フランスの名門サッカークラブ、オリンピック・ド・マルセイユ売却の話が一転して立ち消えになった模様だ。22日夜、レキップ紙のウェブ版が速報で伝えている。

 これまで、ロベール・ルイ=ドレフュス氏が保有するクラブの過半数株をカナダ人実業家のジャック・カシュカー氏が買収すると報じられていた。しかし買収の期日であった23日が近づき、カシュカー氏が資金を調達できるまであと数日、期日を先延ばしにしてほしいとルイ=ドレフュス氏に要請、同氏はこれを拒否し、交渉を完全に打ち切ることになった。

 マルセイユ売却の噂が流れ、買収候補にカシュカー氏の名前が浮上したのは昨年12月。その後カシュカー氏は、1月初旬にマルセイユのディウフ会長と会談し、クラブ買収について基本的な合意に達していたとされる。その2週間後には、メディアによって「次期オーナー」と紹介されるまでに至った。マルセイユのホームゲームには毎回のように足を運び、1ヶ月半の間に観戦した回数は、ルイ=ドレフュス氏が10年間でスタジアムを訪問した数より多いとさえ言われた。

 しかし、当初、数週間でまとまると言われた交渉が長引き、その間、カシュカー氏の資金にマネーロンダリングの疑いがあるなどと報じられた。さらに買収計画には、スポーツマーケティング会社との提携案も含まれ、「スポンサリング事業の外注化」のおそれがあるとしてクラブ側が懸念を強めていた。カシュカー氏は2月末に予定された買収期日の延期を要請。以来、スタジアムにも姿を現さなくなった。

 カシュカー氏はつい1週間前にも、買収交渉が近々まとまるとの見通しを語っていた。しかしルイ=ドレフュス氏側は、期日の延期を再度求めてきたカシュカー氏に資金が足りないと判断、売却の意向を撤回することになった。

 ルイ=ドレフュス氏が売却計画を破談にした背景には、1997〜1999年の選手移籍金をめぐる不正会計事件の裁判で37万5000 ユーロ(約5850万円)の罰金を命じられている同氏が、控訴審で罰金の引き下げを狙い、マルセイユのオーナーという特権的な立場を保持したほうが得策と考えた、という説もある。