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先日Prime Videoにて配信が開始された『龍が如く 〜Beyond the Game〜』。今作はあの大ヒットゲームの「龍が如く」シリーズの実写化。なかでも『龍が如く』、『龍が如く 極』を実写化した作品です。監督はあの武正晴氏。今回はギズモード編集部にて単独インタビューに成功したので、まずはギズモードらしくガジェット関連のお話から聞いてみました。

武正晴監督
Photo: 山粼拓実

使った機材がすごかった

ーー本作のビハインドザシーンの映像を見させていただいたのですが、DJIのドローンや、ソニーのVeniceなどシネマカメラが使われています。機材のテクノロジーの進歩は撮影に影響しましたか?

武正晴監督(以下、武監督):自分がどう撮りたいと伝えると、それに向けて、撮影部やドローンの人たちが専用の機材を用意してくるんです。ドローンなんかもすごかったです。

ーー神室町のゲートに入りこむシーンなどですね。

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武監督:そう、ゲートをカメラがくぐり抜けていくシーンなどです。昔はなかなかあの空撮ができなかったんですが、上手くやっていただいてよかったです。理想を言うと、毎回そうなんですけど、(話数ごとに)全部違って撮りたい。カメラだけではなく、人物だとか、小道具も含めて、何か1つ、特徴的なカット、特徴的な場面、場所と設定だとか、そういうのは意識しています。

ーーフィルム時代と比べて、ガジェットの選択肢が増えましたが特に弊害は感じませんでしたか?

武監督:いや、機材の軽量化の恩恵はありますね。例えば、狭い車内のシーンなど色々撮影部も選択肢が増えましたし。僕の場合、ワンカメラだけではなくて、数台のカメラを使うので、小さいカメラがあると、車内の撮影とか、部屋の中の狭いところの撮影で役に立ちます。だから軽量化されていくことなどのおかげで、やれることはすごく増えました。最初のバイクが走るシーンなども、人物にカメラをつけたり、バイクにつけたりなど。僕の場合、テイク数(を重ねる)よりも、せーので撮ってしまうんですよ。

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撮影時の夜が夏で短かったのと、新型コロナウィルスの問題もあったので、長い時間撮影ができなかったんです。なのでできるだけ1度に撮るっていうやり方をしていました。あれだけ300人400人の乱闘シーンもワンカットワンカット撮ってたら終わらないんですよ(笑)

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劇中の細かなディティール。影響を受けたのは「あの」作品?

ーー他の作品からオマージュを受けているなどありますか?

武監督:格闘技のシーンなんて「またか」なんですけど、やっぱり(マーティン・)スコセッシの『レイジング・ブル』など、ああいうもののアクティビティーな描写というのは格闘技のシーンでは影響を受けていますね。

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あと、説明はしないんですが、何か世界観が全部古いものを使ってるっていうのを見せていく感じは『ジョーカー』から影響を受けていますね。よくわからない街を見せていく時のスタイルとしてすごく参考になりました。(『ジョーカー』の)小道具の配置とか、なんとなく70年代っぽく思わせるみたいな。

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ーー神室町の広場の背景に『フォレスト・ガンプ』のポスターがありましたね。

武監督:あれは全て当時の上映のスケジュールを全部調べて、全部図面に書いて記憶からも思い出して再現しました。だからエキストラも全部キャラクターを作ってこの人はこの人、この人はこの人と当時の自分の記憶に残っている人を全部作りました。

ーー劇中に挟まれるニュースも時事ニュースみたいでしたね。

武監督:あれは全て当時のニュースです。こだわりではないんですが、なんでもいいですよとはなりませんよね。だから助監督さんたちが困るんです(笑)。

例えばホテルでクイズをやってる番組がありましたよね。

あれは高校生クイズの再現で、あれは僕も昔高校生クイズに出場してあの問題を間違えたんですよ(笑)。作品を作るということはスピルバーグもそうですが記憶の再構築だと思うんです。

なんかそこにひょっとすると想像する力が生まれる可能性があって、例えば『フォレスト・ガンプ』っていうポスターを持ってくるためにいろんな人が努力しなきゃいけない。あれを見たときに思い出す人もいれば、新しい情報としてあのポスターはなんだろうと思って見る人もいるんです。

ゲーム原作を実写化するにあたっての「取捨選択」

ーーゲームを基に実写化されるにあたってそういった世界観の構築の取捨選択はどういった基準でされていましたか?

武監督:僕はどちらかというとリアリストの方なので、自分の頭の中とか見たものとか経験で知らないものはあまり描けないんです。見てる人は漫画やアニメーションをどう実写化にして再現するっていうところにベクトルが向かっていきますが、そこばかりになるとバランスが悪い。

それよりも物語の中にあるストーリーやその人たちの感情の伏線だとか、映像の撮り方だとか、作品としての面白がり方とか、つまりゲームを知らない人が見たときに果たして楽しめるのかというところも含めて、バランスを取っていかなきゃいけない。

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例えば真島というキャラクター。これは徹底的にゲームの再現ができるキャラクターだと。そこは追及した方がいいんですが(主役の)桐生一馬役の竹内(涼真)さんにゲームの桐生一馬になりきってくださいって演出はなかなか難しいわけです。だとすると「あなたなりの一馬をやろうよ、できればいいんじゃない」っていう。

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ーー20年前に発表されたゲームの『龍が如く』の桐生一馬ではなく、現代で作られたからこその『龍が如く 〜Beyond the Game〜』の桐生一馬という感じですね。

武監督:新しい桐生一馬はどういう風に誕生するかっていうのを僕らで作り上げていってあげたらいいんじゃないかなと。再現することばかりのバランスだとゲームのファンにとっては物足りないかもしれないけども、そこだけではないっていう我々が作っていくモチベーションみたいなものも必要になってくるんじゃないかなと。

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ーーゲームを知らない新規のファンとしても楽しめました。今の時代のヤクザドラマだなと。

武監督:だって矛盾してるんですよ桐生一馬は。桐生は「俺は誰も殺さないって」という思いがあり、そこは僕も意識しました。これからの時代っていうのはああいう主人公が必要なのかもしれない。矛盾してる主人公っていうのはちょっと考えていました。そういう人がこれから出てこないとやっぱりこの厳しい世の中なんか解決していかないんじゃないかなって。それを思いついただけでも今回はよかったと思っています。

「龍が如く 〜Beyond the Game〜」はPrime Videoで独占配信中。

Source: Amazon