61分から投入された上田。(C)Getty Images

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 5月19日に行われたチャンピオンズリーグ(CL)のリーグフェーズ第1節で、フェイエノールトのストライカー、上田綺世のシュートがレバークーゼンのゴールネットを揺らしたが、惜しくもオフサイドの判定に泣き、思わず天を仰いだ。試合はレバークーゼンに0−4で完敗した。

 4点ビハインドで迎えた61分からピッチに入った上田は、1トップ&2シャドーシステムの左シャドーを務め、ときにはCFサンティアゴ・ヒメネスと2トップのように並びながら虎視眈々とゴールを狙っていた。

 73分、上田のポストプレーを起点にフェイエノールトはチャンスを作り、最後はアニス・ハジ・ムサのクロスをミランボがヒールで流したボールを、上田が左足でトラップシュートを決めた。しかし、ポストプレーの直前に日本代表FWがわずかにオフサイドポジションの位置にいたことから、ゴールは認められなかった。

「今日は左(のシャドーストライカー)でしたけど常にゴールは狙ってました。ちょっと厳しいスコアでしたけど、僕なりに前向きにトライした中でのゴールだった。悔しいですけど、次は結果になるように準備したい」

 幻のゴールシーンでは、随所に上田の良さが出た。ハイボールに対し、上田は敵のマークを寄せ付けること無く高く飛んで胸トラップでボールを処理し、MFクインテン・ティンベルがゴールに正対するようにパスを出した。シュートを撃つ前には、右ウイングのムサが仕掛けている最中に、一度、ヒメネスの前に入ってから彼の裏に動き直すことで、完全にDFの死角に入ってフィニッシュワークにつなげた。左足のトラップからシュートへの移行も非常にスムーズだった。
【動画】どこでオフサイド?上田綺世の幻のCL初ゴール
「ノーゴールに悔しさはありつつも、いいプレーが出来たのでは?」と尋ねると、上田は「そうですね」と返し、こう続けた。

「自分の与えられた時間の中で最大限表現することをトライしました。それをもっと結果にしていかないと自分の立場は変わらないので」

 フェイエノールト1年目の昨季はエース、ヒメネスの牙城を崩せず5ゴール・1アシストに終わった上田は、今季はまだ先発出場が無く厳しい序盤戦を過ごしている。一方、昨年から上田は日本代表でコンスタントにゴールを決めるようになり、9月のW杯アジア最終予選では2試合とも先発し、2ゴール・2アシストを記録した。

「オランダで試合に出られてない時間に自分がトライしたり、もがいたりしたことが、代表で逆に結果になる。そのことは自分が成長できるいい環境だと思います」

 
 日本代表が中国やバーレーンを押し込み、優勢に試合を進める中、上田は敵陣中央のスペースが無いエリアでDFを背負いながらポストプレーをしていた。これはフェイエノールトでの1年余りの期間に磨きをかけてきたもの。「オランダで取り組んできたものが、日本代表の試合で還元出来ているのでは?」という質問に対し、26歳のストライカーはこう答えた。

「それはもちろんあると思います。こっちで求められていることと、僕がずっとしてきたこととは違いました。去年1年間も今年も、自分のそういう無かった部分とか、必要な部分を補うトレーニングとか、色々トライしてきました。それが今、ちょっと(プレー)スタイルは変わりましたけど、代表でも発揮できてるんじゃないかなと思います」
 
 オランダの強豪クラブのストライカーは、ゴールを取ることはもちろんのこと、ポストになって味方を前に向かせてプレーさせることがハイレベルで要求される。DF背後への動き出しを武器にする上田だが、プレースタイルを変えてまでオランダ式ストライカーに適合するよう「トライしたり、もがいたりしてきた」ことがクラブでも代表チームでも表現できるようになってきた。

 昨季のアトレティコ・マドリー戦では、自身で決めたはずのゴールがオウンゴールと記録されてしまった上田は、またしてもCL初ゴールがお預けになってしまった。それでもオランダリーグとは違ったハイテンポの試合のなかで、自身のポストプレーを起点にゴール前での駆け引きを織り交ぜながら相手ゴールを揺さぶったことに手応えを得ていたように見えた。

取材・文●中田徹