19日に行なわれたFAカップ準々決勝の再試合、チェルシー対トッテナムの試合で、チェルシーのMFフランク・ランパードがファンに襲われる事件が起きた。

 トッテナムの本拠地ホワイト・ハート・レーンで2−1の勝利を収め、FAカップ準決勝進出を決めたチェルシーの選手たちは試合後、アウェイ席に陣取るファンに向かってユニホームを投げ入れるなど、勝利の喜びを爆発させていた。事件が起きたのは、そのときだった。18歳のスパーズファンが、ピッチ上に乱入。警備員を難なく振り切った男は、ピッチ上を突進し、ランパードに殴りかかった。しかし、このイングランド代表MFが間一髪で襲撃をかわすと、男はコーチ陣や警備員などに取り押さえられた。

 突然の出来事に肝を冷やしたと語るランパードは、襲撃の瞬間を次のように振り返った。

「あの男が走ってきた瞬間ははっきり覚えている。とにかく、目を離しちゃいけないと思ったんだ。振り返ったら、後頭部を殴られると思ったからね。とにかく上手くかわせてよかった。そもそも、彼がピッチ上に入ったこと自体が問題だ。それに、酒にも酔っていたはずだ。僕に向かって走っているときも少しグラついていたから。でも、ピッチ上でいきなり襲われたらどうすればいい? 考える時間なんて数秒しかない。僕の場合は何もなかったからよかったけど…」

 一方、チェルシーのジョゼ・モウリーニョ監督は、スタジアムのセキュリティー体制を厳しく非難しながらも、サッカーにおいてファン絡みのトラブルは避けられないとの見解を示した。

「サッカーの試合とは、多くの関係者が力を合わせて成立するもの。その一員であるはずのセキュリティー部門が気を抜いていたようだ。フランクに襲い掛かるまで捕まえられなかったのだから、リラックスして居眠りでもしていたんだろう。しかし、これもサッカーの一部だ」

 事件を起こした男に対し、トッテナムはスタジアムへの入場禁止処分を課すと発表。今後は、ホワイト・ハート・レーンへの立ち入りを認めず、来週には裁判所での審理も行なわれる予定だという。しかし、再発防止を考えれば、当事者への厳しい処罰だけでなく、セキュリティー体制の見直しも早急に迫られているといえるだろう。