ChatGPTやメタバースなど日々最新のテクノロジーが登場し、「ついていけないな…」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、「高齢の方ほど、最新のテクノロジーに触れるべき」とすすめるのは、高齢者にまつわる著書を多くもつ、高齢者医療の専門家・和田秀樹さん。その理由を教えてもらいました。

新しいものには60代のうちに触れておこう

今、高齢者の入り口にいる人たちは、ある意味とてもラッキーな世代だと思います。なぜならそれくらいの世代の人たちは、スマートフォン(スマホ)が普及し始めた頃がちょうど40代くらいなので、ほぼ全員が問題なくスマホを扱えるからです。

文明の利器と呼べるものはほかにもたくさんありますが、今の時代、そしてこれからの時代はスマホを使いこなせるかどうかが生活の質を大きく左右するのは間違いありません。もちろん、スマホも今後さらなる進化を遂げるでしょうが、基本的な使い方が感覚的に身についていれば、おそらく80代くらいまでなら対応は可能です。

また、これからも便利に使える家電や自動運転の車などが次々と発表されると思いますが、そういう新しいものにはできるだけ60代のうちに触れておくべきだと私は思います。なぜなら60代で覚えたことであれば、中等度以上の認知症にならない限り、80代でも間違いなく使えるからです。

最近ニュースでも頻繁に取り上げられている「メタバース」や「chatGPT」などの話にすでについていけていないという人も少なくないでしょうが、この先の人生を充実させるためにも、今のうちに体験しておくことを強くおすすめします。

多少ハードルが高そうに感じるものでも、70代、80代と年齢を重ねるにつれてそのハードルはもっと高くなりますし、とにかくやってみることが大事です。そのような新しい挑戦は一種の実験なのですから、前頭葉を刺激するという効果も期待できます。

テクノロジーの進化で幸せな老後に?

「やりたい放題」の人生を送るにしても、若い頃とまったく同じようになんでもできるというわけにはいきません。だれだって歳を重ねるにつれて「できないこと」だって増えていきます。

いずれ足が動かなくなり、もしかすると寝たきりになる可能性だって決してゼロではありません。そういう未来を想像すると落ち込んでしまいそうですが、考えたところでなにが変わるわけでもないのですから、「なったらなったで仕方がない」と割りきってしまうほうがむしろ得策だと私は思います。

また、そんな不安な未来の救世主として大いに期待できるのが、テクノロジーの進歩です。たとえば、人間のような国語力のあるAIの実用は2026年だと言われていましたが、予定より3年も早く、2023年に実用化しました。

寝たきりになってもテクノロジーを活用できれば強みに

今後もすごいスピードでさまざまなものが発展していくでしょうから、歳を重ねて外出もままならなくなり、ずっと家にひとりで過ごすことになったとしても、話し相手になってくれて家事もすべてやってくれて、さらには介護までやってくれるようなロボットを、だれもがもつ時代が早々にやってくることだって十分期待できます。

しかもそれは、私たちがイメージする「ドウイウゴヨウデスカ」といういかにもロボットという話し方をするものではなく、俳優の福山雅治さんみたいな声で、「俺はなにすればいい?」なんて聞いてくれる仕様になっているかもしれません。

3Dプリンターもすごい勢いで進化していますから、見かけまで福山雅治さんにカスタマイズできる可能性もあります。福山雅治さんのような見かけで、福山雅治さんのような声のロボットが、かいがいしく毎日世話を焼いてくれるのなら、寝たきりになるのも案外悪くないなと思う方もいるのではないでしょうか。

コンピューターの中に3次元の仮想空間を構築するメタバースも2030年までには一気に普及すると言われています。またVR技術を使ったヴァーチャル旅行のサービスはすでに始まっていますから、この先寝たきりになったとしても、海外旅行を諦めることはありません。

遠隔で触感を得られる技術の実用化も近いそうですし、今後、嗅覚や味覚を刺激することも可能になれば、ごちそうを食べる体験までできることになります。

つまり、実際の未来はこのようなテクノロジーの力を存分に活用できるはずなので、じつは捨てたものではありません。むしろ今より、ワクワクできることが増えている可能性だってあるのです。