首相官邸に突っ込んだ軽ワゴン車(19日午前、東京都千代田区で、本社ヘリから)=佐藤俊和撮影

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 東京都千代田区永田町で19日早朝、男が自民党本部前で火炎瓶5本ほどを投げた上、軽ワゴン車で約600メートル南の首相官邸前に移動して防護柵に突っ込んだ。

 警視庁は埼玉県川口市差間、職業不詳臼田敦伸容疑者(49)を公務執行妨害容疑で現行犯逮捕した。この事件で、自民党本部前で警戒中だった警視庁の機動隊員3人が、のどに全治1週間の軽傷を負った。

 警察庁は都道府県警に、重要施設への車両突入対策の徹底などを指示した。

 発表によると、自民党本部前の事件があったのは同日午前5時43分頃。臼田容疑者は高圧洗浄機のようなもので液体を噴射後、火炎瓶を投げ、党本部の門扉と機動隊車両のバンパー付近を焼いた。火炎瓶の一部は党本部敷地内に落下した。

 臼田容疑者は同5時52分頃、首相官邸前の防護柵に軽ワゴン車で突っ込み、警察官に発煙筒のようなものを投げた疑いで逮捕された。調べに黙秘している。

 捜査関係者によると、車内にはガラス瓶に着火剤2本を貼り付けた複数の火炎瓶と、ポリタンク約20個があった。中身はいずれも大半がガソリンだった。

 臼田容疑者は当時、薄黄色の防護服姿で、自身の軽ワゴン車の方にも発煙筒を投げた上、車内に火を付け、座席のシートを焼いた。

 臼田容疑者は川口市出身。2009年の衆院選に埼玉2区から「供託金制度の廃止」を掲げて出馬を検討していた。本人のものとみられるX(旧ツイッター)には22年2月、「誰しもが立候補できない限り、暴力的になるのは必然である」などとする投稿があった。

 警視庁は19日夜、臼田容疑者宅を捜索し、詳しい動機を調べている。

 父親(79)が19日昼、報道陣の取材に応じ「(臼田容疑者は)反原発運動に熱心で、自公政権に強い不満を持っていた」と明らかにした。臼田容疑者は県内の私立高校を卒業後、運送会社のドライバーやウェブデザイナーとして働いた。父親と2人暮らしで、関西電力大飯原発(福井県)の再稼働を巡っては、泊まり込みで抗議したこともあった。最近は不定期のアルバイト生活を送り、自宅にこもりがちだったという。