経営者らとは現在も連絡が取れない状況が続いているという──

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「離職票はもらえず、退職もできない状況で……」──東京・足立区や千葉県内の「住宅型有料老人ホーム」で多くの入居者を残したまま、職員が“一斉退職”していた問題。運営会社による“給料の未払い”がきっかけで騒動に発展した。その後、区や市が介入する形で10月10日を期限に利用者らも退去を余儀なくされたという。報道番組『Live News イット!』(フジテレビ系)が取り上げ、多くのメディアがこの問題を報じている。

【写真】取材班が入手した足立区の老人ホームの重要事項説明書の一部。記載のある10万6000円の敷金については返還されないままだという

 運営会社は、今回の問題に対処する意思はないのだろうか。NEWSポストセブンでは元職員や運営会社に取材し、“現場丸投げ”の施設運営や慢性的な人手不足など、その実態について報じてきたが、退去に関する対応もまたずさんなものだったという。千葉市の関連施設の関係者は言う。

「施設封鎖にあたっては、主に残されたスタッフと、行政が派遣した介護士が中心となって10日までに退去の準備を進めました。当然ながら、残されたスタッフらは給料の未払いが続いています。

 転居先探しは老人ホーム紹介会社や別途契約があった担当のケアマネージャーなどに丸投げで、運営側は関わる気配すらなかったです」

職員と利用者家族の嘆き「退職もできない」「お金はどうなるのか」

 運営に対して連絡すら取れない状況に、生活苦を嘆く元職員も多い。足立区の老人ホームで働いていた元職員Bはこう漏らした。

「離職票ももらえず、正式に退職できていない状況です。このままだと給料が振り込まれないうえに、失業手当も受けられいまま泣き寝入りしなければなりません……。テレビの取材では社長も『(支払う)意思はあります』『法務対応する』『(対応について)書面で正式発表する』などと言っていましたが、このまま逃げられてしまうんじゃないかと不安でしょうがないです」

 職員だけではなく、転居を終えた利用者らの家族もまた、施設利用解約の手続きなどができずに頭を抱えている。
 足立区の「老人ホーム」に母親を入居させていた女性は、こう漏らした。

「急に電話があり、『施設が閉鎖するので転居先を探してください』と言われたんです。退去日までに何度も施設に電話で問い合わせをしましたが『ボランティアなのでわからない』といった状況が続き、埒があきませんでした。

 10日までになんとか退去はできましたが、運営会社からはその後も連絡がありませんね。入居時に支払った10万6000円の敷金に関しても説明はなく、不安に思っているところです……」

居抜きで“新施設オープン”?

 こうしたなか、千葉市の関連施設では新たな動きもあった。別の運営会社の名義で掲載されたある老人ホームの求人情報に、千葉市の関連施設とまったく同じ住所が記されていたのだ。

 事業者となっているのは千葉県内に事業所をおく、年商73.5億円(2023年12月実績)の企業。公式サイトによると9つの関連会社を保有しており、介護事業のほか経営コンサルティングも手がけているようだ。

 職員の“一斉退職”から1ヶ月も経たない期間で、運営会社がが変わったということなのか。

 この法人に見解を求めると「現在確定はしておりませんが、土地建物のオーナー会社と契約について前向きに話を進めているところです。なお、緩和ケア及び神経難病等の医療依存度が高い方向けの医療福祉施設での開設を検討しております。通常の老人ホームではありません」とのことだった。

 この事実を伝えると、前出の元職員はこう漏らした。

「まず、もともと働いていた従業員の補償をなんとかするべきですよね。施設の運営は二の次ですよ……」

 運営会社はいったいいつまで沈黙し続けるつもりなのか──。