スマホをメリハリ利用することが大事

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スマホの長時間使用が問題になるなか、自分が健康だと思う割合は、じつは使う時間ではなく、メリハリ利用をしているかどうかが影響しているという調査がまとまった。

NTTドコモの研究機関、モバイル社会研究所(東京都千代田区)が2024年8月22日に発表した調査「ICT機器を用いた連絡頻度が高いほど自分を健康だと思う」によると、メリハリ利用をしている人は、毎日4時間以上スマホを操作しても健康意識は高いという。

スマホのメリハリ利用って、いったいどういうこと? 調査した専門家に聞いた。

健康に最も自信がないのは、30代〜50代の働き盛り

モバイル社会研究所の調査(2024年2月)は、全国の15〜79歳の男女5719人が対象だ。

まず、「自分が同世代の人と比べて、健康と思うか」を聞いた。「そう思う」から「そう思わない」までの4段階で聞き、「思う」と回答した割合を性別年代ごとに集計した結果が【図表1】だ。

男女ともに若い世代とシニアで健康に自信がある割合が高くなり、30代〜50代の働き盛りで低くなる。特に女性は30代、男性は40・50代で最も低くなり、逆に、全世代を通じてダントツに元気なのが70代女性だ。

次に、スマホやパソコンなどのICT機器による連絡頻度(通話を除くメール、メッセージアプリ、SNSなど)と健康意識との関係を調べた。

【図表2】は、家族・友人・近隣の人などとの連絡頻度を、「ほぼ毎日」「週に数回程度」「月に数回程度」「ほとんどしない」ごとに、健康だと思う割合を集計した結果だ。

スマホなどで連絡し合う頻度が高いほど、健康意識も高くなる。若い世代ほど関係性が強くなり、40代以下では約20〜30ポイントもの差がある。連絡し合う人がいて、頻繁にコミュニケーションをすることが健康の自信を高めているようだ。

「毎日4時間以上」でも、メリハリつける人が健康に自信

続いて、プライベートのスマホ利用時間と健康意識の関係を、「毎日4時間以上」「毎日1〜4時間未満」「毎日1時間未満」の3段階で聞いた【図表3】。

「毎日1〜4時間未満」の利用が、全年代で健康への自信が最も高くなった。「毎日1時間未満」や「毎日4時間以上」と比較すると、平均で約4〜7ポイント高くなる。つまり、「毎日1〜4時間」のほどほどの利用が健康にはいいようだ。

ところが、健康によくなさそうな「毎日4時間以上」の人だけを対象に、メリハリ意識を持って利用しているかどうかを聞き、健康意識を調べ直すと興味深い結果が出た。

メリハリ利用とは、だらだらとスマホをいじったりしないで、目的を持って使うことを指す。「メリハリをつけて利用」「どちらでもない」「なんとなく利用」の3段階で、健康だと思う割合を集計した【図表4】。

すると、すべての年代で「メリハリ利用」の人は、健康だと思う割合が56〜75%も高くなった。これは、【図表1】と比較しても、「メリハリ利用」の場合は、たとえ毎日4時間以上利用しても、全ての年代で健康に対する自信が高いことがわかる。

こうした結果から、スマホ利用と健康意識との関係は、利用時間の長さより、利用意識(メリハリをつけて利用するかどうか)のほうが大きく影響している可能性があるという。

スマホで活発に連絡をとる若者は、アクティブで健康に自信

J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当したモバイル社会研究所の吉良文夫さんに話を聞いた。

――【図表1】で、男女とも若い世代とシニア層で健康だと思う割合が高いのはなぜでしょうか。働き盛りは、企業でも社会でも、ごく一部のシニア経営層を除けば、一番実質的な権力がある、エネルギッシュな世代のはずですが、健康に対する自信が低いことも不思議です。

吉良文夫さん 「あなたは同世代の人と比べて、健康だと思いますか?」という聞き方のため、他人と比較した場合の、自身の健康状態の主観的意識となっています。

ですから、同世代に病気や体調不良の人の割合が増えてくるシニア層では、目標とする健康状態に高望みすることが少なくなり、自身の健康に満足する割合が高くなると推測されます。ちなみに、健康状態が本当に悪い方は、本調査にそもそも協力していない可能性が高いです。

働き盛りの健康意識が低くなる理由として、日常生活が多忙で目標とする健康状態を維持できていない、健康のための行動を思うようにできていない、というジレンマがあるものと推測しています。

「仕事で疲れを感じている」「睡眠で十分に疲れがとれていない」と回答した人が多く、日常生活でのストレスの多さが自身の健康意識に影響している可能性もあります。

――スマホなどの連絡頻度が高いほど健康に自信があるという、【図表2】の結果も興味深いです。若い世代ほどその傾向が顕著だというのはなぜでしょうか。
コミュニケーション行動が活発とか、それだけ連絡を取る交友関係が広いとか、要するにそれだけ「アクティブ」ということなのでしょうか?

吉良文夫さん 家族・友人・近隣の人など、主にプライベートでの交流相手を意識した連絡頻度を聞いています。プライベートでの他者との交流が活発な人はご指摘のとおり、「アクティブ」な傾向があると思います。

若者はメール、メッセージアプリ、SNSなどでの連絡の割合が中高年より高いため、特に若い世代ほど傾向が顕著に出たのだと推測しています。

自分の生活に合った形で、スマホを上手く使いこなそう

――【図表3】の結果をみると、スマホ利用が1日4時間以内に人の健康意識が一番高いですね。やはり、使い過ぎは健康によくないのですか。

吉良文夫さん スマホを「毎日1〜4時間未満」利用している人の健康意識が最も高いという結果ですが、スマホは日常的にさまざまな目的で利用可能なツールなので、「使いすぎない適度な利用時間」という部分は人によってそれぞれ異なると考えられ、注意が必要だと思っています。

――それは、【図表4】のメリハリ利用をしている人は、利用時間が長くても健康意識が高いということと関係しているのでしょうか。そもそもメリハリ利用とはどういう使い方をさすのでしょうか。

吉良文夫さん 「メリハリ利用」については、「目的を持ち、メリハリをつけて利用している」という聞き方をしています。その反対が、「目的はなく、なんとなく利用している」というものです。

メリハリ利用とは、スマホを生活のためのツールとして目的をもって利用しており、スマホに振り回されていないということだと考えています。

スマホ利用時間が長い人、たとえば「毎日4時間以上」は健康意識が低いというような単純な関係(=スマホ利用時間と健康意識との関係)で理解すべきではないと考えています。今回の調査結果で、健康意識に大きな差異が表れたものは、利用時間よりも利用意識による違いでした。

――利用時間よりも使う意識が大事だということですか。

吉良文夫さん スマホ利用時間が短くでも、スマホ利用が健康意識にマイナスに働いている人たちがいると思いますし、逆にスマホ利用時間が長くでも、結果的に生活が充実して健康意識にプラスに働いている人たちもいると思います。

肝心なことは、各人が自分の生活に合った形でスマホを上手く使いこなすことが重要だと考えています。個人的には、スマホ利用で大きなストレスを感じたり、健康にマイナスに働いていると感じたりするようであったら、自身の使い方を見直すよい機会だと思っています。

(J‐CASTニュースBiz部 福田和郎)