初夏から夏にかけて次第に夜の気温が高くなり、日本では夜間の最低気温がセ氏25度を超える熱帯夜も珍しくなくなります。15年間にわたる脳卒中の発生率と夜間の気温との関係を調べた研究で、「気温が高い夜は脳卒中のリスクが高くなる」ことが明らかになりました。

Nocturnal heat exposure and stroke risk | European Heart Journal | Oxford Academic

https://academic.oup.com/eurheartj/advance-article/doi/10.1093/eurheartj/ehae277/7676519



Night-time heat significantly increases the risk of stroke - Helmholtz Munich

https://www.helmholtz-munich.de/en/newsroom/news-all/artikel/night-time-heat-significantly-increases-the-risk-of-stroke

Night-time heat significantly increases the risk of stroke | ScienceDaily

https://www.sciencedaily.com/releases/2024/05/240521124617.htm

Hot Nights Linked With Increased Risk of Stroke, Scientists Warn : ScienceAlert

https://www.sciencealert.com/hot-nights-linked-with-increased-risk-of-stroke-scientists-warn

暑くて寝苦しい夜を経験する日は、気候変動によってますます増えていくとみられます。ドイツのヘルムホルツ・ミュンヘン研究センターのアレクサンドラ・シュナイダー博士が率いる研究チームは、夜間の暑さが脳卒中のリスクにもたらす影響について調査しました。

シュナイダー氏は、「私たちは夜間の高い気温がどれほどの健康リスクをもたらすのか理解したかったのです。気候変動により夜間の気温は日中の気温よりはるかに速く上昇しているため、これは重要です」と述べています。

研究チームは今回の研究で、ドイツ南西部に位置するアウクスブルクにあるアウクスブルク大学病院のデータを用いました。データには2006〜2020年にかけて収集された合計11万37例の脳卒中症例が含まれており、このデータと気象条件を照らし合わせて夜間の気温と脳卒中のリスクについて分析したとのこと。



研究チームは夜間の暑さと脳卒中のリスクを分析するために、期間全体を通じて最も夜間の気温が高かった5%の日を「暑い夜」として定義しています。今回のデータでは、夜間の気温がセ氏14.6度を超える日が「暑い夜」に分類されました。

分析の結果、脳卒中のリスクは暑い夜に分類された夜間に約7%増加することがわかりました。また、2006〜2012年にかけては暑い夜が年間2件の脳卒中症例の増加に関連していたのに対し、2013〜2020年には暑い夜が年間33件の症例増加に関連していたことも報告されています。これは、年を追うごとに夜間の気温が上昇したことを反映しているとのこと。

論文の筆頭著者であるチェン・フー氏は、暑い夜の影響を受けやすいのは高齢者と女性であり、主に症状が軽い脳卒中の発生リスクが高まると指摘。「私たちの研究結果は、夜間の気温上昇がもたらすリスクを軽減するためには、都市計画や医療制度の調整が極めて重要であることを明らかにしています」と述べました。



研究チームはこの研究結果を現実の状況に適用しようと考えており、都市のヒートアイランド現象を軽減することや、夜間の気温が高いと予測される日は医療スタッフを多めに配置することなど、脳卒中の予防と患者のケアのための推奨事項の作成に取り組んでいます。