フランス代表のドメネク監督が24日のリトアリア戦(ユーロ2008予選)、28日のオーストリア戦(親善試合)に向けて招集した23人のメンバーの中に、19歳〜22歳の「新顔」4人が含まれている。

 4人の中でもっとも経験が豊富なのはマルセイユの若き司令塔、サミル・ナスリ(19)。17歳でデビューして、これまでリーグ・アンで82試合、UEFA杯14試合に出場している。

 マルセイユでは、今シーズンからトップ下のセンターにポジションを移し、いまフランスでもっとも「10番」らしいプレーヤーだと言われる。加えて、両親がアルジェリア移民でマルセイユ出身。当然、ジダンに重ね合わせる人は少なくない。

 しかしナスリ本人は、20日付レキップ紙のロング・インタビューで、「ジダンはジダン。比べるのは止めてほしい」と注文をつけている。ジダンは彼自身のアイドルでもあるが、「ジダンはひとりしかいない。僕が練習を重ねて進歩するのを見守ってほしい。そして僕自身の名前で呼んでほしいね」と話す。

 少年時代からナスリを知っているマルセイユのエモン監督は「小さいときからずっと、どのチームでも彼はリーダーだった」と語る。わずか19歳の選手に司令塔の役割を任せていることについても当然と言わんばかり。「ピッチにいる9人すべてが躊躇なく彼にボールを回すのを見れば、それがすべてを物語っている。彼にはそれほどの才能がある」と絶賛だ。

 「つねにゴールに向かって前進する」、これがナスリのモットー。「30もパスを回し続けても仕方がない。2つか3つのプレーで相手を危険に陥れることだってできる」と考える。俊敏かつ粘り強いドリブルに加え、ゴール前30〜40メートルから放つ強烈なミドルシュートも武器だ。

 今後の夢は、W杯に出ることと、チャンピオンズリーグ(CL)を制覇すること。現時点では自分を育ててくれたマルセイユを離れるつもりはないが、マルセイユがCLに出られないとなれば、移籍もやむを得ないという。バルセロナのプレーを「美しい」と語るナスリ、代表戦に出場して注目に値する活躍をすれば、おのずとビッグクラブへの道も開けるだろう。19歳ながら、自分を見失わない堅実な性格で周囲の「大人たち」からも評価が高い。確実な順序を踏んでステップアップしていくはずだ。