【小寺信良の週刊 Electric Zooma!】あの親指カメラが4Kに到達。「Insta360 GO 3S」
ついに4Kが撮れるようになった「Insta360 GO 3S」
親指大でも4Kが撮れる
360度カメラをメインに据えるInata360が、前方しか撮れないカメラへ本格参入したのが、2019年の「Insta360 GO」であった。Insta360は一般にアクションカメラの文脈で語られがちなブランドだが、そもそもは全部撮ってあとから切り出しという、街撮りノールックカメラである。
Insta360 GOもモニターなしの親指大カメラであったことから、ノールックで街撮りをするカメラである。2021年にケースがスタンド替わりになるという「Insta360 GO 2」が登場したが、どう写ってるのか確認するためにスマホ接続が必須であり、小さいがそのメリットが活かせないというジレンマに陥った。
それが昨年の「Insta360 GO 3」では、ドッキングステーションともいえる「アクションポッド」側にディスプレイを付け、合体すると普通のアクションカメラと変わらない仕様になることで、「いざとなればカメラが分離」とコンセプトを逆転してきた。非常に上手いアイデアだったと思う。
そして今年発売された「Insta360 GO 3S」は、前作GO3と同サイズながら4K/30pの撮影に対応した。演算能力1.5倍増しのプロセッサと新規広角レンズを搭載し、従来よりもシャープな映像が撮影できるという。ストレージ64GBモデルの通常版が61,800円、128GBの通常版が65,800円。
4Kになっただけ……でもないInsta360 GO 3Sを、さっそく試してみた。
ボディはほぼ同じだが……
Insta360 GO 3Sはミッドナイトブラックとアークティックホワイトの2色展開。今回はアークティックホワイトの128GBモデルをお借りしている。なお公式サイトでは前モデルのInsta360 GO 3はキット製品も含め全種類在庫切れとなっており、今後の販売は3Sに集約されるものと思われる。価格も64GBモデルで1,300円アップするだけで解像度が倍になるので、ユーザーとしても不満はないだろう。
カメラを分離しても引き続きモニターできるのがポイント
外観は、アクセサリ類を共通にするためもあって、外寸などはGO 3と変わっていない。主な違いはカメラ部に集中している。レンズは35mm換算で16mm/F2.8。前作は11mm/F2.2だったので、4K解像度対応のために別レンズになっている。それに応じてカメラ本体重量も変わっており、35.5gから39.1gと、多少重くなっている。
主な違いはカメラ部
動画解像度は前作が2.7Kが最高だったのに対し、今回は4Kが最高値となった。これに対応して最高ビットレートも80Mbpsから120Mbpsに上がっている。またハイスピード撮影も前作はフルHD/120fpsのみだったのに対し、GO 3SはフルHDなら200fpsまで、解像度も上がり2.7K/100fpsが最高となった。
参考までに主なモードの動画解像度で前作との比較を掲載しておく。
モデル名 GO 3S GO 3 動画 4K 3,840×2,160@24/25/30fps - 2.7K 2,720×1,536@24/25/30fps 2,720×1,536@24/25/30fps 1440p - 2,560×1,440@24/25/30/50fps 1080p 1,920×1,080@24/25/30/50fps 1,920×1,080@24/25/30/50fps FreeFrame動画 4K 3,840×2,880@24/25/30fps - 2.7K 2,720×2,040@24/25/30/50fps - 1440p - 2,560×1,440@24/25/30/50fps 1080p 1,920×1,440@24/25/30/50fps 1,920×1,080@24/25/30/50fps スローモーション 2.7K 2,720×1,530@100fps - 1080p 1,920×1,080@120/200fps 1,920×1,080@120fps全体的に上方向へシフトするとともに、前作にはあった1440pモードが廃止されている。またフルHDでもう最高フレームレートが50fpsで、60fpsまで届かないところは変わっていない。このあたりがアクション系ではなく、街撮りカメラと判断した方が良いゆえんである。
静止画の解像度も上がり、16:9なら4,000×2,250ピクセル、4:3なら4,000×3,000ピクセルで撮影できるようになった。写真フォーマットも、前作は独自形式のINSPとDNGのみで、専用アプリを経由してJPEG等に書き出す仕様だったが、今回はJPEG、JPEG+RAWといった一般のフォーマットでも記録できる。
バッテリー容量には変化はないが、連続撮影時間はGO 3Sのほうが少し短くなり、カメラ単体で38分、アクションポッドと合わせて140分となった。GO 3はカメラ単体45分、アクションポッドで170分だった。なおこの数値は1080/30p撮影時なので、4K撮影時はもっと短くなる。
カメラ本体の防水機能は、GO 3Sが水深10mまでと、前作の2倍に向上した。なおアクションポッド側はある程度の防滴性能はあるが、カメラ並みの防水性能はないので注意していただきたい。
またちょっと珍しい機能としては、Apple製品ではお馴染みの「探す」アプリを使って、カメラを探せる機能が追加されている。これまでApple製品は標準で探せるのは知っていたが、対応デバイスであればサードパーティ製品でも同様に探す事ができるようだ。
iPhoneの「探す」アプリに対応
小さいカメラだと、固定していた場所から落ちたりするとそのまま無くしてしまう可能性も高まるが、スマホで探せるのはいい機能だ。ただ筆者が試した限りでは、最終段階でペアリングできなかった。
筆者の環境では追加できず
製品には通常版のほか、トラベルキット、アクションキット、ウォータースポーツキット、オールインワンキットがあり、それぞれ付属アクセサリが違っている。通常版にはカメラとアクションポッド、磁気ペンダント、簡易クリップ、ピボットスタンド、レンズガードが付属する。
貼り付けや三脚穴に対応できるピボットスタンド
帽子のつばなどに挟み込める簡易クリップ
服を挟み込んで固定できる磁気ペンダント
改良された各モード
では早速撮影してみよう。あいにく梅雨の合間を狙っての撮影のため、スカッとした晴れ間の映像が少ししかないが、ご容赦いただきたい。
今回は4K化とともに焦点距離も変わり、また画角モードも新しく追加されているので、あらためて比較してみる。
アクション広角
メガ広角
超広角
デワープ
狭角
「メガ広角」が新しく追加された画角だ。これまで湾曲補正したい場合は「デワープ」を使用するしかなかったが、メガ広角は「アクション広角」とほぼ変わらない画角で湾曲補正されている。アクション広角が一番広いが、このモードは「傾き補正」がOFFになってしまう。メガ広角は傾き補正も使えるので、通常はこれでOKだろう。
新設された「メガ広角」モード
手ブレ補正とは別に「傾き補正」が設定できる
解像度とプロセッサが変わった事で、手ブレ補正に影響があるのかテストしてみた。前作では手ブレ補正がレベル1~3となっていたが、本機では標準、高、最高という表記に変更されている。撮影後にソフトウェア側で補正を行なう「FlowState 手ブレ補正」は変わらず搭載されている。サンプルの最後のカットが、FlowState 手ブレ補正だ。
手ブレ補正モードの比較
すでに標準から強い補正がかかるので、一般的な撮影は標準で対応できるだろう。手持ち撮影でフィックスを撮りたいという場合は、高や最高で対応するという格好だ。
手ブレ補正「最高」で4K撮影したサンプルも掲載しておく。
4K手持ち撮影のサンプル
音声収録モードは「風切り音低減」、「方向性強調」、「ステレオ」の3モードなのは変わらずだ。以前からもそうだが、風切り音低減は音質が影響を受ける割にはあまり抜本的な対策になっておらず、このあたりは他のカメラに劣るところである。
前作はステレオモードが若干センターが右寄りの傾向にあったが、今回は改善されてきちんとステレオ感のある集音になっている。
音声収録のテスト
特殊撮影をテスト
前作からのアップデート点として、ハイスピード撮影のフレームレートが最高200fpsで撮れるようになったことが上げられる。実際に120fpsと200fpsをテストしてみた。
ハイスピード撮影をテスト
120fpsでは4倍、200fpsでは約7倍のスローモーションになるわけだが、200fpsにすると画角が若干狭くなるようだ。切り出し範囲を狭くしてフレームレートを稼ぐことで、画質的には200fpsのほうが落ちる。まあこの解像感なら、無理に200fpsで撮影しなくていいかな、と思うのだが、どうだろうか。
縦横自動判別機能も搭載された。カメラを横に構えれば横長に、縦に構えれば縦長の絵が撮れるのは当たり前だが、内部のジャイロセンサーを使って縦撮り時には縦動画としてのメタデータが付加される。スマートフォンと同じだ。
これまでは縦撮り動画は編集時に縦向きに90度回さなければならなかったが、今回は最初から縦動画としてインポートされるので、ひっくり返す手間がないというわけだ。
もう一つ新搭載されたのが、インターバル録画だ。これは撮影モードの中には含まれておらず、動画モードの状態から設定メニューで選択する。ユーザーが停止するまで自動的に撮り続けるので、撮影モードには入れなかったのだろう。
設定メニュー内に「インターバル録画」を追加
設定には、撮影秒数、インターバル間隔、動画解像度とフレームレート、画角、撮影パラメータ、傾き補正があり、アクションポッドの電源が切れると自動的に録画が開始されるという作りになっている。
撮影間隔や撮影モードを設定
電源が切れると撮影が始まるという仕様
今回は帽子のつばの先にカメラを装着し、3分間隔で15秒撮影するという設定で畑仕事の様子を撮影してみた。
インターバル録画されたクリップはスマホアプリ「Insta360」上でアイコンが違うので、すぐにわかる。Insta360にはAIによる自動編集機能があるので、インターバル録画されたクリップを自動編集させてみた。
インターバル録画してAIに編集させた動画
テロップや効果、音楽は自動的に付けられたもので、これらは設定でOFFにすることもできる。映像の使いどころもAIが判断しているわけだが、アクションのポイントをよく捉えている。長い作業を撮影してダイジェストにまとめるみたいな編集作業は、人力でやるとなかなかダルいが、その部分だけAIにやらせるというのは、なかなか効率的ではないだろうか。
総論
Insta360 GOは、親指大のカメラ部があるというところでは一貫しているが、製品の立ち位置としては毎回少しずつ変わっていた。だが今回はGO 3のアップグレード版として、同じコンセプトで機能アップした格好だ。
解像度が4Kになったのは大きなところだが、他にも画角モードが新設されたり、縦横撮影を自動で判別するなど、細かい使い勝手を上げてきたのがポイントだ。前作と価格がほぼ変わらないので、実質的に旧モデルは今回の新モデルへ刷新されるということだろう。
カメラ部と拡張バッテリー・ディスプレイ部が分離するという意味では、「DJI Action2」と似たところもあるのだが、Action 2は後継機が出ていない。一方GO 3は順調に後継機まで登場したのは、製品コンセプトがユーザーによく伝わったというか、タイミング的に時代が追いついたという事だろう。