トヨタが「超スゴいAE86」を初公開! 伝説の「パンダトレノ」に“最強”「テンロクNA」を搭載! 画期的すぎる「最新ユニット」とはどんなものなのか

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「世界最強」の3気筒エンジンを搭載!

 毎年恒例の86乗りとBRZ乗りの祭典「FUJI 86/BRZ STYLE 2024」が2024年7月14日に開催。このとき、TOYOTA GAZOO Racing(TGR)が会場でサプライズ発表したトヨタ「スプリンタートレノ」(AE86型)が話題になりました。
 
 その名も「AE86 G16E Concept」。一見何のことかわからない車名ですが、名前に含まれる「G16E」の意味を知るとこのクルマの凄さがわかります。

「G16E」搭載の「AE86 G16E Concept」 (画像:TOYOTA GAZOO Racing)

 G16Eの説明の前に、「AE86」のことをおさらいしておきましょう。

【画像】超カッコイイ! これが「超すごいパンダトレノ」です!(45枚)

 AE86とは、1983年に登場したトヨタのスポーツカー、「カローラレビン(レビン)」と「スプリンタートレノ(トレノ)」の型式を表します。

 “ハチロク”の愛称で親しまれたライトウエイトスポーツは、1.6リッター直列4気筒DOHC自然吸気(NA)の「4A-G型」エンジンを搭載し、リアを駆動するFRレイアウトを採用。

 入門レースからドリフトまで、さまざまなモータースポーツで長きにわたってクルマ好きに愛されてきました。

 そんなAE86を一気に有名にしたのが、漫画「頭文字D」です。主人公が明らかに性能の劣るAE86型トレノで、名だたる国産スポーツカーを次々と峠バトルで倒していく痛快な物語を描いた作品は、アニメ化もされるなど世界中で大ヒットとなりました。

 白黒2トーンカラーの通称“パンダトレノ”は、主人公と同じカラーということもあり大人気。現在の中古車市場では、高額で取引されています。

 今回公開されたAE86 G16E Conceptには、その4A-G型ではなく1.6リッター3気筒「G16E型」エンジンをNA化し搭載しています。

 WRC(FIA世界ラリー選手権)でも活躍する「GRヤリス」に採用されたのち、これまで競技車、市販車の区別関係なく今まで世に出てきたG16Eは、すべてターボエンジン。初めてのNA版が、このAE86 G16E Conceptとともにお披露目されたのです。

 わざわざNA化したことには理由があります。会場に置かれていたスペック表には、「ベース車の4A-G型ユニットに状態のいい個体が減ってしまっている」現状が記してありました。

 AE86の車体が生きていても、エンジンがないから動かせない、そんな個体のオーナーに向けて提案した今後も乗り続けるための「エンジンスワップコンセプト」ということでしょう。

 AE86は当時からいろいろなチューニングを施して楽しまれるクルマでもありましたが、ターボやスーパーチャージャーといった過給機よりも、NAそのままのチューニングのほうが人気がありました。

 なぜならば、レスポンスの良さ、高回転までの自然な伸び、回転フィールの自然さなど、NAには乗っていて意のままに操れる気持ちよさにつながる利点があるためです。

 AE86の軽量なボディには、NAのほうがしっくりきたと感じる人が多かったのでしょう。

 そういったAE86本来のフィーリングを損なわないために、あえてのNA化を選択したと考えられます。

 もちろん、3気筒というエンジンのコンパクトさも、40年前のボディに収めるには有利に働くでしょう。

 G16E型エンジンは、前述のとおり世界中のラリー競技の一線で使用されている現役のハイスペックエンジンです。

 より負担のかかるターボ専用として開発されていますので、NA化してもハイパワー化に耐えられる強度を持ち合わせています。エンジン周りの補器類やECU、ハーネス類も最新の製品が使えるという点も利点です。

 もちろん、環境性能が現代の基準に準じたものになることも、メーカーがリリースするという点では大きいでしょう。「1.6リッターNA」という共通点も、AE86ファンには嬉しい限り。これらが、G16E型をNA化した理由として考えられる要素です。

画期的な「テンロクNA」 実際に市販化はされるのか?

 さて、このAE86 G16E Conceptに搭載されたG16E型のNAエンジンは、はたして市販化されるのでしょうか。その可能性は、「エンジン単体として」なら非常に高いと予想されます。

NA化された1.6リッター3気筒「G16E」エンジン

 まずは、開発コストの回収がしやすくなる点が挙げられます。

 G16E-GTSというエンジン自体、現在は搭載車両が限られています。GRヤリスに加え「GRカローラ」、そして最近追加されたレクサス「LBX MORIZO RR」の3車種にしか搭載されていません。

 この車種数が増えれば、エンジン開発に使われた莫大なコストは、回収できるようになります。

 搭載される車両がどのようなクルマになるのかは予想できませんが、コンパクトなG16E型エンジンなら、今後出てくるスポーツカーやスポーツグレードに使われてもおかしくないでしょう。

 登場の噂がいまだ絶えないコンパクトFRスポーツ「S-FR」や、昨年のジャパンモビリティショーで披露され、排気量拡大によって登録車化が予想されるダイハツ「コペン」。

 さらに、業務提携先も含めれば、マツダ「ロードスター」次期型などに積まれる可能性も否定できません。

 トヨタのエンジン型式の命名規則に倣えば、市販化の際には「G16E-GHS」のような型式になるのでしょうか。デチューンしてハイブリッドシステムと組み合わせられ「G16E-FXS」という道も考えられます。

 いずれにせよ、NA化したG16E型エンジンには明るい未来が待っているように思えるのです。

 そして、今回のAE86 G16E Conceptが、現代に残るAE86を後世へ残すためのひとつの答えとなっている点も見逃せません。

 過去には、BEVへ換装したAE86と、水素エンジンへと換装したAE86が発表されていますが、正直今回のAE86 G16E Conceptが一番現実的です。

 NA化する必要はあるものの既存のエンジンを使うわけですから、イチからBEVや水素エンジンを作り上げることとは話が違いすぎます。

 TGRでは、AE86のパーツも復刻販売を開始していますが、4A-Gからのスワッププログラムとして用意されてもおかしくないのではと考えてしまいます。

 このように、AE86 G16E Conceptはこの先の可能性が広がっていくキッカケとなる、ターニングポイントともいえるコンセプトカーです。

 ICE(内燃機関)の可能性はまだまだ残っていると、考えさせてくれる貴重な存在だといえるでしょう。エンジン単体だけでも、市販化されることを楽しみに待ちましょう。