佐藤健には「女心に疎い鈍感男」がなぜかハマる?主演映画「四月になれば彼女は」
映画「るろうに剣心」やドラマ「義母と娘のブルース」など、なぜか佐藤健は女心に疎い鈍感男を演じることが多い。女性から恋心を抱かれても気づかない、逆に今じゃないというタイミングで告白してしまう。そんな役どころを演じる時のイケメンなのにポカンとした表情は絶妙だ。
そんな佐藤が森七菜、長澤まさみと共演した映画「四月になれば彼女は」は、「世界から猫が消えたなら」でも組んだ川村元気の原作・脚本による作品。佐藤演じる精神科医の藤代俊(通称"フジ")は、同棲中の獣医・坂本弥生(長澤)と結婚式を挙げることになるが、その矢先、弥生は突然、出ていき、行方知れずになってしまう。
フジは、弥生がいなくなった理由を探るが、それは大学時代の恋人・伊予田春(森)から手紙が来るようになったから、とも考えられた。フジと春は大学時代の写真部の先輩後輩で、春はアナログの一眼レフで写真を撮っていた。ふたりは自然に惹かれ合い交際。ボリビアのウユニ塩湖など、世界の美しい場所に行って写真を撮ろうと約束したが、事情があって旅には出れず、別れてしまったのだった。
春は今になって、ウユニ塩湖やチェコのプラハなど、ふたりで行くはずだった場所をひとりで巡り、写真を送ってくるようになった。フジは「春との関係はもう昔のことだ」と、弥生にもその手紙を見せていたが、弥生は"元カノ"である春のことが気になってしまったのだろうか。
この映画はいわゆる王道のラブストーリーではなく、描かれるのはありがちな恋の三角関係ではない。フジはもちろん、弥生も春も不器用で、誰かを愛する気持ちをまっすぐに信じることができない。はっきりもすっきりもしないまま、一筋縄ではいかない複雑な関係が描かれていく。
フジは、元カノの春が自分と別れた本当の気持ちも、今カノの弥生が出ていった理由もわからない。「精神科医って自分のことは治せないんですね」と同僚の医師にこぼし苦悩する。見ていてかわいそうになってしまうようなフジの心境を、佐藤はオーバーな表現はせず、抑えたトーンで繊細に演じている。それだけに、クライマックスでフジが思い切った行動に出る場面は、思わず「頑張れ!」と応援したくなる。
映画の後半では、春がフジに写真を送ってきた理由、弥生が失踪して向かった場所など、意外な事実が明らかに。さすがはストーリーテラーの川村元気という展開になっていく。川村は佐藤とはもちろん、新海誠監督のアニメ映画をプロデュースして「君の名は。」では長澤、「天気の子」では森とも組んだが、そういったなじみのあるキャストだけに、本作も川村ワールド全開だ。
監督は、米津玄師やあいみょんのMVを撮り評価されてきた山田智和。これが長編映画初監督となり、ウユニ塩湖でロケをしたオープニングの映像など、透明感と空気感のある映像で、自分の気持ちさえ理解できない迷える主人公たちを映し出している。
文=小田慶子
放送情報【スカパー!】
四月になれば彼女は
放送日時:2024年11月23日(土)20:00〜
チャンネル:WOWOWシネマ
放送日時:2024年11月24日(日)15:30〜
チャンネル:WOWOWプライム
※放送スケジュールは変更になる場合がございます