50代、60代で多くの人に浮上してくるのが、「実家の片づけ」「実家じまい」問題。実家にものがあふれている、実家を処分しなければならないなど、さまざまなお悩みがあります。整理収納コンサルタントの須藤昌子さんも、義実家じまいの真っ最中。進めるなかでとくに大変だったことを教えていただきました。

価値観が違いすぎる。“程よくもつ”ことができない世代

須藤さんの義両親は現在、高齢者施設に入居中。認知症を発症し、2人だけで暮らしていくことが難しくなったからです。義両親が出た後の家には、大量のものが残されました。

【写真】未使用のヘアケア用品のストックを見て悲しい気持ちに…

「ものを買うのは簡単だけれど、その人に必要なものや量は年齢とともに変化していくもの。多すぎるものをすべて使いこなすのは大変だし、高齢だとさらに難しくなることをひしひしと感じています」

今高齢とされる世代は、ものがない時代を経験しているからか、なにもかもため込むケースがとくに多い傾向にあります。

「大量の食器、大量の調理道具、とにかく同じ用途のものがたくさんあって途方に暮れました…」

そこで今回は、とくに処分が大変だったものを3つ、教えていただきました。

1:洗剤、防虫スプレー、消毒用アルコールが大量に

家の各所からどんどん出てきて、困り果てたのが薬剤。

「植物に使う防虫スプレー、洗濯用洗剤、消毒用アルコール、塩素系漂白剤、防臭スプレー、整髪料など数えきれません。いつ購入したか分からないので使用するのも怖いし、気軽にゴミに出すわけにいきません。とくにスプレーは中身を使いきってからでないと危険なので、本当に苦労しました」

「ヘアケア商品も、同じものが洗面所にいくつもストックされていました。使われずに捨てるのはもったいないという思いと、お金を無駄にした悲しさが入り混じった気分です」

2:粗大ゴミに出せないスプリングソファ

大型の家具は処分に手間のかかる代表的存在。その中でもとくに大変だったと須藤さんが話すのは、スプリングつきのソファです。

「スプリングが入っているソファは、自治体によっては粗大ゴミとして出すことができません。専門業者に引き取ってもらうしかないので、お金も余分にかかってしまいました。義両親がソファを買うときは、後でこんな苦労が待っているとは思いもしなかったでしょう」

3:人形と仏壇は供養してやっと手放せる状態に

思いが込められているものは、手放すのに勇気が必要です。須藤さんの義実家には、大量の人形があって困惑したそう。

「見られているようで、なんとなく捨てづらい…。いろいろ調べた結果、お寺で供養してもらうことにしました。段ボールに人形を収め、送ってようやく肩の荷が下りた感じです」

もうひとつ、手間がかかったのは仏壇の供養です。

「手放す前には、閉眼(仏壇に宿った魂を読経によって抜いてもらうこと)の儀式が必要です。お寺に相談し、日程を決めて、義実家に来ていただいて…と時間をかけて少しずつ進めました。さらに仏壇自体の処分はどうするか? という問題も…。仏壇屋さんに引き取ってもらうか、粗大ゴミとして出すか、いろいろ検討しましたが、わが家は仏壇屋さんを選択。運び出してお焚き上げをしてもらいました」

仏壇の問題はまだまだ進行中。仏壇の棚に入っていた遺影などは簡単に処分できず、親戚と相談している最中だと言います。

「捨てればいい、ではすまされないものが本当に多いと気づかされます。自分の娘にはこんな思いはしてほしくない。処分に迷うもの、困りそうなものは自分の手で先に処分しなければ、と強く感じているところです」

義実家の片づけをとおして、自分自身のもののもち方を改めて考えるようになったという須藤さん。皆さんも、今できることから始めてみてください。