6月14日(金)、ニュースキャスター長野智子がパーソナリティを務めるラジオ番組「長野智子アップデート」(文化放送・15時30分~17時)が放送。午後4時台「ニュースアップデート」のコーナーで、ジャーナリスト・青木理氏を招き、警察の内部告発潰し・情報隠蔽について話を伺った。

鈴木敏夫(文化放送解説委員)「鹿児島県警で3月まで生活安全部長を務めていた男性が、国家公務員法違反の疑いで逮捕されました。警察情報を第三者に漏洩させたということなんですけれども、それはなぜかというと、これは(前生活安全部長が)家庭裁判所で話していたんですが『本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽しようとしていたことが許せなかった』と主張していたんですね。今回はこの事件に絡んで、青木さんに警察の内部告発潰し・情報隠蔽国家なんていうテーマでお話を聞いていこうと思います」

長野智子「この(事件の)ポイントは県警が犯罪捜査の手法を使ってメディアにガサ入れをしているんですよ。で、取材源を突き止めているっていう。この経緯がわからなくて」

青木理「いくつも論点はあるんですけども、一つは皆さんもお気づきの通り、前生活安全部長っていうのがたしかに公務員法で禁じられてる情報漏洩・守秘義務違反をしたんだったらそれは犯罪行為だけれども、彼が言っているように『本部長が不祥事とか犯罪行為を隠蔽しようとしてるのが許せなかった』とすれば、これ自体、国家公務員法が禁ずる守秘義務批判じゃなくて、むしろ公益通報者だっていうことになるんですね。で、実は意外と知られてないんですけど、刑事訴訟法に定めがあって、人は何人たりとも犯罪があるとわかったときは告発ができるって書いてあって、特に公務員については犯罪行為があったら告発しなくちゃいけないって書いてあるんですよ。そう考えたら、この前生活安全部長が言っていることが事実だったら、これは明らかな公益通報者なので、それを口封じするような逮捕なんていうのはそもそも不当だっていうことなんですけれど」

長野「はい」

青木「じゃあなんでこの前生活安全部長が公益通報をしていたことがわかったのかっていうと、福岡に本拠がある『HUNTER(ハンター)』っていうネットメディアがあって、そこが鹿児島県警の不祥事をすごい追求していたんですよ。実は鹿児島県警って去年から今年にかけて現職警官が4人か5人捕まっているんですよ。ほとんど猥褻事犯なんですけども、その中の1件が『HUNTER』っていうメディアに県警内部の情報を提供している人がいるっていう、これは地方公務員法の守秘義務違反で捕まってたんですよ。それを鹿児島県警は捕まえたときに『HUNTER』っていうメディアにも家宅捜索してるんですよ。で、その家宅捜索をしたら、どうやら前生活安全部長も『HUNTER』に原稿を書いているライターに情報提供していることがわかったようで、前生活安全部長を捕まえているんです」

鈴木「つまり前生活安全部長が訴えたものとは別件の取材を『HUNTER』がしていて」

長野「いや……ちょっと待って。でもなんでメディアを家宅捜索するのかがわからない」

青木「おっしゃる通り。『HUNTER』っていうメディアがたしかに小さいし、あまり一般には知られてないし、ネットメディアだからたぶん鹿児島県警はナメてガサ入れしたと思うんだけど、同じことをこの文化放送もそうだし、長野さんがいらっしゃったフジテレビもそうだし、あるいは僕がいた共同通信だったり朝日新聞だったりNHKに対して強制捜査して、情報源を特定して、その情報源を捕まえるなんてことをしたら、とんでもない話になるじゃないですか」

長野「もうありえないですよ。こんなことあっちゃいけないってビックリしたんですよ」

青木「小さなネットメディアだからなんとなく見逃されてて、中央の新聞とかテレビでもあんまり騒がれてないんだけど、構図を見ると、警察が家宅捜索っていう強制権力を使ってメディアに家宅捜索に入ってネタ元を見つけて、そのネタ元を捕まえた。しかもそれがどういうネタ元かといえば、県警の不正を告発したネタ元を割り出して、そのネタ元が前生活安全部長だったのにビックリして捕まえちゃったっていうことでしょ?これほんとに深刻な問題だから、こんなことを許したらメディアの取材の自由とか報道の自由とか情報源の秘匿なんてものはまったく守れなくなっちゃうので、本来であれば新聞とかテレビとか文化放送もそうですけど、もっときちんと抗議の声をあげて批判をしなくちゃいけないし、真相を追求しなくちゃいけないだろうなと思いますけどね」