幹細胞を培養して作られた脳組織(ヒト脳オルガノイド)をCPUとして使うシステム「ニューロプラットフォーム」が、スイスのバイオコンピューティング企業であるFinalSparkによって構築されました。ニューロプラットフォームは各地の研究者が遠隔でアクセスでき、「学習」と「情報処理」を行わせることが可能です。

Neuroplatform - FinalSpark

https://finalspark.com/neuroplatform/



Frontiers | Open and remotely accessible Neuroplatform for research in wetware computing

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/frai.2024.1376042/full

World's first bioprocessor uses 16 human brain organoids for ‘a million times less power’ consumption than a digital chip | Tom's Hardware

https://www.tomshardware.com/pc-components/cpus/worlds-first-bioprocessor-uses-16-human-brain-organoids-for-a-million-times-less-power-consumption-than-a-digital-chip

FinalSparkのニューロプラットフォームは、実験室で培養された16個のヒト脳オルガノイドからなるシステムです。ヒト脳オルガノイドとは人工多能性幹細胞(iPS細胞)や胚性幹細胞(ES細胞)から分化誘導された組織のことで、ニューロプラットフォームではiPS細胞由来の神経幹細胞が使われています。接続された電極によりヒト脳オルガノイドはプロセッサーとして動作し、研究者は「脳」を使って計算することができます。

分化されているヒト脳オルガノイドはこんな感じ。



ニューロプラットフォームのヒト脳オルガノイドは4つのマルチ電極アレイ(MEA)に収容されていて、それぞれのMEAは刺激と記録の両方に使用できる8つの電極が接続されています。データはサンプリング周波数30kHz、分解能16ビットのデジタル・アナログ・コンバーターを介して行き来し、これらはMEA用のマイクロ流体生命維持システムと監視カメラによってサポートされています。

ニューロプラットフォームは過去4年間にわたり年中無休で稼働し続けており、今回は新たに9つの機関にアクセスが提供されました。ニューロプラットフォームの利用には、月額500ドル(約7万8000円)が必要とされています。

なお、ヒト脳オルガノイドの寿命は短く、当初は数時間しか機能しなかったとのことですが、改良により、今後は1ユニットあたり約100日は持続するようになるものとみられています。



FinalSparkは「GPT-3のような大規模言語モデル1つをトレーニングするのにはおよそ10GWhが必要で、これはヨーロッパ市民が1年間に使用するエネルギーの約6000倍に相当しますが、ニューロプラットフォームの消費電力は従来のデジタル・プロセッサーの100万分の1です」と述べ、ヒト脳オルガノイドの消費電力の低さをアピールしましたが、その具体的な性能については明かされていません。

すでに約30の大学がニューロプラットフォームの使用に興味を示しているとのことです。

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