オーストラリア訪問中の英チャールズ国王に向かって「あなたは私たちの国王ではない」と叫んだ先住民のリディア・ソープ上院議員(中央)/Victoria Jones/Pool/via Reuters

ブリスベン(CNN)オーストラリア訪問中の英国のチャールズ国王が21日、連邦議会で演説を終えた直後、先住民(アボリジナルピープル)のリディア・ソープ上院議員が「あなたは私たちの国王ではない」と叫ぶ騒ぎがあった。

警備員が議場の後方にいたソープ氏を連行しようとしたとき、同氏は国王夫妻に向かって「私たちの土地を返せ、盗んだものを返せ」と叫んだ。

チャールズ国王とカミラ王妃はアルバニージー首相をはじめとする同国の指導者らと会談するため首都キャンベラを訪れていた。

チャールズ国王は演説で、230年以上前に英国人が入植する以前、何万年もの間オーストラリアに住んでいた先住民について「私の人生を通じて、オーストラリアの先住民は彼らの物語や文化を惜しみなく共有するという大きな栄誉を与えてくれた」と謝意を示した。

これに先立ち、議事堂の外では国王夫妻を歓迎するアボリジナルの伝統的な式典が行われたが、同国の先住民の多くは国王夫妻を歓迎していない。

英国人がオーストラリアに入植したことで、1930年代まで国内の何百もの場所で先住民が虐殺された。同国では何世紀にもわたり先住民の不利益を覆すことができず、先住民は今も人種差別と組織的差別に苦しんでいる。

自身も先住民であるソープ氏は長年、条約締結を訴えており、これまでも英国君主制に激しく反対を表明してきた。

オーストラリアの先住民は主権を譲り渡したことはなく、英国王室との条約締結にも関与したことはない。オーストラリアは英国国王を国家元首とする連邦国家であり続けている。

緑の党は声明で、国王の訪問は「一部の人々にとっては重要な出来事」だが、多くの先住民にとっては「今も残る植民地主義のトラウマと英植民地主義の遺産を視覚的に思い出させるもの」でもあると述べた。