約400万年前から生息していたとされるマンモスは、約4万〜数千年前までに全種が絶滅したと考えられています。絶滅の原因としては、氷河期末期の気候変動の影響とする説や、狩猟の対象となった結果数を減らしたという説が有力ですが、新しい研究では「花粉」が原因だとする説が提起されています。

Sense of smell reduction as factor for mammoth’s and other mammals extinction. Immunoglobulins as possible markers - ScienceDirect

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S295047592400008X

Pollen allergies drove woolly mammoths to extinction, study claims | Live Science

https://www.livescience.com/animals/mammoths/pollen-allergies-drove-woolly-mammoths-to-extinction-study-claims



マンモスの代表的な種であるケナガマンモスは約1万4000〜1万年前にほとんどの個体群が絶滅しましたが、北極海に浮かぶウランゲリ島の個体群は約4000年前まで生き延びていたことがわかっています。2024年6月に発表された研究では、ウランゲリ島の個体群は徐々に絶滅したのではなく、「謎の事象」によって突如絶滅したことが明らかになりました。研究者によると、原因は不明ですが、絶滅するほどの問題はなかった遺伝的多様性を持っていたケナガマンモスが、「何らかのランダムなイベント」で一斉に絶滅したと考えられるそうです。

マンモス最後の個体群は徐々に絶滅していったのではなく「謎の事象」によって突如絶滅したことが判明 - GIGAZINE



by Timothy Neesam

イスラエルの研究機関であるSpringStyle Tech Designのグレブ・バーシュタイン氏らは科学ジャーナルの「Earth History and Biodiversity(地球の歴史と生物多様性)」に発表した研究で、ケナガマンモスの絶滅を助長した可能性として、「氷河期末期に上空に漂っていた花粉の影響」について指摘しました。研究者らによると、地球温暖化により植物が繁栄したことで花粉が大量に飛散し、アレルギー反応を引き起こした結果、ケナガマンモスの嗅覚が鈍り、個体同士の正常なコミュニケーションが阻害された可能性があるとのこと。繁殖期に互いの匂いを嗅ぎ分けることができなかったことで、マンモスは交尾することができず、個体数が急激に減少し、最終的には絶滅したと研究チームは主張しています。

また、動物の嗅覚は生命維持に不可欠な機能のいくつかを担っており、ケナガマンモスにとっても交尾相手を見つけるほか、食物の発見、移動中の方向決定、捕食者を感知して逃れる手段など、様々な重要な役割があったと考えられます。ケナガマンモスの鼻が花粉症で詰まっていた場合、生き抜くために必要ないくつかの機能が阻害されていた可能性があります。

マンモスが実際にアレルギーに悩まされていたかどうかを調べる方法として、胃の内容物を調べてアレルギーを引き起こす植物や花粉がないか調べる方法があります。バーシュタイン氏らの研究によると、ミイラ化したマンモスの組織や周囲の保存された植物質には花粉が埋め込まれているものもあり、過去の刺激物を特定するのに役立つ可能性があるそうです。

花粉が実際にマンモスのアレルギー反応を引き起こしたかどうかを判断するためには、アレルギー反応中に体が生成する免疫システムのタンパク質を探す必要があります。以下の画像は、実際に研究でタンパク質の採取に用いられたマンモスの胴体の化石。結果として、ケナガマンモスの胴体や腸から、免疫タンパク質のペプチドを検出することに成功しています。さらに化石化したマンモスの糞便を検査することで、マンモスがひどい花粉症にかかっていたかどうかを調べることができる可能性があります。



一方で、バッファロー大学の進化生物学者であるヴィンセント・リンチ氏は、「アレルギーがマンモスの絶滅に大きく関与したという考えは、かなり突飛なように思われます。どのように証明するのか、私には分かりません」と語りました。リンチ氏によると、古代のDNAサンプルは「ケナガマンモスが特定の植物の匂いを嗅ぐ能力を失った」ことを示していますが、実際に花粉が原因で嗅覚に影響を受けていたとしても、それが絶滅の原因であるかはさらなる研究による裏付けが必要とのこと。リンチ氏は「依然として、環境要因と人間の影響の組み合わせがマンモスの絶滅の原因であると考えています」と述べました。