好きな食べ物を聞かれると、真っ先にステーキや焼き肉などの肉料理が思い浮かぶ男性は多いはず。日本を含む23カ国における男女の肉の消費行動を調べた研究により、ほとんどの国で男性の方が女性より頻繁に肉を食べることや、男女平等が進んでいる国ほど男女の消費量の差が大きい傾向があることがわかりました。

Paradoxical gender effects in meat consumption across cultures | Scientific Reports

https://www.nature.com/articles/s41598-024-62511-3

meat consumption | | UZH

https://www.news.uzh.ch/en/articles/media/2024/meat-consumption.html

チューリッヒ大学の心理学教授であるクリストファー・ホップウッド氏らの研究チームは、2024年6月13日付けの科学誌「Nature」に掲載された今回の研究で、23カ国に住む2万802人の食肉の消費と社会・経済の発展レベルの関係を調べました。

肉をどのくらい食べるかのデータは、オンライン調査プラットフォーム・Cintを通じたアンケートで収集され、各国から約1000人ずつ募集された参加者は質問に「1:肉をまったく食べない」から「11:1日に2回以上食べる」までの数字で回答しました。

また、社会経済の発展状況のデータは国連が発表した2021年の「人間開発指数(HDI)」と、世界経済フォーラムが2021年に発表した「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数(GGGI)」を使用しました。



まず、アンケート結果を集計したところ、ほぼすべての国で男性が女性より頻繁に肉を食べていることがわかりました。23カ国のうち、男女で肉の消費量がほとんど変わらなかったのは中国、インド、インドネシアの3カ国だけでした。

また、肉の消費量の男女差が最も大きかったのはドイツ、アルゼンチン、ポーランド、イギリスで、男女平等と社会経済の発展レベルが高い国ほど差が大きくなる傾向がありました。

以下は、全体的な肉の消費量で色分けした地図で、赤いほど消費量が多いことを意味しています。男女を合わせた肉の消費量が最も多いのはタイで、中国とアメリカがそれに続きました。日本は23カ国中7位でした。



そして、以下は肉の消費量の男女差の地図で、赤いほど男性の方が肉を食べていることを意味しています。前述の通り、最も男女差が大きかったのはドイツで、逆に最も少なかったのは中国でした。日本は19位でした。



研究チームによると、文化や国を問わず、基本的に男性の方が女性より肉を好みやすいという仮説があるとのこと。例えば、ある研究者は「女性は月経中や妊娠中のホルモンの変化を介して免疫が抑制されるため、病原菌がいる確率が高い肉を避けようとするのではないか」と主張しました。また別の研究者は、「男性たちは優秀なハンターであることが求められる社会の中で、狩りの成果である肉の味を重視するようになった可能性がある」と指摘しています。

こうした仮説や今回の研究結果から、ホップウッド氏は「男女平等が進んだり、社会が発展したりすることで、女性は肉を避けるという選択が自由にできるようになり、逆に男性は肉を買って食べる頻度を増やすことができるようになるのではないでしょうか」と結論づけました。

また、肉の消費の傾向について明らかにした今回の研究は、肉の消費量を減らして気候変動を食い止める今後の取り組みに役立つ可能性もあります。具体的には、社会や経済が発展している国では、元から何を食べるのかの選択肢が豊富なので、植物ベースの代替肉や培養肉の消費を奨励することが有効だと考えられます。

逆に、発展のレベルが低い国は畜産業や経済システムが非効率的で環境意識も低い傾向があるため、植物ベースの代替肉や培養肉をより多く生産するよう奨励する方が効果的な可能性があると、研究チームは論文に記しています。