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ペンさえ持たず教室に

 巨人の阿部慎之助前監督の逮捕騒動。親子げんかからの警察沙汰で地位も名誉も失うのは、球界のみならず著名人では初のケースだろう。騒動の背景に生成AI「チャットGPT」の普及があったと聞けば、子を持つ親にとって対岸の火事ではない。いったい令和の親子関係はどうなってしまうのか。

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 AIの普及に伴い、教育現場で異変が起きているという。

「かつて授業中に教師が学生を注意する対象といえば私語でしたが、コロナ禍以降の教室では無駄話も聞こえず静かになりました」

 とは、桃山学院大学経営学部教授の小嶌(こじま)正稔氏だ。

「さまざまな大学で教鞭を執り始めて37年になりますが、この数年で学生の姿は様変わりしました。今の学生はカバンを持たず、スマホとペットボトルだけを手に教室へとやって来る。ペンさえ持っていないので、授業中のメモはスマホかタブレット端末で済ませる。きちんと授業を聞いているのか、それとも遊んでいるのか見分けがつきません」(同)

宿題が意味をなさなくなり……

 大学の研究棟では、学生の姿が見られなくなったとして、小嶌氏はこう続ける。

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「質問などはネットを介してテキスト形式で送られてくるので、研究室を訪れる学生はいません。テキストもビジネスマンのような硬い文章が多いので、AIを使っているのでしょう」

 レポートなどの課題作成でも、AIは暗躍しているとか。

「ネットで見つけた論文の一部を写して提出する学生はいましたが、最近はAIを使い最初から最後までしっかりした構成になっている。これが非常によくできているので、学生に直接プレゼンをさせてみないと本当に理解しているのか見極めが難しいのです」(同)

 チャットGPTに代表される生成AIは、真っ先に答えを提示してくれる便利な道具である。ゆえに教育現場ではおなじみの「宿題」が、意味を成さなくなりつつあるという。

阿部慎之助前監督

医学部受験生の「AI依存」

 東京大学医学部卒で、医学部予備校「レユシール」講師代表を務める片山湧斗(ゆうと)氏に聞くと、

「AIに東大入試を解かせたら、首席より高い点数を取ったなんて話もありますが、確かに昨年あたりからAIのモデルが発達して難解な数学の問題を解くにしても精度が高くなっています。そのため親御さんたちから“宿題をAIで済ませているのでは”という相談が増えているのです。私自身、生徒がAIを使っていると感じる場面が多々あります。宿題で全問正解した子に理解度を試す質問をしたら、自分の言葉で説明できないことがありました」

 AI依存の傾向は、医学部合格に必須の面接試験対策で顕著に見られるそうで、

「AIに“志望理由などを含んだ面接原稿を作ってください”とお願いした生徒の話は、明らかに高校生が使わない言葉が用いられて、人間味のない内容になります。確かに間違ったことは言っていないのですが、どうしてそう考えたのかと掘り下げて質問すると、うまく回答できない。AIという“劇薬”は、考えるプロセスをスキップして答えを提示するので、子どもたちの想像力や思考力の成長に大きな支障が出ないかと非常に懸念しています」(同)

東大生に異変

 実際、晴れて東大に合格するような子どもたちにも、異変が生じていた。

「毎年、東大の新入生と話す機会があるのですが、口頭でのコミュニケーションが苦手な子が増えた印象を受けます。今の子たちは、LINEなどテキストベースのやりとりに慣れてしまって、口頭で話す機会が減っている。そのため会話のテンポが若干ズレたりします。志望校を決める際にも、子どもたちは親や学校の先生に相談するより、AIと“対話”するのが先になっている。そのことには危機感を覚えます」(片山氏)

 もはやAIは子どもたちにとって欠かせないツールどころか、「親」や「先生」に取って代わる存在にまでなっているのである。

 関連記事では、AIが教育現場に与えている「深刻過ぎる影響」について、より詳しく現場の声を紹介する。

「週刊新潮」2026年6月11日号 掲載