【現代ビジネス編集部】「独自」落選危機の西村康稔、打開策は「杉田水脈の応援演説」と「公明党へ土下座か?」《泉房穂の援軍にビビりまくり》
「なぜ杉田さんが?」
「非公認の議員の応援弁士に、誰も来てくれないのはわかります。けど、その代わりがこの人とは、いくらなんでも……」
こう苦々しく語るのは、衆院選で兵庫9区から出馬する西村康稔氏の陣営幹部だ。元経産大臣の西村氏は「安倍派五人衆」のひとりで、裏金事件の結果、自民党非公認での出馬となった。
無所属で出馬する西村氏は、自民党からの選挙資金はゼロだ。衆院選では無所属候補は政見放送をすることもできないし、ポスターの枚数も制限される。そして、自民党からの人気ある応援弁士派遣はなく、来たい人もいない。非常に不利な戦いとなる。
ここで西村氏が応援弁士として呼んだのが、同じく非公認となり、比例中国ブロックからの出馬を断念した杉田水脈氏である。
杉田氏の応援が明らかになったのは直前のことだった。現代ビジネスが独自に情報を得た、西村氏の選対会議の席上で、幹部がこう発表したのだ。
「10月22日に杉田水脈さん──問題発言が多い女性ですが、その人が兵庫9区へ入ってきます」
こう困惑した表情で説明し、こう続けたという。
「さっき決まったばかりで、その人がどこでどうするとは決まったいません。だいたい昼頃に入ってきて、西村と演説会をやりたい」
この話は兵庫9区の大票田、人口30万人を超す明石市ではなく、3市で12万人の淡路島に限定という内容だ。明石市ではなく、杉田氏の応援を外に出したくないという思いが透けて見え、まった歓迎するムードはなかったのだ。
杉田氏も西村氏と同様に1564万円もの不記載があった裏金議員だ。
《同性カップルは子供を作らず生産性がない》
《女性はいくらでもうそをつけます》
といった差別的な発言や寄稿で問題となった。
「選挙中や!」とメディアにもキレて
《国連の会議室では小汚い格好に加え、チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場。完全に品格に問題があります》
こうしたブログへの記述については法務局に「人権救済」の申し立てがあり、「人権侵犯の事実があった」と認定されている。
西村氏を支援する兵庫9区の自民党市議が裏事情を話す。
「これまでの西村氏の選挙なら、党本部や安倍派の幹部が、引きも切らず応援にきてくれた。しかし『裏金議員』の烙印を押されて批判されている今の西村の応援に、わざわざ行きましょうと行ってくれる奇特な方はほとんどいません。
地元でも、西村氏が演説しても耳を傾ける人は少ない。ビラを配っていても『裏金のビラはいらん』と突き返される始末です。
西村氏は、テレビカメラの存在を狙って街頭に立つことで地元では有名です。しかし裏金の件を聞かれるのが嫌なので、今回はマスコミには山本一太群馬県知事が応援にきたときを除けば事前公表していない。非常にピリピリしている」
山本氏がやってきたのは10月17日午前。いくつかのテレビカメラが囲むなか、演説をはじめた西村氏。
「(裏金事件で)大変厳しい選挙ですが、日本経済の舵取りをもう一度、任せてほしい」と訴えた。有権者との握手を終えたころ合いを見計らい、テレビ局が声をかけられると「選挙活動中や」と険しい表情に西村氏。
場は凍り付いた。「こわぁ」という声もマスコミからはあがっていた。それほど緊迫しているのだ。
兵庫9区は西村氏以外に、日本維新の会から加古貴一郎氏、立憲民主党から橋本慧悟氏、日本共産党から高田良信氏が立候補を予定している。
中でも強敵は、炎上発言で人気が高い前明石市長・泉房穂氏の「弟子」を自認する橋本氏だ。昨年春の県議選で、泉氏の応援をバックに、明石選挙区で3万2千票という兵庫県内最多の得票で当選。2位は西村氏と親しい自民党候補だったが、1万6千票のダブルスコアの差をつけている。
昨年の明石市長選でも、泉氏の後継指名を受けた候補が、自民党と公明党の推薦した元明石市議に大差で勝利した。西村氏は泉氏に「連敗中」なのだ。
それゆえ西村氏の陣営の幹部会でも「これは西村と泉房穂の代理戦争」という意識が強い。
しかし、泉氏はXでこうポストした。
《『選挙応援』についてはすべて一律にお断りとしている。総選挙が目前に迫り、全国各地から政党を問わず応援の依頼が次々ときているが、今回の総選挙で特定政党や特定候補の応援に入る予定はない》
衆院選にはかかわらないとしていうのだ。
八方塞がりで公明党に
しかし、兵庫9区では
「選挙大好きで仕方ない泉氏のことだから、何かやってくるに決まっている。ましてや橋本氏は弟子や」(地元の県議)
という評判がもっぱらだ。
橋本氏の支援者もこう期待を寄せる。
「泉氏は橋本氏が無所属ではなく立憲民主党から出馬したのが、ちょっと不満かもしれません。しかし泉氏とも因縁が多々ある西村氏を倒せるとなれば、土壇場で動いてくれるのではないか」
また杉田氏が西村氏の応援弁士としてやってくることについては
「あの杉田氏が、ここにが入るなんて西村氏らしい面白いセンスです」
と苦笑するばかりだった。
西村氏といえば、斎藤元彦前知事ともかかわりが深い。パワハラや「おねだり」の内部告発で、不信任決議案が県議会で全会一致で認められ、兵庫県知事の座を失った斎藤前知事だが、維新とタッグを組んだ西村氏は、自民党の中でも斎藤氏を最もバックアップした「後見人」として知られる。これが大きなマイナス要因となっているのだ。
「西村氏が演説中に『斎藤知事の責任はどうなっている』とヤジられることもあります。斎藤知事は裏金議員と同様に、全国規模で評判が悪いわけですから、これもマズい」(前出・地元の県議)
もう八方塞がりの西村氏が頼るのは、非公認ながら推薦を出してくれた連立与党の公明党である。
10月19日、公明党の会合に西村氏は参加して挨拶するという。
「実はその前に、公明党ではなぜ西村氏を推薦したのか、地元市議や幹部への説明が
あった。公明党支援者の9割が西村氏推薦に反対しているようで、反発がすごい。
事前の会合では、有権者の怒りや抗議をどのようにしてかわし誤魔化すか、有権者への説明の仕方を伝授するという話も伝わっている。しかし、とても小手先のことでは無理でしょう。
西村氏が現れる19日の会合では、西村氏本人が土下座して支援を求めるという声もある。しかし、公明党が票を集めても勝てそうにないし、土下座したところで票はかわりません。もはや、そこまですることないと思いますが」(兵庫9区の公明党支援者)
今回は非公認かつ無所属なので、当然、比例復活はない。背水の陣の西村氏は、杉田氏の援軍という“奇襲”で勝ち抜くことができるのか。
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