「33年前に他界した人物が、石破邸の持ち主に」 石破首相の豪邸、相続したにもかかわらず登記されていない問題が
生まれ故郷での“掟破り”
誠実な印象で支持を集めてきた石破茂首相(67)に、ほころびが生じ始めている。果たして政治家として世間の期待に応えることができる人物なのか。改めて検証すべく、その原点をたどると、石破家を巡る“ルールを守らない”遺産相続の問題があって……。【前後編の前編】
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清廉潔白、クリーンな印象を持たれていることが、自らへ集まった支持の源泉である――。そんな自負があるのだろう。首相に就任して以来、石破氏が呪文のように繰り返す言葉がある。
先月27日、石破氏は自民党新総裁に選ばれた直後の会見で、
「ルールを守る政党でなければならない」
と、口にしたかと思えば、今月1日、首相に就任して初の会見でも、内閣の基本方針は「五つの守る」で、その1番目が「ルールを守る」だと語る。
さらには今月7日、衆議院本会議の代表質問においても、野党から“裏金議員”を総選挙で公認するのかと問われた石破氏は、
「厳しい姿勢で臨み、ルールを守る自民党を確立する」
と述べて、金科玉条のごとく「ルールを守る」ことの大切さを訴えてきた。
もちろん、それは自らを省みた上で初めて言える言葉である。
だが、実は石破氏の生まれ故郷では、とんだ“掟破り”が続いているというのだ。
約213坪の豪邸
その仔細に触れる前に、石破氏が国会議員として衆議院に提出を義務付けられている「資産等報告書」を確認しておこう。
石破氏は所有する資産として「土地」「建物」「株券」「自動車」の四つを報告書に記載している。
石破氏が所有する土地と建物は、地元・鳥取県鳥取市上町にある自宅を指す。土地約213坪(705平方メートル)、建物の床面積は約116坪(386平方メートル)の豪邸だ。
実際、現地を訪れてみると、普段から後援者などの来客が頻繁にあるためだろう、玄関先には複数台が止められる駐車スペースがあって、現在は鳥取県警のパトカーが常駐。制服姿の警官が周囲を警戒している。
今でこそ物々しい雰囲気が漂うが、県庁のある官庁街にも近く、石破邸同様、広い敷地のお屋敷が立ち並び、市内でも人気の住宅街だという。
「娘さんは地元の学校に通っていた」
近所の住民に話を聞くと、
「東京にいることが多い石破さんを見かけることは少ないけど、娘さんは中学に上がる頃までは地元の学校に通っていたから、よく奥さんが近所のバス停まで送り迎えする姿を見かけましたよ。もともとは、石破さんのご両親が暮らしていましてね。石破さんのお父さんが知事を辞めて公舎を出た後、ここに越して来たのです」
石破氏の父・二朗氏は、鳥取県知事や自治大臣を歴任した政治家で、1981年に亡くなった際は、田中角栄元首相が葬儀委員長を務めたことでも知られる。
前述した「資産等報告書」によれば、この豪邸を石破氏は〈相続〉したとのことだが、当該の土地と建物の登記簿には驚くべき事実が記されていた。
「石破さんの物件も対象」
石破邸の登記簿を確認すると、土地と建物は二朗氏の死後、石破氏の母親・和子さんが相続した形になっているが、大手紙の訃報欄をたどると、和子さんは91年に亡くなっている。
ところが、である。現在でも登記簿の所有者には和子さんの名前が記載されたまま。つまりは、今から33年前に他界した人物が、石破邸の持ち主になっているわけなのだ。
資産報告と登記簿の内容に齟齬(そご)が生じている格好だが、石破氏が親から相続したのに未登記となれば、見過ごせない問題が生じる。
「今年4月、不動産登記法の改正によって、不動産の相続登記が義務化されました。違反した場合、10万円以下の過料が科せられます」
とは、不動産業界に詳しいジャーナリスト。
「土地や建物を相続したと知った日から、相続人は原則3年以内に相続登記の申請を行わないといけません。今回の法改正以前に相続された不動産も例外ではなく、もちろん石破さんの物件も対象です。義務化にあたっては、法制化から3年の猶予期間が設けられているので、2027年までに相続登記をする必要があります」
猶予期間があるとはいえ……
今や石破氏は行政府のトップとして、国会の定める法律を推進する立場だ。国民には煩雑な手続きを強いておきながら、猶予期間があるとはいえ、いまだに自ら何ら手を付けないとなれば「言行不一致」との誹りは免れまい。前述のように、公の場で石破氏は「ルールを守る」と声高に繰り返してきたのだから、なおさらだろう。
そもそも相続登記の義務化が法制化された背景には、石破氏が熱心に取り組んでいる「防災」や「地方創生」といったテーマが根深く絡んでいるのだ。
後編【「石破さんが登記をサボるのは許されない」 石破首相はなぜ地元の豪邸を登記していない? 専門家が解説】では、登記の扱いを熟知しているはずの石破首相が登記を行っていない理由について、専門家の解説を紹介している。
「週刊新潮」2024年10月17日号 掲載