AppleがEUのデジタル市場法違反で初の訴訟を提起され違反が認められれば最大6兆円の制裁金を課される可能性
Appleがアプリ開発者から過剰に手数料を取り、アプリ開発者が代替チャネルで自由にコンテンツを提供することを妨げているとして、欧州委員会がAppleに対してデジタル市場法(DMA)に違反しているとの予備的見解を通知しました。同法に基づく提訴は今回が初めてとなります。
Digital Markets Act
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_24_3433
https://www.theverge.com/2024/6/24/24184629/apple-dma-steering-infringement-ruling
DMAの下では、App Storeを通じてアプリを配布する開発者は顧客に対してもっと安価な購入手段を通知でき、それらの手段に誘導して購入させることができるとされています。
ところが、欧州委員会の見解では、Appleの規則は開発者が自由に顧客を誘導することを認めていないとしています。例えば、開発者がアプリ内で価格情報を表示したり、他のチャネル(開発者独自のストアなど)でアプリを購入するための手段を宣伝したりすることは許可されていません。
また、Appleは開発者に対して手数料を請求していますが、欧州委員会は「厳密に必要な額を超えている」と判断しています。
今回、欧州委員会が予備的見解を通知したため、Appleには抗弁の機会が与えられます。Appleの反論が認められず予備的見解に誤認がないことが確認された場合、Appleは「アプリストア以外への顧客誘導を許可しなければならない」と定めたDMA第5条4項に適合しないことになり、欧州委員会は新たな措置を講じることが可能になります。
DMAが施行されて以来、AppleはApp Store以外からのアプリダウンロードを許可するなど法律に準拠しようとする動きを見せてきましたが、外部のアプリストアを利用するアプリ開発者に「コアテクノロジー料(CTF)」と呼ばれる高額な手数料を科したり、外部のアプリストアを利用するユーザーに対して複数のステップを踏ませたりするなどの制限を設けています。
欧州委員会は上記の制限にも問題がある可能性があるとして、CTFや、ユーザーに複数のステップを踏ませる措置などがDMAへ適切に準拠しているのかを新たに調査することを明らかにしました。
DMAでは、条項への違反があった場合、欧州委員会は違反企業に世界総売上高の10%までの制裁金を科すことができると定めています。違反が繰り返された場合、制裁金は最高20%まで引き上げられ、さらに組織的な違反が行われた場合、欧州委員会は企業に事業またはその一部を売却することを義務付けたり、組織的な違反に関連するサービスの追加取得を禁止したりするなどの措置を採ることもできます。
テクノロジー系メディアのThe Vergeによると、Appleは2023年の数字に基づくと380億ドル(約6兆円)の制裁金を科される可能性があるとのことです。