります(住宅の敷地を取得するための資金を含みます)。投資用マンションや事業用ビルのローンは対象外です。また、自動車ローンなど、他の債務とまとめた場合も原則として対象外となります。

② 自分が住むための住宅であること

対象となるのは、再生を申し立てる本人が居住用に所有している住宅1棟に限られます。別荘やセカンドハウスなど2棟目以降の建物は対象外です。ただし、店舗兼住宅や二世帯住宅の場合、床面積の2分の1以上が居住用であれば要件を満たします。

現在は住んでいなくても、将来住む予定である場合も対象となります。

③ 住宅ローンの担保として抵当権が設定されていること

金融機関や保証会社の抵当権が、対象の住宅に設定されている必要があります。通常の住宅ローンであれば、この要件はほぼ自動的に満たされます。

④ 住宅ローン以外の担保権が設定されていないこと

住宅ローン以外の借入れ(おまとめローンや事業資金の融資など)のために、同じ住宅に抵当権や根抵当権が設定されている場合は、住宅資金特別条項を利用できません。この点は見落としがちなので注意が必要です。

借金の原因がギャンブルでも、個人再生は認められるが…

自己破産の場合は、ギャンブルは免責不許可事由に該当しますが、個人再生には、借金の原因を理由とする不認可事由は定められていません。つまり、ギャンブルによって作った借金であっても、それ自体を理由に再生計画が認められなくなることはないのです。

もっとも、弁護士に依頼後もギャンブルを継続した場合、費やしたお金は「浪費」に該当するものとして、清算価値として計算される可能性があります。

また、個人再生は、返済が前提となりますので、準備中や手続き中もギャンブルを継続し、余剰が安定しないことに対して「履行可能性がない」という評価を受ける可能性もあります。

返済が苦しくなった段階で、ギャンブルはきっぱりやめるべきでしょう。

マイホームを残せなくなる「NG行為」2つ

では、マイホームを残すためにやってはいけないこととして、どのようなものがあるのでしょうか。具体例を見ていきます。

① 住宅ローンの滞納を放置

滞納が続くと、保証会社が本人に代わって金融機関に一括返済する「代位弁済」が行われます。代位弁済がされると、原則として住宅資金特別条項は使えなくなります。

ただし例外として、代位弁済から6ヵ月以内に個人再生の申立てをすれば、「巻戻し」という制度によって代位弁済がなかったことにでき、住宅資金特別条項を利用できる可能性があります。

とはいえ、これはあくまで例外的な救済措置であり、時間との勝負です。滞納に気づいた時点で、様子見をせずすぐに専門家に相談することが何より重要です。

② 住宅を担保に新たな借入れ

おまとめローンなどで自宅に2番抵当権を設定してしまうと、住宅資金特別条項の要件を満たせなくなる可能性があります。

個人再生は、債務者にとって非常にメリットの大きい制度

個人再生は、「借金を大幅に減らしながら、生活の基盤であるマイホームを残せる」という、債務者にとって非常にメリットの大きい制度です。

今回のケースのように、子どもの入学など将来必要になる支出を見据えて計画的に貯金することも、清算価値保障原則の範囲内であれば十分に可能です。

一方で、住宅資金特別条項の要件や、清算価値の算定方法、手続き中の生活上の注意点などは、個々の事情によって判断が分かれる専門的な領域です。

特に清算価値の算定基準は裁判所によって運用が異なる部分もあるため、「自分の場合はどうなるのか」を正確に知るには、早めに弁護士相談することをおすすめします。

澁谷 望

BEARD法律事務所

弁護士