ルメールが歴史を変えるか マスカレードボールと20年越しのリベンジへ キングジョージ直前の胸の内
昨年の天皇賞・秋を制したマスカレードボールがキングジョージ6世&クイーンエリザベスS(25日・英アスコット)に出走する。鞍上は06年に同レースにハーツクライで挑み、3着と涙をのんだルメール。同じ勝負服で20年前のリベンジに臨む名手の思いは。
20年前、1頭の日本馬がアスコットの直線で世界の頂点をつかみかけた。06年キングジョージ。ハーツクライは勝負どころで先頭に立った。ルメールは「勝てると感じた時はドキドキしたね」と当時の興奮を今も忘れていない。だが、ゴール前で力尽きて3着。それは今も日本調教馬の最高着順として残っている。
名手は振り返る。「ドバイ(シーマクラシック、1着)以来のレースだったから、フレッシュでした。それで道中は一生懸命走っていた。最後はちょっと疲れてしまいましたね」。20年越しのリベンジへ−。今年はそのレースに、くしくもハーツクライと同じ勝負服のマスカレードボールとともに挑む。昨年3歳で天皇賞・秋を制し、ジャパンCでも2着に好走。前走は香港のクイーンエリザベス2世Cで2着と、素質は世界水準にある。
これまでキングジョージに挑んだ日本調教馬は6頭。頂点には誰も届いていない舞台ではあるが、ルメールは「アスコット競馬場は合うと思います。タフな競馬場ですが、彼はタフですから。コンディションが良かったらチャンスはあると思っています」と力強く話す。
コーナーのシャープな形状、英国特有のタフなコース…。「最初に下って、そこから上がる。初めて走る馬には訳が分からないと思う」と慎重な姿勢を見せつつも、「マスカレードボールは乗りやすいから気にしていません」と意に介さない。瞬発力勝負になりやすい欧州の流れに対しても、「ああいうスローで“ヨーイドン”の展開は持ってこいだと思います」と末脚への信頼は揺らがない。
あとは慣れない異国での調整を無事にこなせるかだ。4月の香港遠征時は到着後に馬体を大きく減らし、2、3日はイライラした面を見せたという。それでも数日で馬体を戻した回復力が、この馬の強みでもある。今回は現地で2週間を過ごす。英国では現地の馬たちと一緒に行動して集団で調教できるため、「あの子の主体性のなさをカバーできる」と滞在先であるニューマーケットの環境を歓迎する。
待ち受けるのは、昨年のジャパンCで後塵(こうじん)を拝したカランダガンだ。前走のサンクルー大賞ではコロネーションC4着から巻き返し、健在をアピール。キングジョージ連覇を狙う王者に、ルメールも「(2走前の)エプソムのレースはすごい馬場が悪くて、いい結果を出すことができなかったけど、強い馬ですからね」と敬意を払う。
日本調教馬が英国G1を制したのは、アグネスワールド(00年ジュライC)とディアドラ(19年ナッソーS)の2頭だけ。20年前、先頭に立ちながら、あと一歩届かなかった時と同じ勝負服が、今度は先頭のままゴールを駆け抜けられるか−。2度目の海外遠征に挑むマスカレードボールなら、歴史を変える可能性は十分にあるとみている。(デイリースポーツ・刀根善郎)

