KOBE SONO SONO

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『KOBE SONO SONO’24』2024.4.6(SAT)兵庫・道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢

4月6日(土)、道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢にて『KOBE SONO SONO ’24』が行われた。「おいしい・楽しいがあふれた空間で、心地よい音楽とともに」をテーマに、昨年新たにスタートした神戸の春フェス『KOBE SONO SONO』。花と自然に囲まれて音楽やカルチャーが楽しめるとあって、早くもファンが続出しているイベントである。今年も会場にはFLOWER STAGE、FRUITS STAGE、MONKEY STAGEの3ステージが設置され、全16組のアーティストが素晴らしいライブを繰り広げた。さらに飲食やカルチャー雑貨など、地元神戸のお店が多数出店。今年もSPICEではその模様をレポートする。なおSpotifyでは、当日のセットリストがプレイリストとして公開されているので、そちらもチェックしてみてほしい。

道の駅 フルーツ・フラワーパーク大沢は、北神戸の自然豊かな山々に囲まれている。敷地内には遊園地やファームマーケット、ホテルなどがあり、ガーデンリゾートとして1日中楽しむことができる場所。

KOBE SONO SONO

ぽかぽか春の陽気で晴天に恵まれたこの日、開場と同時に入園した人々は、のんびりと景色を楽しみながら、ピクニックシートを広げて開演までの時間を思い思いに過ごしていた。

KOBE SONO SONO

『KOBE SONO SONO』は出店ブースもお楽しみのひとつ。地元神戸や兵庫県内で人気の店舗を中心に、35もの飲食店とショップが出店、さらに似顔絵屋さんやクラフト体験、シルクスクリーンのワークショップも実施された。アーティスト物販テント横のBshopのブースでは、『KOBE SONO SONO』とのコラボTシャツやトートバッグ、タオルが販売されていた。さらに今年はFLOWER STAGEとFRUITS STAGEの間の広場に「うしさん」の形のボルダリングスペースも出現。子どもたちは大喜びでよじ登っていた。

KOBE SONO SONO

会場内では、bird(irish session)による軽快なアイリッシュ音楽が3ステージにわたり神出鬼没で行われ、日本伝統芸能猿まわし 二助企画による「猿まわし」も人々を賑わせていた。

ステージ装飾は、今年もFLOWER STAGEを「建築集団・々(ノマ)」が、FRUITS STAGEを「電子工作グループ・ヅカデン(宝塚電子倶楽部)」が手がけた。FLOWER STAGEに敷き詰められたひし形のタイルは約500枚。落ち着いた色味で、あたたかみのある舞台が出来上がっていた。FRUITS STAGEは植物とミラーボールで囲まれたオーガニックな雰囲気で、アーティストのライブを彩っていた。

ここからは各ライブステージの模様をレポートしよう。

グソクムズ 撮影=オイケカオリ

『KOBE SONO SONO ’24』のトップバッターを飾ったのは、FRUITS STAGEに登場したグソクムズ。たなかえいぞを(Vo.Gt)、加藤祐樹(Gt)、堀部祐介(Ba)、中島雄士(Dr)からなる、東京・吉祥寺を中心に活動する4人組バンドだ。「街に溶けて」からゆったりとスタートしたライブは、あまりの気持ち良さに心がふるえるような素晴らしさがあり、野外ステージの醍醐味を存分に味わえるものだった。たなかの甘く包容力のある歌声が美しいアンサンブルに乗ってどこまでも広がり、最高に気持ちの良い音楽を届けてくれた。子ども連れの家族も楽しそうに、あちこちで笑顔が咲き乱れていた。

Laura day romance 撮影=渡邉一生

続いてはFLOWER STAGEが幕を開ける。司会進行役のFM802 DJの土井コマキが開会宣言し、4月度FM802邦楽ヘビーローテーションアーティストのLaura day romanceにバトンをつなぐ。サポートに内山祥太(Ba)、小林広樹(Gt)、西本心(Key)を迎えた編成で響かせるサウンドは唯一無二。井上花月(Vo)のスモーキーで美しい歌声と、鈴木迅(Gt)の情景を思い起こさせるギターリフ、礒本雄太(Dr)の安定したビート。「brighter brighter」や「sweet vertigo」など、一筋縄ではいかないLaurasの一面もしっかりと提示しつつ、ラストは「Young life」「sad number」と明るいナンバーで爽やかに締め括った。

maya ongaku 撮影=オイケカオリ

初登場のmaya ongakuは様々な楽器を用い、独自の空間芸術でその場にいた者を魅了した。園田努(Vo.Gt)、高野諒大(Ba)、 池田抄英(Key.Sax.Flut)の3人が向き合う演奏スタイルも特徴的。「Nuska」で民族的な雰囲気を醸し出すと、まだ未発表の新曲ではエキゾチックでサイケなサウンドやギターフレーズの反復で没入させ、フィールド音楽が随所に散りばめられた「Melting」を経て、浮遊感たっぷりの「Pillow Song」まで全4曲を披露した。即興音楽やセッションの要素も含んだ演奏で、一度見ると忘れられない世界へと誘ってくれた。

Homecomings  撮影=渡邉一生

FLOWER STAGEの2番手はHomecomings。今年2月に畳野彩加(Vo.Gt.)、福田穂那美(Ba.Cho.)、福富優樹(Gt.)の3人体制となったホムカミのサポートドラムを、先ほどライブを終えたばかりのLaura day romanceの礒本がつとめる。畳野の透明感のある歌声がバンドアンサンブルに気持ち良く溶けてゆく。「US / アス」「ラプス」とエヴァーグリーンなサウンドを響かせた後は「Moon Shaped」や「Blue Hour」でエモーショナルな一面も見せる。礒本サポートのホムカミは少し力強さがあり、これからの道すじを示すような、信頼で結ばれた関係性も表れたプレイだったように思う。いつまでも聴いていたくなるみずみずしいステージだった。

ベルマインツ 撮影=羽場功太郎

MONKEY STAGEでは、地元神戸出身のバンド・ベルマインツがアコースティック編成で登場。盆丸一生(Vo.Gt)、小柳大介(Vo.Gt)のツインボーカルと前田祥吾(Ba)のコーラスが耳を潤す。新曲「だって」を含む8曲を披露して、最高に心地良い空間を作り出した。3人の見せる情景美とグッドメロディは、目が覚めるような新鮮さが感じられた。

幽体コミュニケーションズ 撮影=羽場功太郎

その後、同ステージに登場した幽体コミュニケーションズもまた、中毒性のある音楽体験をさせてくれた。paya(Vo.Gt)、いしし(Vo)が対面に座り、その間に吉居大輝(Gt)がスタンバイ。男女混成の美しすぎるハーモニーは心を浄化し、色々な音が混ざり合う演奏や、payaの身体的なパフォーマンスは好奇心を刺激する。独自の世界観だが楽曲はポップで、新曲を含む全7曲でどっぷりと没入させた3人だった。

奇妙礼太郎 撮影=オイケカオリ

FRUITS STAGEに現れた奇妙礼太郎は、音楽のコミュニケーションの楽しさを再認識させてくれた。くしゃっとした笑顔でラフにMCをするが、ひとたび歌い出せばたちまち人々を虜にしてしまう。<お昼休みはウキウキWatching>と誰でも歌えるポップソングを筆頭に、「ギンビス」「おでん」などの楽曲でも「え? 一緒に歌ってくれんの? やったあ」とお茶目にオーディエンスを巻き込む様子もさすがだし、巻き込まれるのもとても楽しい。あっという間にコール&レスポンスが起こり、その場の全員を奇妙ワールドに連れていった。最後は「オー・シャンゼリゼ」で、大盛り上がりのステージを終えたのだった。

藤原さくら 撮影=渡邉一生

FLOWER STAGEでは、昨年の『KOBE SONO SONO ’23』と今年1月に月世界で行われたプレイベントにも登場した藤原さくらが、春らしいブルーストライプのシャツにジーンズ姿で登場した。サポートは関口シンゴ(Gt)、中西道彦(Ba)、別所和洋(Key)という豪華な布陣。ドラムレスで奏でられる楽曲たちは優しくあたたかく、藤原のスモーキーな歌声が気持ち良く空間一体に溶けていく。MCでは昨年の『SONO SONO』の気温の低さに触れ「今日は完璧な気候ですね」と笑顔を見せる。新旧織り交ぜたセットリストで、ラストはニーナ・シモンの「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」をカバー。お昼帯にぴったりの、ハートフルでカッコ良いステージだった。

名誉伝説 撮影=オイケカオリ

FRUITS STAGEの4番手は、2023年に結成、5ピースバンドの名誉伝説はなんとライブ自体が2回目で、関西でのライブはこの日が初。こたに(Vo.)、けっさく(Gt)、ひだまりユトリ(Ba)、大波メロディ(Dr)、うたかず(Key)が横一列に並び、1音目からみずみずしいサウンドと透明感のある歌声を解き放つ。ポップでかわいらしい「ラヴィング」、パワフルで疾走感たっぷりの「feat.あなた」、遊び心あふれる「ポルトロン」、ロックな「地獄でスキップ」など、ライブが進むにつれて勢いを増し、様々な表情を見せてくれた。これからの彼らが非常に楽しみな35分だった。

トータス松本 撮影=渡邉一生

FLOWER STAGEのトータス松本はグリーンのスーツとブラウンのハット姿で「こんにちは~」と笑顔で登場。「ワンダフル・ワールド」に続けてEテレ『みいつけた!』に書き下ろした最新曲「ただいま!」で<ただいま神戸!>と歌うと、オーディエンスは大興奮。歌われる楽曲たちはどれも懸命に日々を生きる人々を受け止め、ポジティブに寄り添ってくれる。懐の大きな歌詞と歌声が真っ直ぐに心に突き刺さった。兵庫県西脇市出身のトータスは、北神戸の風景に哀愁と郷愁を感じたのか「こそばゆい」と口にして、最後は「バンザイ~好きでよかった~」で<今日はこうやって生まれた故郷の近くで歌えた喜び>と上を向いてパワフルに歌い上げ、元気をくれる素晴らしい時間となった。

浦上想起・バンド・ソサエティ 撮影=オイケカオリ

昨年に続いてFRUITS STAGEに登場した浦上想起・バンド・ソサエティ。浦上想起(Vo.Key)を中心に、しょけん(Gt)、シンリズム(Ba)、平陸(Dr)を迎えた編成での「バンド・ミニマル・ソサエティ」バージョンで出演。浦上は「呼んでいただいて大変光栄です」と喜びを口にして「星を見る人」からライブスタート。伸びやかな歌声とダイナミクスなサウンドから訪れる緩急の反復に、ただ身体を揺らされる。ボーカルの比率よりも演奏パートが多めの楽曲たちは、リズムの変容やフレーズの妙を本能的に楽しむことができて面白い。最後は「新映画天国」を壮大かつポップに響かせて多幸感を残したのだった。

Summer Eye 撮影=羽場功太郎

MONKEY STAGEのSummer Eyeは、会場全体をくまなくステージに変え、自由度の高いライブで見る者を魅了した。ステージ上にパラソルと机、ラップトップを置き、自分でトラックを流しながら、「PHOTO」の腕章をつけてオーディエンスの間をハンドマイクで練り歩きながら歌う(20mのケーブルを用意してもらったそう)。マイクレスのアカペラで「人生」を披露した時は、全員で歌に集中する時間が特別で、ドキドキするほど素敵だった。本人も「めっちゃ良い時間過ごしてるねー! 来て良かったですありがとう!」と満足げ。彼の繊細さとラフさ、色気と魅力が存分に詰まった濃厚なライブだった。

KENT VALLEY 撮影=羽場功太郎

MONKEY STAGEのトリをつとめたのはKENT VALLEY。幽体コミュニケーションズの吉居がサポートギターに入り、打ち込みのビートを流しながら2人でエレクトリックサウンドを響かせていく。KENT VALLEYは「神戸でライブやるのは初めてかもしれない。こんな良いイベントに呼んでもらって嬉しいです」と挨拶し、オートチューンも使ったボーカルとコラージュ的な要素もあるサウンドでじわじわと熱を上げ、ダンスナンバー「HALL-ROLL」でぐんと盛り上げて「Blueworks」まで、たっぷり9曲を歌い切った。

Bialystocks 撮影=渡邉一生

昨年、FRUITS STAGEのトリですさまじい存在感を放ったBialystocksが、今年はサンセットタイムのFLOWER STAGEで極上時間を彩った。サポートに西田修大(Gt)、越智俊介(Ba)、小山田和正(Dr)を迎え、「幸せのまわり道」をゆったりと奏で始める。甫木元空(Vo)のボーカルは見る度に凄みを増し、うっとりするほどのフェイクに絡みつく菊池剛(Key)のピアノも美しく、会場全体を掌握する。歌詞の世界観と野外のロケーションのマッチングが素晴らしく、思わず空を見上げてしまう。「頬杖」「Upon You」といった代表曲から、ハイトーンボーカルとリズム隊がエッジーな「灯台」、最後に奏でられた「Nevermore」まで全8曲。Bialystocksのクリエイティブさを感じた至福の時間だった。

角舘健悟(Yogee New Waves) 撮影=オイケカオリ

FRUITS STAGEのトリは、今年1月に神戸月世界で行われたプレイベントにも登場した角舘健悟(Yogee New Waves)。リハからそのまま板付で本編に入ると、「SISSOU」「to the moon」と張りのある歌声をアコギ1本で楽しそうに響かせる。上白石萌音に提供した「ひかりのあと」、大名曲「CLIMAX NIGHT」を披露する頃には、ブルーだった空の色が濃紺へと変わっていった。MCでは今は曲作り期間だと近況を報告した。クラップに乗せて新曲をグルーヴィにプレイすると、まさに音楽が空気を動かし、風が通り抜けてゆくように会場全体が歓びに満ち溢れた。最後は春にぴったりの「Bluemin' Days」で軽やかにフィニッシュ。角舘の満面の笑顔と鳴り止まない拍手が、この時間が豊かなものであったことを示していた。

KIRINJI 撮影=渡邉一生

そしていよいよ大トリのKIRINJI。一昨年秋に大阪城音楽堂で行われたプレイベント以来の出演となる。すっかり暗くなったフルーツ・フラワーパークに浮かび上がるFLOWER STAGEに堀込高樹(Vo.Gt)千ヶ崎学(Ba.Cho)、小田朋美(Vo.Syn)、宮川純(Key)、シンリズム(Gt.Cho)、伊吹文裕(Dr)登場した。ファンクな「非ゼロ和ゲーム」、アーバンで疾走感のある「nestling」、堀込節が炸裂した「指先ひとつで」、インスト曲の「ブロッコロロマネスコ」と続けて演奏し、圧巻の実力とバンドグルーヴでオーディエンスを圧倒する。軽く自己紹介とMCを挟み後半戦。小田がメインボーカルをとり堀込がラップを歌う「killer tune kills me」、最高にクールなダンスナンバー「Runner's High」で猫も杓子も踊らせて、ラストは「時間がない」で盛大に締め括る。すぐさまアンコールを求めるクラップが起こると、メンバーがカムバック。堀込は「アンコールするつもりじゃなかったので、ちゃんと練習してない曲やります」と言いつつも、聴こえてきた「The Great Journey」にオーディエンスは大歓喜。最高にヘヴィなグルーヴと音圧、バンドセッションで最高潮の盛り上がりを見せ、華やかにステージを終えた。

こうして2回目となる『KOBE SONO SONO ’24』も大団円で幕を閉じた。来年の春はどんな景色に出会えるのだろうか、今から楽しみにしていよう。

取材・文=久保田瑛理 写真=KOBE SONO SONOオフィシャル 提供(撮影:渡邉一生、オイケカオリ、羽場功太郎)