「年収600万が3割減」役職定年のリアル…節約に励む50代夫婦が陥った「得して損する」買いだめ癖【FPが助言】
役職定年を迎え、給料が3割カットされる――、老後を間近に控えた50代の会社員に訪れる最初のピンチだ。これに焦り、節約に走る人は多い。しかし、やり方を間違えると、むしろ出費が増え、家にモノがあふれかえってしまうことが。いったいなぜなのか。
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【case】「送料無料まであと少し」の誘惑に踊らされた、50代夫婦のちまちま散財
「主人の給料がガクンと減ったから、本気で節約しようとがんばっているんです。それなのに、毎月のカードの請求額がちっとも減らなくて……」
都内在住のパート主婦、亜矢さん(52歳、仮名、以下同)はそう言って頭を抱える。都内の中小企業に勤める夫の浩紀さん(55歳)が今年、役職定年を迎え、年収が600万から420万円に3割も減ってしまった。

これまでの生活水準を維持できないと焦った亜矢さんは、日々の買い物を少しでも「お得」にしようと、近所のスーパーよりも日用品が安く買えるネット通販にハマっている。
賢く買い物をするべく、セール日が近づくと、「商品をガチで評価してくれる」と評判の雑誌『LDK』や、インスタグラムで美容情報を発信するアカウント=美容アカをチェック。「汚れがよく落ちる洗剤やブラシ」「保湿力の高い乳液」「顔色が映えるパウダー」などを少しでも安い値段で買うようがんばっている。
酒好きの夫、浩紀さんも、酒代を抑えるため、缶チューハイをネットで箱買いするなどして協力している。
「Yahoo!ショッピングの“5のつく日”や“日曜日”のポイント還元セールなどを狙って、まとめ買いをするようにしています。日用品は腐らないので、送料無料になるまで買い込んで、家でストックしておくんです」
とくに春にナフサ不足の可能性が話題になったときは、将来の値上がりを見越して、食品用ラップやスポンジなどのキッチン用品、生理用品、洗剤、ペットボトル、化粧品などを大量に買い込んだ。
「そうやって節約をがんばっているのに、ここ数カ月のカード引き落とし代を平均してみたところ、生活費が全然減っていないんです。いったい何が間違っているのか…」
【FPが助言】ストックがあると消費スピードが爆上がりする!
「こういうマメマメしく動いて大損している人を、私は『マメで損すーるさん』と呼んでいます」…、そう辛口アドバイスをするのは、FPの山口京子さんだ。
「割引率が大きければ大きいほど、高いモノほど、『ものすごくお得だ!』という気持ちになり、つい財布のひもがゆるんでしまいますよね。でも、3割引になっていようが、1万円以上の購入で660円ほどの送料が無料になろうが、出費は増えている、そのことを忘れてはいけません」
もう一つ、山口さんが指摘するのが、『ストックがあると、消費スピードが劇的に上がってしまう』という罠だ。
「その最たるものがお酒です。単価が安いからと箱買いすると、家にある手軽さから必ず毎晩飲んでしまうし、『安かったし、もう1杯いくか』と飲む量も増えてしまう。化粧品も『まだ3箱もあるし』と、無意識のうちにドバドバと使う速度が上がってしまうのです」
山口さんがすすめるのは、「1つ買って、ほぼなくなってからもう1つ買う」という買い方だ。
「そのつど買ったほうが、単価は高くてもトータルの使用量は驚くほど抑えられます。ストックは、あなたの暮らしの消費を加速させるガソリンでしかないのです」
家の中のストックは「財産」ではない。スペースを蝕む「不良在庫」に
さらに山口氏は、買いだめ行為の本質についてこう指摘する。
「購入した日用品の山は資産にはなりません。現金なら投資に回して新たな利益を生み出すことができますが、段ボールに詰まったストックは1円も生まないどころか、じょじょに劣化しながら家の貴重なスペースをむしばみ、家賃を食いつぶしていきます。使い切れなければ完全なる不良在庫になってしまいます」
恐ろしいのは、この「ため込み癖」は、年齢を重ねるほど悪化しがちなことだ。加齢とともに「捨てる」判断力や捨てる体力が弱くなっていくからだ。
「家にモノがたまっていくと、掃除が困難になり、不衛生に。ものにつまづいて、けがの原因にも。そうやってモノを貯め込んだ家を継いだ子どもたちが、貯め込んだモノの処分に何十万円も使う羽目になるというのもよくある話です」
家計をスリム化するために、山口さんが推奨するのは、以下の3点。まず、「なくなったら買う」を大原則にすること。送料無料を狙って、今いらないモノを買わないこと。そして、ネット通販のあおりを受けないよう、セールの夜は、23時に布団に入ること。
「目先の数十ポイントや数百円の割引に振り回されて、大切な自宅を段ボールの倉庫に変えるのは今日限りでやめましょう」
物価高が不安なら、安いうちに買い込もうとするのではなく、あるものをたいせつに最後まで使い切ること。それこそが、役職定年後の限られた予算の中で、夫婦が本当に豊かで安泰な後半戦をスタートするための、真の資産防衛術なのだ。
※プライバシー保護のため、記事中の事例は、具体的な状況の一部を変更しています。
今回のアドバイザー/山口京子(やまぐち・きょうこ)さん
1966年名古屋生まれ。金城学院大学卒業。大学在学中から、テレビ・ラジオに出演。2000年にファイナンシャルプランナーの資格を取得。のべ2,500組以上の家計相談を受け、お金と人生の悩みを解決に向けてサポートしてきた。また、家計管理、貯蓄・資産運用のプロとして、金融庁、証券業協会、東京証券取引所の講演会にも出演。2024年には、「KOKUSAIには愛があるプロジェクト in あいち」のメインキャラクターに。『お金も人生も薔薇色!老後計画』(主婦と生活社)など著書多数。
取材・文/鷺島鈴香
デイリー新潮編集部
