時価総額約9500億円のセキュリティ企業トレンドマイクロが、身売りを検討しているとロイターが報じました。

Exclusive: Cybersecurity firm Trend Micro explores sale, sources say | Reuters

https://www.reuters.com/markets/deals/cybersecurity-firm-trend-micro-explores-sale-sources-say-2024-08-08/



Trend Micro Exploring Sale Amid Buyer Interest, Reuters Says - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2024-08-08/trend-micro-exploring-a-sale-amid-buyer-interest-reuters-says

ロイターが事情に詳しい関係者から入手した情報によると、トレンドマイクロはここしばらく続く円安と、日本の同業他社と比較して株価が割安になっている現状から、複数企業による買収の標的となっているため身売りを検討しているそうです。

トレンドマイクロは投資銀行と協力してプライベートエクイティを含む潜在的な買い手からの関心を募っている模様。

ロイターはトレンドマイクロに対して身売りの事実についてコメントを求めていますが、同社は「市場をリードする上場サイバーセキュリティ企業として、当社は業界をリードするAIプラットフォームを通じてビジネスの変革および顧客拡大に注力し続けています」とだけ返答しています。



トレンドマイクロはスティーブ・チャン氏、ジェニー・チャン氏、エヴァ・チェン氏によって1988年に設立されたウィルス対策ソフトウェアメーカー。同社はセキュリティ関連製品をウィルス対策ソフトウェアから、クラウドコンピューティング・ネットワーク・エンドポイントセキュリティへと拡大してきました。アメリカで創業されましたが、その後、台湾に移転。そして日本に設立された子会社が親会社の株式を買収して親子関係が逆転し、日本に本社を置く企業となっています。

トレンドマイクロの株価は2024年初頭から10%以上下落しており、これは日本市場全体や他の同業他社を下回る内容です。トレンドマイクロはCrowdStrikeなどのアメリカの大手セキュリティ企業と競合しながら収益性の向上を図っており、2024年7月に起きた世界中のWindows端末がブルースクリーンオブデスに陥ることとなったCrowdStrikeの障害を受け、同社から市場シェアを奪おうと躍起になっています。

なお、トレンドマイクロは2024年8月8日に2024年第2四半期(4〜6月)の決算を発表しており、売上高は前年同期比で13%増の686億円、営業利益が前年同期比で42%増の123億円を記録しています。

また、大手企業によるセキュリティソフトウェアへの支出増加を受け、サイバーセキュリティ業界では取引が増加しています。他にも、Googleの親会社であるAlphabetがサイバーセキュリティ企業のWizを230億ドル(約3兆4000億円)で買収することを計画していたことも報じられたばかりです。なお、Alphabetによる買収提案はWizにより拒否されました。

Googleの親会社Alphabetによる3兆6000億円規模の買収をセキュリティプラットフォームのWizが拒否、当初の計画通りIPOを目指すことに - GIGAZINE



トレンドマイクロの身売りについては極秘事項であるため、関係者は匿名でロイターに情報を提供しています。なお、身売り報道を受け、トレンドマイクロの米国預託証券(ADR)は10%近く上昇しました。