宮里藍=笑顔の数だけスコアが伸びる。明日はもっとたくさん笑顔を見たい。(写真/田辺安啓=JJ)

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 クラフト・ナビスコ選手権3日目、宮里藍が全出場選手の中でベストスコアに当たる3アンダー69をマーク。通算2オーバーで前日の37位タイから14位タイへ一気に順位を上げた。

 初日はアイアンショットが乱れ、ゲーム全体の流れが悪かった。2日目はスウィングメカニカルを気にせず、目標だけを意識することで集中力を向上させた。そして今日3日目は、2日目同様の集中の仕方に「自信」をプラスしたことで好結果が出た。3日目のパーオン率は83.3%ときわめて高かったが、それでも父・優氏は「バックスウィングのテンポが早い。アイアンの精度は昨日より少し落ちる」と分析。技術面がやや低下したにも関わらず、スコアも順位も大幅アップ。そんな結果を生んだカギは、言うまでもなく宮里のメンタル面にあった。

 初日終了後、宮里自身も父・優氏も集中力が欠けていたことに気づいていた。どうしたらいいのだろうか――宮里は前週にピア・ニールソンとリン・マリオットに会い、著書『ゴルフ「ビジョン54」の哲学』をもらっていた。本を開くと、そこには「今の自分に当てはまるポイントがたくさん書いてあった」。そして宮里は「足りないのは自信だけだな。自分をどんどん変えていこうと思った」。その前向きな考え方が2日目の集中力、3日目の爆発力へとつながったのである。

 さらに宮里は、ラウンドのみならず練習に対する姿勢も見直した。「何のための練習なのか。より実戦的な練習をしなければと思い、普段はあんまりやらないんですけど(練習場で)全クラブを打ったりもした」。本戦中、思わぬ状況に遭遇し、思わぬクラブ選択や打ち方を要求されることは多々ある。ハプニングあってこその本戦。だから練習も「単なる練習」ではなく「実戦のための練習」に変えてみよう――吸収力が高く、実行力に富む宮里ならではの行動だ。

 ミッションヒルズは距離が長く、グリーンが固い。過去の大会で宮里は一度もアンダーパーを出したことがなく、「相性が悪いコース」という見方もされていた。だが、ちょっと考え方を変え、視点を変えただけで、表れた効果は絶大。ゴルフはメンタルなゲームと言うけれど、3日目の宮里は、その言葉を実証するかのように精神面から好スコアを生み出した。

 首位の朴セリ、スーザン・ペターソンとは6打差。逆転優勝はかなり厳しいが、トップ10入りは現実的になった。が、2日目が終了した時点で「トップ10は入れると思った」と明かした宮里の自信の持ち方に、メンタル面での大きな成長を感じた。
(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)