生成AIが急速に発達すると共に、「人間の仕事がAIに奪われてしまうのではないか」という懸念も増加しており、イラストレーターやライター、ミュージシャンなどのクリエイターも悪影響を被る可能性が指摘されています。そんな中、OpenAIのミラ・ムラティCTOがアメリカのダートマス大学で行われた対談で、AIがクリエイティブな仕事を奪う可能性があると認めつつ、「そのような仕事は最初からない方がよかったかもしれない」と発言しました。

OpenAI CTO Mira Murati Th'12 Shares Optimism… | Dartmouth Engineering

https://engineering.dartmouth.edu/news/openai-cto-mira-murati-th12-shares-optimism-for-ais-future



OpenAI CTO: AI Could Kill Some Creative Jobs That Maybe Shouldn't Exist Anyway | PCMag

https://www.pcmag.com/news/openai-cto-mira-murati-ai-could-take-some-creative-jobs

近年は、OpenAIがリリースした文章生成AIのChatGPTや高精度な画像を生成するStable Diffusionなど、クオリティの高いアウトプットが可能なAIが相次いで登場しています。これらのAIはライティングやイラストなど、クリエイティブな分野で優れた性能を発揮するため、人間のクリエイターが仕事を失う可能性があると懸念されています。

クリエイターの権利団体であるSociety of Authors (SoA)が2024年1月に行った調査では、イラストレーターの26%と翻訳家の36%以上が、生成AIによって仕事を失っていると回答しています。また、ビリー・アイリッシュ氏やスティーヴィー・ワンダー氏などのアーティストも、人間のアーティストの価値を下げる「略奪的AI」を非難する書簡に署名しており、音楽業界もAIを脅威であると認識しています。

音声を盗んだりアーティストを置き換えたりする「略奪的AI」を非難する書簡にビリー・アイリッシュやスティーヴィー・ワンダーなど200人以上の著名人が署名 - GIGAZINE



2024年6月、OpenAIのムラティ氏はダートマス大学で、複数のメディアやテクノロジースタートアップの取締役を務めるジェフリー・ブラックバーン氏との対談を行いました。その中でムラティ氏が、AIによって奪われるようなクリエイティブな仕事は、最初からなくてもよかったという主張を展開しました。

ムラティ氏が当該の発言をしている様子は、以下の対談動画の29分30秒頃から確認できます。

AI Everywhere: Transforming Our World, Empowering Humanity - YouTube

ムラティ氏(画面右)は、ブラックバーン氏(画面左)の「一部のクリエイターは仕事を奪われると恐れている」という言葉に答える形で、「クリエイティブな仕事のいくつかはなくなるかもしれませんが、質の低いコンテンツを生成するような仕事は、最初からあるべきではなかったのかもしれません」と発言。



AIを教育やクリエイティビティのツールとして使うことで、人間の知性が拡大するだろうという主張を展開しました。



なお、ハーバード・ビジネス・スクールなどの研究チームが2024年6月に発表した調査結果では、フリーランスの求人プラットフォームにおいて、生成AIが得意とするライティングやコーディングといった仕事が、ChatGPTの登場後8カ月で21%も減少したことが示されています。また、イラストに関連する仕事も、画像生成AIの登場によって約17%も減少したとのことです。

Who Is AI Replacing? The Impact of Generative AI on Online Freelancing Platforms by Ozge Demirci, Jonas Hannane, Xinrong Zhu :: SSRN

https://papers.ssrn.com/sol3/papers.cfm?abstract_id=4602944

AI Doesn’t Kill Jobs? Tell That to Freelancers - WSJ

https://www.wsj.com/tech/ai/ai-replace-freelance-jobs-51807bc7