「彼のことを好きだったからなんてことはなくて、むしろ真逆で、彼のことがめちゃくちゃ怖くなって、とにかく完璧に彼の前から姿を消して縁を切りたかったんです。

 カフェも自宅も知られていたので、次の職場と新居が決まるまでの1ヶ月間は、何も気づいてないバカな女をニコニコしながら演じていました。無事に転職と引っ越しを終えて、彼には『既婚、ふざけるな』とだけLINEしてからブロックして、彼の前から消えました」

◆保育士時代も実はナンパされていた

 その後は彼から連絡などもなく、現在は平穏な暮らしができているといいます。

「それでも、今思い出しても本当に恐怖です。当時を振り返ると、保育士時代も茶髪の彼からこっそりLINE IDを渡されていたことがあったんですけど、すぐに破り捨てていたんですよ。関係する気はさらさらなかったし、そもそもチャラくてダサいオッサンだったので、キモッ! って思ってたぐらいでしたから。

 いまだにどうやって私が働いてるカフェがわかったのかはナゾなんですが、私のTwitterの裏アカから突き止めたのかも。それから別人のフリして常連客になるなんて、もはやストーカーですよね」

◆ヒモ旦那に説教されていたことに立腹

 そんな彼に、エナさんはいまだにムカついていることがあるそうです。

「アイツ、マルジェラのスーツなんて着て、デキるビジネスパーソンぶってましたが、本当はただのヒモ旦那だったんですよ。奥さんが夜職で稼いでて、彼は昼間パチンコとかしてるだけの生活だから、保育園の送り迎えは彼が担当でした。そんなクズ野郎にいつまでもフリーターじゃダメだなんて説教されたわけですから、ホントに最悪の気分ですよ」

 ――保育園を辞めたエナさんの新しい勤め先を突き止め、偽名を使って風貌を変えてまでつきまとう執着心はかなり異様。彼をヘタに触発せず、1ヶ月間も騙されているフリを続けてから、彼の前から一瞬で姿を消したのは賢明な判断だったと言えるでしょう。

<文/堺屋大地>

【堺屋大地】
恋愛をロジカルに分析する恋愛コラムニスト・恋愛カウンセラー。現在は『現代ビジネス』、『文春オンライン』、『smartFLASH』などにコラムを寄稿。LINE公式サービス『トークCARE』では、カウンセラーとして年間で約1500件の相談を受けている。X(旧Twitter):@SakaiyaDaichi