【密着ルポ】6畳に「数トン相当のゴミ」を溜めて放置…清掃業者の作業に潜入して発覚した部屋主の特徴

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とんでもない量のごみとすさまじい臭いが充満するゴミ屋敷。隣人とトラブルになったというニュースを見たことがある人も多いのではないだろうか。そんなゴミ屋敷問題だが、最近ではアパートやマンションの一室でごみを大量にためてしまった「汚部屋」が問題になっている。

YouTubeで、ゴミ屋敷汚部屋の清掃の様子を配信し、人気を博しているチャンネルのひとつである『パートナーズの社長室【ゴミ屋敷専門パートナーズ】』の動画では、玄関から入れないような汚部屋の清掃動画が多数あがっており、年間3000件以上のゴミ屋敷汚部屋を清掃しているのだという。

本当にこんなゴミ屋敷汚部屋が世の中にあふれているのだろうか。パートナーズの社長室【ゴミ屋敷専門パートナーズ】を運営する「ゴミ屋敷専門パートナーズ」の現場についていき、現場の特徴や汚部屋の持ち主の事情について話を聞いた。

今回の依頼は都内のアパートの1室。風呂トイレが一緒でロフト付きの6畳の部屋とのこと。現場につくとスタッフが7人と4トントラックが待っていて、そんなに人数がいるのだろうかなどと思いながら、依頼主の部屋のドアを開けると、繁華街の路地裏の下水のような臭いが漂ってきた。

臭いのキツさに驚きながら部屋の中を見てみると、腰の高さまでゴミが積まれており、床が見えないほどになっていた。清掃スタッフの石田毅さんは慣れた様子でゴミの上を歩きながら汚部屋の中を確認し、

「この臭いだとコンビニ弁当が多めですかね。この部屋のごみの量や臭いのキツさは、10段階の3くらいです。5時間くらいで作業が終わると思います」

と言うと、ほかのスタッフに業務用のごみ袋や分別用の段ボールを作成するよう指示を出し、清掃作業を始めた。

部屋を清掃している様子を見ていると、部屋の電気が止まっており、害虫のフンが大量に壁にこびりついていた。作業が少し進んだ段階で、エアコンやテレビのリモコンが大量に出てきたため、不思議に思い石田さんに話を聞くと、

ゴミ屋敷になると、リモコンがゴミの下に行ってしまうと見つけられなくなるんです。そうなってしまうと探すよりも買ったほうが早いので、同じ型のリモコンを買ってきて代用するみたいです」

という答えが返ってきた。

ゴミを運び出す作業のほとんどは手作業で行われ、業務用の大きなゴミ袋がいっぱいになると外に止めてあるトラックに運び出される。その最中に、貴重品や高価なお酒などが出てくると、分別され依頼主に確認する用の段ボールへ仕分けされるという流れになっていた。

作業開始から4時間ほどで清掃が終了。今回溜められていたゴミは4トントラックの半分ほどになった。

作業が終了し、次の現場に向かう前の休憩をとっていた石田さんに、依頼主の特徴を聞くと返ってきたのは意外な答えだった。

「依頼主は30代から40代の人が多いですね。男女比は4対6くらいで少し女性のほうが多くなっています。教師や看護師のような仕事が忙しい人が多い印象です。

依頼主はまじめな性格の人が多くて、連絡や依頼文がすごく丁寧です。仕事が忙しすぎてゴミが少しずつ溜まってしまってどうしようもなくなって弊社に依頼するという流れがほとんどなんだと思います」

仕事や私生活のストレスが原因で片付けの優先順位が低くなり、汚部屋を作ってしまうのだという。

今回の依頼主に電話で話を聞くことができ、日時を約束すると、時間ぴったりに電話がかかってきた。電話先の依頼主は飲食業界で働いているという男性。汚部屋になってしまった経緯やなぜ片付けを依頼することになったのかを聞いた。

汚部屋になってしまったときに働いていたのは長時間労働でパワハラがひどい職場でした。そこで働いているときに、当時付き合っていた彼女に振られたことがきっかけで病んでしまって、片付けられなくなったんです。そういう生活が10年続いた結果汚部屋になってしまいました。

今回、片付けをゴミ屋敷専門パートナーズさんに依頼することになったきっかけは、そのときとは別の女性と結婚することになったからです。これからはこんなことにならないよう気を付けていきたいと思っています」

今回の清掃では、近くの汚部屋掃除と日程を調整したことで料金が少し安くなったがそれでも数十万円かかったそうだ。

1人暮らしを経験したことのある人であれば、ゴミを溜めてしまって次の回収日にまとめて捨てるという経験をしたことがある人は多いだろう。心が疲れてしまうと、掃除やゴミ捨てができなくなってしまう。

もちろん個人の問題ではあるが、過剰なストレスを生む現代社会の構造が、ゴミ屋敷汚部屋増加の原因なのかもしれない

取材・文:上野裕和