北朝鮮兵が戦闘準備か、ウクライナ国境近くに滞在…通訳が用意されたとの情報も

写真拡大

 【ソウル=依田和彩、ワシントン=田島大志】米紙ニューヨーク・タイムズは28日、ウクライナ政府高官の話として、ロシア西部クルスク地方に入った北朝鮮兵がウクライナ国境から約40〜65キロ・メートルにある仮設兵舎に滞在していると報じた。

 近くウクライナ軍との戦闘に参加する可能性が高い。通訳が用意されたとの情報もあり、北朝鮮兵は露軍との意思疎通が課題になっているようだ。

 米国防総省のサブリナ・シン副報道官は28日、約1万人の北朝鮮兵が数週間以内にクルスク州などウクライナとの国境付近に派遣されるとの分析を示した。露東部で訓練を受けた北朝鮮兵の一部は既に西部への移動を始めたと指摘し、北朝鮮兵の数は「さらに増える可能性がある」との見方を示した。

 米国務省のマシュー・ミラー報道官は28日の記者会見で、北朝鮮兵の派遣を巡り中国に影響力行使を求めたと明らかにした。「隣国のロシアや北朝鮮が(地域の)安定性を損なうような行動を取っていることを中国は懸念すべきだ」と述べた。

 露朝は連携を深めている。タス通信によると、北朝鮮の崔善姫(チェソンヒ)外相は28日に平壌(ピョンヤン)を出発し、露極東ウラジオストクに到着した。30日にモスクワを訪れる。ラブロフ外相と会談する見通しで、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記の訪露に向けた調整が行われるとの指摘もある。

 韓国の情報機関・国家情報院は29日の国会報告で、崔氏が訪露で北朝鮮兵の追加派兵や北朝鮮が得る見返りを協議する可能性があると説明した。出席した国会議員が明らかにした。

 北朝鮮軍幹部らが前線近くに派遣されたとの情報もある。韓国・聯合ニュースによると、北大西洋条約機構(NATO)が28日に開いた北大西洋理事会で、韓国代表団は北朝鮮軍総参謀部のキム・ヨンボク副総参謀長がロシアに派遣されたと報告した。キム氏は正恩氏側近の一人とされ、これまでも軍視察に同行している。

 ただ、露朝両軍の前線での意思疎通が円滑に進むかどうかは未知数だ。国情院によると、露軍は北朝鮮兵にロシア語で100種類の軍事用語を覚えるよう求めたが、北朝鮮兵は習得に苦労している。これに対しウクライナ側は、戦場で北朝鮮兵に降伏を促すため、朝鮮語の会話フレーズ集を準備しているという。

 韓国大統領府によると、尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は29日、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と電話で会談した。北朝鮮兵の派遣を含む露朝の軍事協力への対応で連携をとるため、両政府の代表を相互に派遣することで合意した。