『連続テレビ小説 おむすび Part1  (NHKドラマ・ガイド)』NHK出版
2024年9月30日からスタートしたNHK朝の連続テレビ小説『おむすび』。平成ギャルを描いていることでも早速、話題になっています。

しかし今回の朝ドラでは主演の橋本環奈さんに対するさまざまな意見も寄せられているようです。

◆“平成”や“ギャル”!今までになかった朝ドラだが苦戦中

『おむすび』は福岡・糸島を舞台に、平成元年生まれのヒロインがギャル連合や野球青年たちに囲まれながら栄養士の道を歩んでいくストーリーです。橋本さんの姉役の仲里依紗さんが地元の伝説のギャルを演じるなど、“平成”や“ギャル”のキーワードが散りばめられた作品になっています。

そんな「おむすび」ですが、初回放送から2週目を迎えている中ですでに苦戦を強いられています。

日本初の女性判事および家庭裁判所長を描き、女性差別や法制度に立ち向かう重厚な社会派作品として高評価だった前作『虎に翼』。そんな前作からバトンタッチした今作は、明るくポップなストーリー展開やギャル語が飛び出すセリフ回しなどから「ギャル要素が強すぎてなんか軽い」、「自分が50代だからか、ギャルの世界観になじめない」といった反応が。

また主演の橋本さんに対しても「漫画の実写化作品はよかったけど朝ドラとなると演技が浅く見える」、「メンタルが強くて体力があるから繊細な演技が苦手そう」といった批判もネット上では散見されます。

◆「劣化した」の誹謗中傷も気にしないメンタルの強さ

橋本さんはかつての朝ドラの恒例となっていたオーディションでのキャスティングではなく、NHK側から直接オファーを受けて今回主役に抜擢されました。こうした流れは近年の朝ドラでは珍しくなく、前作の伊藤沙莉さんも同様です。

NHK側としても、すでに売れている女優を主演にすることは、知名度や話題性があるだけでなく、不祥事のリスクがないクリーンなイメージや、タレント力を大きく買ってのことでしょう。

そもそも橋本さんと言えば福岡のローカルアイドルグループ「Rev. from DVL」在籍時から話題となり、瞬く間に全国区へと知名度を広げました。その後は映画やドラマに活躍していますが、その人気は可愛らしいビジュアルだけではありません。

お酒好きだったり体型が変化したことを「劣化した」とネットに書かれても「全然気にしないで米食べる」と公言したりと男前で明るい性格も知られています。

そんな彼女のメンタルの強さを女優としての技量や素質に欠けるとみなす評価は、的外れと言えるのではないでしょうか。

すべての女優が繊細でか弱い自身の一面を持っているからそれを演技に乗せているわけではないでしょうし、体力があってメンタルの強さが活かされた演技があってもいいはずです。そんな溌剌(はつらつ)とした橋本さんの個性は、ここまで国民的女優として愛される理由にも繋がっているのは紛れもない事実でしょう。

◆新境地の攻めた朝ドラと橋本環奈に注目

若干25歳にして2024年上半期のCM起用社数が11本にものぼるほど、好感度や知名度が高い橋本さん。

今回の作品の舞台は橋本さんの故郷の福岡であること、“ギャル”という華やかさや周囲を明るくする要素、橋本さんも大好きな食にまつわるテーマであることなどから、この人選は適任だったといえるでしょう。

平成時代に青春を過ごした30代から40代にとっては親近感も覚えやすく、今後の展開に期待も集まる「おむすび」。

戦前や戦後を描いた作品が多かった中で本作は朝ドラとしてもチャレンジでしょうし、橋本さんとしても朝ドラ主演が今後の女優人生においてもターニングポイントとなるはず。ある意味では守りに入っていない、攻めた朝ドラを見せてくれると期待してしまいます。

これから放送を重ねるにつれてストーリー展開はもちろん、これまでのドラマや映画では見られなかった橋本さんの表現が見られるかもしれません。

<文/エタノール純子>

【エタノール純子】
編集プロダクション勤務を経てフリーライターに。エンタメ、女性にまつわる問題、育児などをテーマに、 各Webサイトで執筆中