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 今年3月で入社15年の節目を迎えたTBS江藤愛アナウンサー(38)。朝・昼の情報番組、音楽番組、ナレーション、特番など多方面で大車輪の活躍を見せている。視聴者と局から信頼され、愛される「TBSの顔」だ。カメラの前で見せる安定感の裏には「しゃべるよりも書くことが好き」という素顔があった。(山内 健司)

 「ひるおび」(前10・25〜後1・55)がある月〜水曜は朝7時ごろ、「THE TIME,」(前5・20〜8・00)がある木、金曜は深夜2時ごろに出勤する。週5日、生の情報番組でフル稼働だ。とりわけ入念な準備が必要な生放送。ハードな業務であることは想像に難くない。だが、笑顔で「準備は全く苦ではないです。もはや生活の一部で歯磨きみたい」と表現し、「むしろ、しないと居心地が悪い」とさえ言う。

 その準備とは、書くことだ。自宅で手に持つボールペンを眺める時間があるほどの文房具好きから転じ「書くことが大好き」。付箋やノート、台本に書き込んで準備することで、楽しみながら放送に臨めていることが何よりの強みだ。

 入社1年目から使用する、顔よりも大きな筆箱にはボールペンやマーカーが約30本。「番組ごとなどで全て使い分けてます」と“マイルール”の存在も明かした。1年目に100円で購入したボールペンも芯を入れ替えて使い続けている。

 家計簿もアプリではなくノートに記帳。「ひるおび」では昨年からペーパーレスで番組内などでiPadが導入されるも、紙に書けないことに「どうしよう」と不安が募り、ノートを持参しメモする徹底ぶりだ。「書くことで情報が整理整頓される」と信念を貫く。

 2009年に入社。情報番組を中心に経験を積み、持ち前の準備力を発揮。安定した立ち居振る舞いで、特番やイベントにも引っ張りだこだ。昨年は世界陸上の総合司会も初担当し、「好きな女性アナウンサーランキング」(オリコン調べ)では2位を記録。「言われても意識はしてないんです」と恐縮するが、紛れもない「TBSの顔」だ。活躍を続ける中、アナウンサーとしての意識が変化した一つの大きな転機が20年3月30日にあった。

 「ひるおび」放送前に志村けんさんの新型コロナ感染による訃報があり、くしくも夜には進行を務める「CDTVライブ!ライブ!」の放送が開始となった日。世間が大きな不安に包まれた当時を「歌番組を放送していいのか、怖くなった」と振り返る。だが、「こんな時こそ視聴者に元気を届けよう」とスタッフに背中を押され、カメラ前に立った。それまで約10年間は職務を「感情を出さず情報を正確に伝える」と考えていたが、初めて「元気や笑顔を届けたい」と感じた。

 その感覚は情報番組にも生きる。「感情を持ってニュースに接することで、より深く届く場合もあるのかな」と、自分なりの“分かりやすさ”を追求している。

 理想像は「江藤さんがずっとここにいてくれたら、番組が落ち着く、視聴者が楽しいと思ってもらえる」。そのためには、侍ジャパン前監督・栗山英樹氏の言葉「明日はいいから、今日だけは全力で生きよう」を引用し「一日一日を大切にする」と強調。12年間出演中の「ひるおび」についても「目の前のことを大切にしてきた結果なのかな」と頬を緩めた。

 「TBSアナの仕事を全うすることがモットー」。フリー転向や転職は「一度も思ったことがない」とし「どんな形でも定年までいたい」と“生涯TBS”を宣言。これからも大好きな文房具を相棒に毎日書き続け、局を背負ってカメラの前に立ち続ける。

 ≪小学生時からマイルール≫文房具にハマったのは小学生の時。同級生と色ペンやシールを集めるうちに自然と没頭した。当時から学校、図書館、塾などで別の筆箱を使い分けるなどのマイルールがあった。現在、ラインマーカーの使い方にも独自ルールがあり「スタッフさんに規則を理解したいと言われますが、うまく伝えられないんです」と苦笑いした。仕事帰りにはスーパーやドラッグストアと同じ感覚で日常的に文房具店に立ち寄り「新しいのないかな。この文房具あったら仕事に役立つかな」と思いを巡らせている。

 ◇江藤 愛(えとう・あい)1985年(昭60)11月14日生まれ、大分県出身の38歳。青学大卒。06年には準ミス青山に。「みのもんたの朝ズバッ!」や「はなまるマーケット」などでも活躍。「CDTVライブ!ライブ!」ではライブハウスのアルバイト「えとちゃん」として進行役を務める。趣味はミュージカル、舞台、歌舞伎の鑑賞。パン作りのライセンスを持つ。