「日中の強い眠気」は病気が原因かも!? 睡眠障害「ナルコレプシー」について医師に聞く
「日中、強い眠気に襲われて勉強や仕事が手につかない」という経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。実は日中の強い眠気は病気の可能性があるとのことです。今回は、眠りと咳のクリニック虎ノ門の胗原先生に原因として考えられる病気「ナルコレプシー」について取材しました。
※この記事はMedical DOCにて【日中に強い眠気「ナルコレプシー」を医師が解説 セルフチェック・セルフケア方法などを知りたい!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
胗原 万里子(眠りと咳のクリニック虎ノ門)
大分医科大学医学部(現・大分大学医学部)医学科・東京医科大学医学研究科博士課程・社会人大学院臨床研究専攻卒業。筑波大学附属病院 睡眠呼吸障害診療グループ病院講師、睡眠総合ケアクリニック代々木勤務を経て、2022年11月眠りと咳のクリニック虎ノ門を開院。多種にわたる睡眠障害について診療と臨床研究、啓蒙活動を行っている。医学博士。日本睡眠学会認定睡眠専門医、日本呼吸器学会認定呼吸器専門医/指導医。東京医科大学睡眠学講座客員講師。公益財団法人神経研究所睡眠研究室客員研究員・睡眠健康推進機構 学校訪問型睡眠講座/出張睡眠市民講座事業登録講師。
編集部
ナルコレプシーとはなんですか?
胗原先生
十分な睡眠時間をとっているのに、「突発的に生じる耐え難い強い眠気」に襲われ居眠りをしてしまう睡眠障害です。中高生頃から発症するケースが典型的ですが、成人後に発症するケースもあります。高齢になるにつれて、強い眠気や眠気以外の随伴症状は自然経過で徐々に軽減すると考えられています。
編集部
具体的に、どんな症状が見られるのですか?
胗原先生
抗いがたい強い眠気(過眠)が時間帯を問わずに生じます。たとえば、仕事で重要な商談をしているときや大事な試験中などの緊張しているときなど、居眠りをすると不利になるシチュエーションであっても、自分では制御できない強烈な眠気に襲われて意に反して眠り込んでしまうといった症状が見られます。
編集部
眠気はどれくらいの時間続くのですか?
胗原先生
ナルコレプシーの眠気は、1日に何回も襲ってきます。この強い眠気は15~30分程度の仮眠で解消され、その後一時的にすっきりと覚醒することができます。そのためナルコレプシーの患者さんは、1日中ずっと居眠りしているということではありません。
編集部
強い眠気以外にも症状はありますか?
胗原先生
強い眠気以外の症状として、居眠り中に夢を見やすかったり、金縛りにあったり、寝入りばなに幻覚や幻聴を体験したりすることもあります。患者さんの一部では、「情動脱力発作(カタプレキシー)」と呼ばれる、喜怒哀楽などの感情の高ぶりに合わせて身体の力が抜けて倒れ込んでしまう発作がみられることもあります。カタプレキシーを伴う場合はナルコレプシー1型、伴わない場合はナルコレプシー2型と分類されます。
編集部
そのほかにも症状はありますか?
胗原先生
時間帯を問わず強い眠気(過眠)に襲われるにもかかわらず、夜の睡眠については入眠困難や中途覚醒がみられることもあります。
編集部
ナルコレプシーの原因はなんですか?
胗原先生
ナルコレプシーは長く原因が不明とされてきましたが、近年研究が進み、視床下部でのオレキシンA(脳内の神経伝達物質)の産生量が少ないことと、遺伝的要因が関係していることがわかりました。しかしながら、現在でもナルコレプシーの原因のすべてが解明されているわけではありません。