イェヌー・リステシュ

写真拡大 (全2枚)


ロビー・ラカトシュの5年ぶりの来日が近づいてきた。もちろんキングたるラカトシュの演奏が聴けること、それこそがこの来日最大の愉しみなのだが、ちょっと待って!脇を固める面々もかなりの巧者、つわもの揃いだ。

ここで採り上げたいのはツィンバロン奏者イェヌー・リステシュである。ツィンバロンというハンガリーの楽器はご存じだろうか。ピアノの弦と似た感じで弦が張られた、台形の楽器である。ただしピアノとは違い、(鍵盤とハンマーではなく)両手に持った2本のバチで演奏する。目にも留まらぬ速さで、所狭しとバチが跳びまわり、正確無比にビシバシ弦を叩いていく様はシンプルにとても気持いい。そしてその演奏姿には、どこかコミカルで愉快な雰囲気がある。

もちろんとてつもない技術が駆使されているので、コミカルなどという言葉はふさわしくないと思うものの、繰り出される超絶技巧に反するユーモラスさがまたいいのだ。ギャップ萌えである。

※バンドの写真は今回の演奏家構成ではありません。

そもそも日本にいながらツィンバロンを聴くチャンスは多くはないし、本場ハンガリー人による演奏を聴くチャンスはさらにないかもしれない。加えて、今回来日するリステシュはツィンバロン界の押しも押されもせぬ第一人者、別格の存在なのだ!ラカトシュとの共演歴が長く、あうんの呼吸でキングと渡りあえるのみならず、自分自身のアンサンブルを率いるリーダーであり、ソリストとしても世界中からひっぱりだこの名手でもある。すなわち自分も主役で、メインディッシュなのだ。

例えばリステシュは昨年ニューヨーク・フィルのコンサートに登場しているし、2018年にはロンドンの夏の巨大音楽祭BBCプロムスにも登場した。そのほかカーネギーホール、ウィーン楽友協会、アムステルダム・コンセルトヘボウなど、数々の欧米屈指のコンサートホールで演奏し喝采を浴びてきた。

そして今回のツアープログラムではリステシュだけがソロ曲を任されている(リストのハンガリー狂詩曲第2番)ことからも、存在感の大きさは明らかであろう。通常はピアノ、つまり10本の指で弾かれる作品をなんと2本のバチだけで演奏する。しかもピアノと比較して遜色ないド迫力の演奏とあっては、聴き逃すわけにはいかない。ぜひとも多くの皆様に楽しんでいただきたいものだ。

演奏が気に入ったらどうか遠慮なく「ひゅーひゅー!」と黄色い声援や大喝采を送ってほしい!

レッツ・ツィンバロン。

文=山根悟郎