「ペッツファースト」の理念は見かけ倒しか?(P's-first HPより)

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“子犬は幼く小さいうちに売ったほうが売れるから子犬のため”

「法令違反疑惑」を指摘した本誌(「週刊新潮」)に「出版差し止め請求」まで起こした「ペッツファースト」。いまだ「違反はない」との主張を崩そうとはしない同社がHPに出した見解には“大うそ”が含まれていた。さらに“利益ファースト”を示すエピソードも続々と寄せられ……。【前後編の後編】

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【写真を見る】「移動中に死亡」「低血糖」「300g台の極小」など気になる文言が記載された内部資料

 前編【「サイズが小さければ小さいほど高額で引き取られる」 ブリーダーが告発するペット業界の闇…規制が堂々と破られる現状とは】では、現役ブリーダーによる、ペット業界の裏側に関する貴重な証言を紹介した。

「ペッツファースト」の理念は見かけ倒しか?(P's-first HPより)

 さらに、法令違反の疑惑があるペッツファーストの正宗伸麻社長に関しては、このような証言も。

「正宗伸麻社長が会社の朝礼で“子犬は幼く小さいうちに売ったほうが売れるから子犬のため”といった主旨の発言をしたのを聞いたことがあります」

 ペッツファーストの元幹部社員はそう明かす。

「元々は正宗社長の父親が『ワンニャン村』という犬猫の移動販売からスタートしたペットショップを経営していて、正宗社長の代になってからペッツファーストに社名変更しました。彼がよく言っているのが、“ペット販売におけるエルメスになりたい”。それで会社のイメージカラーがオレンジなのです」

飼っているペットの名前は「ドンペリ」

 実際、ペッツファーストは他社と比較して1個体あたりの価格が高く、「高級志向」を売りにしている。

「正宗社長自身、エルメスが大好きでよく買い物をしています。また、自分が飼っているペットに『ドンペリ』という名前を付けていたり、偏った高級ブランド志向がある印象です」

 元幹部社員が続けて語る。

「ペッツファーストでは、200万円、300万円する特にかわいい生体をプレミアムドッグとして売っています。しかし、生体を販売する企業において、かわいさで普通の子犬よりも優位性を持たせ、より高価格で売る、というのが私には解せなかった。『ペットを最優先に』とうたいながら、やっていることは生命に対して、かわいい子と普通の子という区別をはっきりつけることなのです」

 別の元社員もこう話す。

「正宗社長は、店舗の売り上げの報告会などで締めの言葉として“今日もペッツオールウェイズカムファーストの気持ちでお願いします”と言います。しかしそれは表の顔で、実体は売上至上主義者です。経営会議ではよく正宗社長が“なんで売り上げ目標未達なの?”と不機嫌に役員を問い詰めています」

“なんで今の客を帰したんだ”と叱責

 売上至上主義は社内の隅々にまで浸透している。

「店舗には監視カメラが設置されており、その映像を本社で幹部がチェックしています。例えば、抱っこさせたお客さんが、それでも買わずに帰ってしまった場合には、すぐに幹部から電話がかかってきて、“なんで今の客を帰したんだ”と叱責されます。だからお客さんをなかなか帰さない、当日中に売ろうとする、強引な接客になりやすいのです」(前出の元社員)

 ペッツファーストでは毎月、売り上げの良かった店舗のトップ3を発表し、成績の良い店舗は表彰されるという。

「販売員は売ったら売っただけインセンティブが入るので、トップセールスだと、年収800万〜900万円になります。ペット不可物件に住んでいる人など、ペットを飼育できない人を相手にする時は気を付けなければいけない、という教育は一応されていますが、実際には売れば売るほど給料が上がるので現場では守られていません」(同)

“加入しないと生体を渡せません”

 ペッツファーストにはペットの購入時に加入できる「ほっとサポート」という制度がある。

「このサポートに加入するかどうかはあくまで任意。が、ほとんどの飼い主から“強制的に加入させられた”との話を聞きます」

 ペッツファーストと提携していた動物病院の院長が明かす。

「このサポートに加入すると、買った犬猫が1年以内に死んでしまった場合、代犬・代猫が提供される生命保障を受けられますが、年間契約で生体価格20%程度がかかります。入るかどうかは任意であるはずなのに、それをきちんと説明された、という飼い主はほとんどいません。中には“加入しないと生体を渡せません”と言われた人もいます」

「任意である旨を知らせるべき」

 ペッツファースト側は「強制加入」の事実はない、と否定するが、この院長はこう訴える。

「9割以上の人が行使しないサービスに生体価格の20%を払っているわけで、実質的には生体を1.2倍の価格で購入させられているに等しい。私は何年も前から任意である旨を知らせるべきだと伝えているのですが、いっこうに改善されなかった。今回、新潮さんの記事が出たこともあり、ペッツファーストとの提携関係を解消しました」

“関係解消”の動きがブリーダーなどにも広がる前に、ペッツファーストは“利益ファースト”を改めて出直すべきではないか。

 前編【「サイズが小さければ小さいほど高額で引き取られる」 ブリーダーが告発するペット業界の闇…規制が堂々と破られる現状とは】では、現役ブリーダーによる、ペット業界の裏側に関する貴重な証言を紹介している。

週刊新潮」2024年8月29日号 掲載