Googleに買収されたAIスタートアップ・DeepMindの共同創設者であり、記事作成時点ではMicrosoftのAI開発部門であるMicrosoft AIのムスタファ・スレイマンCEOが、オープンウェブ上にコンテンツを公開した瞬間、誰でも自由にコピーして使用できる「フリーウェア」になるという考えを自身が持っていることを打ち明けました。テクノロジーメディアのThe Vergeは、「誤った考えを持っている」と批判しています。

Microsoft’s AI boss thinks it’s perfectly OK to steal content if it’s on the open web - The Verge

https://www.theverge.com/2024/6/28/24188391/microsoft-ai-suleyman-social-contract-freeware



2024年6月23日から開催されているAspen Ideas Festivalの中で、ジャーナリストのアンドリュー・ロス・ソーキン氏とスレイマンCEOがAIの将来について語り合うトークイベントが行われました。

このトークイベントの中で、ソーキン氏が「AI企業が事実上、世界の知的財産を盗んでいる」と指摘したところ、スレイマンCEOは「すでにオープンウェブ上にあるコンテンツに関して、1990年代以来、そのコンテンツの社会契約はフェアユースであるということだったと思います。誰でもそれをコピーしたり、それを使って再作成したり、複製したりすることができます。つまり、『フリーウェア』であると理解されてきたわけです」と、オープンウェブ上のコンテンツに対する自身の考えを打ち明けました。





Microsoftは、長期的なパートナーシップを締結しているOpenAIと共に「著作権で保護されているオンライン上のコンテンツを盗んでAIモデルをトレーニングしている」として、新聞社や作家などから訴えられています。

OpenAIとMicrosoftがAIをめぐる著作権侵害で作家から訴えられる - GIGAZINE



MicrosoftとOpenAIが著作権侵害で新聞社8社から訴えられる - GIGAZINE



そのため、「MicrosoftのAI責任者がこのような発言をすることは驚きではないかもしれません。しかし、これほど公然と間違った考えを示すとは思いませんでした」とThe Vergeは指摘。さらに、「アメリカでは作品を作成した瞬間に自動的に著作権で保護されるため、著作権を得るためにどこかに申請する必要はなく、ウェブ上で公開したからといって権利が無効になるようなことはありません。また、著作権を放棄することは非常に難しいため、弁護士が特別なウェブライセンスを考案しなければいけなかったほどです」と言及しました。



加えて、「フェアユースは社会契約によって認められるものではなく、裁判所によって認められるものであり、『コピーする内容、理由、量、著作権者に損害を与えるかどうか』を判断したうえで、著作権で保護された素材の一部の使用を許可するという法的防御です」と述べ、スレイマンCEOのフェアユースについての考え方が間違っていると指摘しています。

「多くのAI企業は、著作権で保護されたコンテンツをトレーニングに使用する際、『これはフェアユースの範疇である』と主張しています。しかし、スレイマンCEOほど厚かましい主張をしている企業は他にありません」とThe Vergeは指摘しました。

なお、ソーキン氏とスレイマンCEOのインタビュー全編は、以下の動画でチェックできます。

CEO of Microsoft AI speaks about the future of artificial intelligence at Aspen Ideas Festival - YouTube