arrows Weの後継機種にあたるarrows We2

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 FCNT合同会社は5月16日、スマートフォンブランド「arrows We」の後継モデルとなる「arrows We2 Plus F-51E(以下、We2 Plus)」と「arrows We2 F-52E(以下、We2)」の2機種を発表した。We2 Plus はNTTドコモ、We2はNTTドコモ・au・UQ mobileで8月中旬に発売する。同日に開催された事業戦略および新商品発表会では、FCNT合同会社によるスマホ事業再建の展望も語られた。

●新生FCNTとして初となる新製品



 携帯電話の時代から30年以上に渡って、富士通グループのモバイルデバイス開発を担ってきたFCNTだが、資金繰りの悪化などにより2023年5月に民事再生申請を余儀なくされた。ブランド継続も危ぶまれたが、同年9月にLenovoグループ傘下になることが決まり、10月からFCNT合同会社としてリスタートしている。

 田中典尚代表取締役社長は発表会冒頭で、一連の会社再編に伴う混乱に対してのお詫びと事業を継承するレノボグループへの感謝を述べ、「新会社として初めて投入する新製品を世に出し、皆様に使っていただき、その価値をご理解いただく。そういったことを通して事業をしっかりと再建していきたい」とコメントした。

●全方位でワンランク上のエントリーモデルを目指した「arrows We2」



 arrows We2は人気の高かったarrows Weの後継機種にあたるモデル。ディスプレイサイズは約6.1インチ、RAMは4GB、ROMは64GBといったスペックは一般的なエントリークラスの水準だが、arrowsならではの魅力といえる使いやすさにこだわり、競合他社との差別化を図っている。

 例えば、耐久性についてはarrowsの独自品質としている「1.5mの高さから26方向でコンクリートに落下させる試験」をクリアすることを基準としている。防水・防塵は丸洗いやアルコール除菌に対応し、清潔さを重視する国内ユーザーのニーズに応えた。

 arrowsファンにとっては、電源キーで指紋と指の動きを読み取る「Exlider」機能が復活(arrows NX以来)したことも見逃せないポイントだ。Exliderは画面に触れることなくズームやスクロールできる機能で、拡大操作ができないアプリやポップアップ広告をクリックしたくないときなどに便利だ。

 Arrowsらしくシニア層を意識した機能も充実している。画面レイアウトをシンプル/ノーマル/ジュニアから選択できるほか、通話中のキーワードを検出して注意喚起を促す還付金詐欺対策機能や、見知らぬ番号からの着信に対して通話を録音/通話後に注意喚起する迷惑電話対策機能などを備えている。

 アウトカメラは広角レンズ(5010万画素/F1.8)と超広角レンズ(190万画素/F2.4)のデュアルレンズ構成、インカメラは800万画素/F2.0、OSはAndroid 14、CPUはMediaTek Dimensity 7025、防水性能はIPX5/IPX8、防塵性能はIP6X、バッテリ容量は4500mAh、カラーはライトブルー、ネイビーグリーン、ライトオレンジの3色。

●世界初の「自律神経活性度計測」機能を搭載した「arrows We2 Plus」



 上位機種のarrows We2 Plusは、We2より大きい約6.6インチのディスプレイを搭載。CPUはQualcomm Snapdragon 7s gen 2、メモリは8GB、ROMは256GBで、いずれもWe2より上のスペックを積んでいる。RAMは仮想メモリで最大8GBを増量して、よりストレスフリーに利用することも可能だ。

 エンタメ性能もハイエンドクラスに仕上げており、リフレッシュレートは144Hz、ピーク輝度は1200nit、サウンドはDolby ATMOS対応でステレオスピーカーにするなど、臨場感のある映像や音を楽しめるように仕上げている。バッテリ容量はarrows史上最大の5000mAhで、電池切れを気にすることなく安心して使える。

 機能面で特筆すべきなのが、世界初となる「自律神経活性度計測」機能だ。背面カメラ下の脈波センサから読み取ったバイタルデータをもとに独自のアルゴリズムで自律神経の活性度を測定できる。競合他社にはないユニークな要素として、健康を意識するシニア層に刺さりそうだ。

 アウトカメラは広角レンズ(5010万画素/F1.8)と超広角レンズ(800万画素/F2.2)のデュアルレンズ構成、インカメラは1610万画素/F2.45。アウトカメラはWe2 Plus限定で光学式手振れ補正を搭載している。

 OSはAndroid 14、防水性能はIPX5/IPX8、防塵性能はIP6X、カラーはスレートグレイ、シャンパンシルバーの2色。

●スマホ事業再建のカギとなる3本の柱



 新生FCNTは事業再建のため、経営陣にレノボ出身者が加わっている。執行役員副社長を務める桑山泰明氏もその一人だ。同氏は発表会で「arrowsとらくらくスマートフォンのブランドは継続し、今後もお客様に寄り添った独自の価値を提供し続ける」とした一方で、「すべてのレイヤーで投資対効果をチェックしていき、利益体質の会社に変えていく」と数字にもこだわっていく方針も示した。

 事業再建のカギとなる3本の柱として提示したのが、「シニア・サステナビリティ・ヘルスケア」だ。

 シニアは従来からやらくらくスマートフォンやarrowsで培ってきたテクノロジーを発展させ、独自の強みとして打ち出していく。新製品にもみられるような操作性や堅牢性へのこだわりによって、年配層の支持をより強固なものにしていく。

 サステナビリティは23年に発売したarrows Nから注力しはじめた要素だが、さらに本腰を入れて取り組む。新製品ではWe2は約65%、We2 Plusは約60%でプラスチックやアルミニウム部品に再生材を使用し、外部だけでなく内部のパーツも含めてこだわり抜いている。

 ヘルスケアはシニアとの親和性が高いもこともあり、FCNTにはすでにテクノロジーの土台がある。実際、これまでも血管年齢や心拍数測定機能を実装してきたが、We2 Plusに搭載した自律神経活性度計測機能のように、さらに技術をブラッシュアップして、新しい価値の創出を目指していく。

 レノボグループのシナジーとしては、グローバルスケールのサプライチェーンの活用、海外の販売チャネル、テクノロジーへの投資で事業再生をバックアップしていく。将来的には海外市場も視野に入れているという。桑山副社長は「FCNTの独自の価値をより広くのお客様に提供していきたい」と語った。(フリーライター・小倉笑助)

小倉笑助

家電・IT専門メディアで10年以上の編集・記者経験を経て、現在はフリーライターとして家電レビューや経営者へのインタビューなどをメインに活動している。最近は金融やサブカルにも執筆領域を拡大中