500万回の睡眠データから眠りには5つの種類があることが判明
睡眠の種類というと、眠りの深さに関連するレム睡眠やノンレム睡眠が思い浮かびます。これとは別に、睡眠には長さや中断のタイミングなどによって分類される5つのタイプがあることが、3万3000人から集めた睡眠500万回分のデータの分析から判明しました。
Five million nights: temporal dynamics in human sleep phenotypes | npj Digital Medicine
How Your Sleep Patterns Change Can Tell You About Your Health
https://today.ucsd.edu/story/how-your-sleep-patterns-change-can-tell-you-about-your-health
今回の研究の基礎となったのは、東京大学大学院情報理工学系研究科の香取真知子氏らが2022年に発表した大規模な睡眠解析の研究です。この先行研究で香取氏らは、腕時計型のウェアラブルデバイスから収集されたデータを16種類に分類し、それらを「睡眠表現型」と名付けました。
しかし、睡眠表現型に関するこれまでの研究では、ある時点の被験者から収集された横断的データが用いられており、生活習慣や体調の変化といった時間的な経過に基づく縦断的な分析は行われてきませんでした。
睡眠と健康の結びつきをより詳細に調べるべく、カリフォルニア大学サンディエゴ校のベンジャミン・スマール氏らは、睡眠データを追跡するスマートリング「Oura Ring」を使用し、平均年齢44歳の男女約3万3000人から収集された約500万泊の睡眠データを収集して分析しました。
by David Baillot/University of California San Diego
分析の結果、睡眠は大きく分けて次の5つの表現型に分類できることがわかりました。
◆表現型1
これは多くの人が「普通の睡眠」と考える眠りで、少なくとも6日間連続して約8時間の睡眠をとるというもの。これは公衆衛生当局が推奨する理想的な睡眠であると同時に、研究の中で特定された最も典型的な睡眠でもありました。
◆表現型2
この表現型の人は、夜の半分は連続的に眠っていましたが、残りの半分は3時間未満の短時間の睡眠しかとっていませんでした。
◆表現型3
このタイプでは、ほとんどの夜で連続して眠っていましたが、週に1晩ほどの頻度で睡眠が中断されます。眠りが中断された夜には、約5時間の比較的長い睡眠時間と3時間未満の短い睡眠時間が1回ずつあるという特徴があります。
◆表現型4
このタイプの人もほぼ連続的に眠りますが、たまに長時間の睡眠の間に中途覚醒が起きることがあります。
◆表現型5
このタイプの人は非常に短時間しか眠らない最もまれな睡眠表現型で、極度に睡眠が不足しているグループの人です。
これらの睡眠表現型は不変ではなく、ある睡眠表現型から別の睡眠表現型へと移行するのがよくみられました。
by OURA
また、今回の研究では睡眠時無呼吸症候群や糖尿病といった慢性疾患などに関する記録も同時に分析されましたが、ある人がどの睡眠表現型なのかは健康状態とあまり関係がありませんでした。その代わりに、睡眠表現型がどのくらいの頻度で切り替わるかが、健康の予測に役立つことがわかりました。
論文の共著者であるエドワード・ワン氏は「私たちは、睡眠障害の起こり方のわずかな違いに多くの発見があることを突き止めました。つまり、よく眠れるかどうかだけでなく、長期にわたる睡眠の変化にこそ重要な情報が隠されていたのです」と述べました。
また、筆頭著者のヴァルン・ヴィシュワナス氏は「睡眠のタイプを地域に例えると、どの地域に住むかよりも地域を離れる頻度の方が重要だったということです」と話しました。