大橋会長も「怖かった」と慄く圧巻の20秒 前日計量で“先手”を取った井上尚弥の視殺戦「駆け引きは始まっている」

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ネリとの計量で堂々たる振る舞いを見せた井上。(C)CoCoKARA NEXT

 思わず息をのむような20秒間だった。

 5月5日、ボクシングの世界スーパーバンタム級(55.3キロ以下)4団体タイトルマッチ12回戦(5月6日/東京ドーム)に向けた前日計量が実施。メインイベントを飾る王者・井上尚弥(大橋)が55.2キロ、元世界2階級制覇王者の挑戦者ルイス・ネリ(メキシコ)が54.8キロで、それぞれ一発パス。無事に試合開催の流れに至った。

【動画】関係者たちも「怖かった」と漏らす睨み合い! 井上とネリのフェイスオフ

 34年ぶりとなる東京ドームでのボクシング興行の舞台がついに成立した。ネリが2018年の山中慎介戦で体重超過を犯していた背景もあり、直前まで関係者たちが気を揉む時間が続いたが、「万全の状態だ」という29歳のメキシカンは、リミットよりも500グラムも低い体重でクリア。会場からは安堵のため息と、落としすぎではないかという驚きの声も上がった。

 もっとも、王者はネリの計量パスも意に介さず。全くと言っていいほどに微動だにしなかった。恒例のフェイスオフでは互いの顔が当たるのではないかというほどに両雄が肉薄。約20秒睨み合うと、ネリ陣営が「ビバ!メヒコ」とシュプレヒコールを上げるなか、井上はまばたきすらせず、ジーッとネリを凝視。殺気立ったオーラがにじみ出た。

 計量後の取材に応じた井上は、試合に向けた“懸案事項”だったネリの計量について「まあ成立はするでしょう。さすがにこのビッグイベント。ネリも過去最高のファイトマネーもらうだろうし、そこはしっかりやってくるだろうというのがあったから別にそこに対しての心配はなかった」と回想。そのうえで、昨年7月のスティーブン・フルトン戦を彷彿とさせる視殺戦について、「もう明日やるだけなんで。ここからそういう駆け引きは始まっている」と多くを語らなかった。

 挑戦者に心理的なプレッシャーをかける意味でも先手を取った感がある。そんな王者の風格を漂わせる井上の振る舞いには、周囲も驚きを隠さない。長年、サポートしてきている大橋ジムの大橋秀行会長も「怖かったですねぇ。気合が入っているのだろうと思います。殺気が出ていたし、最高の状態です」と振り返るほどだ。

 日本ボクシング界にとって歴史的な日となる大一番に向け、心身ともに最高潮の井上。ますます当日が楽しみになる計量となった。

[文/構成:ココカラネクスト編集部]