ちゃんみな 撮影=アミタマリ

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AREA OF DIAMOND 2
2024.04.28 ぴあアリーナMM

ちゃんみなが全国ツアー『AREA OF DIAMOND 2』の追加公演のファイナルを4月27、28日に神奈川・ぴあアリーナMMで開催した。昨年12月から1月まで全国6都市をまわり、追加公演では韓国、香港、台湾でライブを行い、初めてヘッドライナーを務めたフェス『Go-AheadZ』、『東京レインボープライド2024』を挟み、4月28日に千秋楽を迎えた。ライブのテーマは「葛藤と再生」。ちゃんみなが音楽シーンに登場してから、さまざまな苦悩と直面し、落ち込んだ先に見つけた現在地点を、緻密な演出とパフォーマンスで表現した。

撮影=田中聖太郎

大歓声の中、客電が落ちると白いドレスを着た少女がグランドピアノで「白鳥」を演奏した。ぺこりとおじぎをして舞台を出ると、今度はステージ後方にセットされた巨大な貝殻が開き、真っ赤なドレスを纏い、サングラスをかけたちゃんみなが現れて「Baby」を歌唱した。「RED」のイントロが鳴ると、ちゃんみなは立ち上がり、階段を降りながらサングラスを外す。激しいバンド演奏の中、優雅に花道を歩いてセンターステージに向かった。「I'm a Pop」で観客を煽り、「Picky」には12名のダンサーが加わった。アートとエンタメをミックスさせた完成度の高いショウ。「Doctor」ではストレッチャーに乗ってセンターステージからメインステージに戻るちゃんみなのユーモアも感じさせた。

撮影=田中聖太郎

撮影=田中聖太郎

しっかりと作り込まれたオープニングパートを駆け抜けたちゃんみなは観客に向けて「12月から回ってきた『AREA OF DIAMOND 2』の追加公演、そして今日が最終日ファイナルとなります。ようこそ!」と語りかけた。「やっとこの日を迎えることができました。と同時に、もう終わってしまうんだなっていう寂しい気持ちもあります。そしてこの2日間、満員ありがとうございます! これから始まっていきますけど、今日1日楽しんで帰ってくださいね」と話して「ルーシー」へ。バレリーナの衣装を着た4名のサポートダンサーと美しくスタイリッシュなパフォーマンスを披露した。

撮影=田中聖太郎

撮影=田中聖太郎

ここからはポップな衣装に着替えたギャルパートへ。目を引いたのは巨大なウィッグ。ユニークでかわいい。6名のダンサーたちと息のあった動きで「B級」を歌い、おなじみのお尻を振るダンスで黄色い声援が絶叫に変わった。「ピリオド」はちゃんみなの顔がプリントされたお札が吹き上げられ、リリースしたばかりの新曲「FORGIVE ME」も歌った。

撮影=田中聖太郎

「すごかったでしょ? さっきのあれ(ウィッグ)。生で見るとおっきくない? きっと今日で使うこともなくなるだろうな。(観客の残念がる声を受けて)まだ見たい?(笑) じゃあとっとくか。もう倉庫いっぱいだよ。さっきのさ、最初に出てきた貝殻。あれ150キロもあるんだよ。そんながんばって作ってくれた貝殻をワンタンって呼ぶ人がいるんだ……。あれは貝殻です」と話す。MC中のちゃんみなは親しみやすい。場内に笑い声が溢れた。

「ツアーも来てくれた人いますか?」 たくさんのペンライトが振られる。
「えー、じゃあ全国から来てくれたんだ。なんなら今日がちゃんみな初めてって人いますか?」 こちらもたくさんのペンライトが揺れる。

「本当!? やだー。初めましてー。ちゃんみなと申しますー。私のファンの人たちはみんなリアクションが大きいんですよ。だから私も嬉しくなっちゃって、“こんなことしたらみんな喜んでくれるかな”“こんなことしたらみんな キャーって言ってくれるかな”とか、たくさん考えながら準備しました。ほんとにみんなの顔が常にある5ヶ月間でした。そんな中で今日を迎えて。最高に楽しんでもらえたら嬉しいです。恥ずかしがってる子も、今日は今日しかないから全力で楽しんで帰ってね」と話した。

撮影=田中聖太郎

「BEST BOY FRIEND」から男性ダンサーと濃厚なコンビネーションパフォーマンスを見せる「Like This」「FUCK LOVE」は今回の大きな見せ場のひとつ。愛に乱れ狂ったちゃんみなの激情を演じるように表現して見せた。バンドの間奏を挟んで、次のパートは雑踏。さまざまな人たちが行き交う中、ちゃんみなはメインステージの真ん中であぐらをかいてギターを抱え、「Biscuit」「サンフラワー」を歌った。紫のコートを羽織った衣装に着替えた彼女は、まるでストリートミュージシャンのよう。ネガティブなもやもやを吐き出すようにパワフルな歌を聴かせた。

撮影=アミタマリ

撮影=田中聖太郎

演劇を彷彿とさせるここまでの演出。ちゃんみなは「(2023年3月に横浜アリーナで行った)『AREA OF DIAMOND』は、自分でメイクを落としたりとか、ありのままの姿をみんなに見せて、みんなも自信を持ってほしいっていうポジティブなメッセージを届けたいと思っていました。私はみんなに“自信持ってよ”って言ってる割に、自分はトラウマや、許せてない人がまだまだたくさんいる気がしていて。そんな私が“自信持って”なんて言っていいのかって気持ちがありました。でも『AREA OF DIAMOND』でありのままをさらけ出して、本当の意味で心がひらけたんです。こうやってのびのび歌ったり、踊ったり、喋れるのは(自分の音楽を聴いてくれる)みんなのおかげ」と語った。そして特に思い入れがあるという「Never Grow Up」を光輝くミラーボールの下で歌った。「ボイスメモNo.5」「ハレンチ」は音楽の楽しさを全身から発散し、観客も一緒に大合唱した。「次はあなたたちの歌です!」と「美人」に突入。《前例がないのは怖いかい/ならお手本になりなさい/怖がったままでどうすんだい/あの彼女を助けなさい》と歌ったちゃんみなにはすさまじいスケールがあった。

撮影=田中聖太郎

ざわつく会場は暗転して子供の映像が流れた。その様子はまさにライブの最初に登場した少女と同じ。白いドレスを着てピアノで「白鳥」を弾いている。

黒い衣装に着替えたちゃんみなは、《あの少女は/美しくない/歌声だけよ》という強烈な歌詞が印象に残る「ダリア」をマイクスタンドで歌った。

ちゃんみなは語る。「このツアー(の演出や構成)を考えてた時、今思えば私の精神状態はとっても悪かった。“なんで私ばっかり”って思ってました。小さい頃はいじめにあって、中学では両親と対立して、デビューしたらやれヒップホップじゃない。やれロックじゃないと言われ。“あいつはなんなんだ”って。音楽が大好きだった幼い頃の自分がどこかに行ってしまった気がして、あの頃の自分を取り戻したくてこのショウを思いつきました。ツアーを完走した頃には、みんなにも意味がわかるようにしたくて」と『AREA OF DIAMOND 2』に込めた意図を説明した。

さらに「でも、私、思ったんですよ。これって経験してきた全てを乗り越えただけなんだって。それが価値あることなんだって。みんなにもいろんなことがあったと思う。私も想像できないぐらい。でも乗り越えて、今ここにいて、生きてるってだけで、あなたには価値がある。 その最高級の魂と一緒に、私も生きていきます。せっかく価値のあるこの人生、もっともっとおっきいところに行く。もっともっとすごくて綺麗な景色を見せれるように精一杯頑張ります。もしみんなの中にもちっぽけなうじうじしてる自分がいたら、その弱い子を追い出さないで。どうか抱きしめてあげてください。その子があなたを助けてくれる日がくると思います。自分のことを信じて。自分の人生は自分の手で変えられる」。

バラバラのピースが一気にハマる瞬間だった。私たちは、ちゃんみなの葛藤と再生を擬似体験することで、人生の素晴らしさを共有していたのだ。ちゃんみなはMCの後、《君の幸せを願うよ/君の音楽を聴くよ/君の愛を信じるよ》と歌う「Good」を届けた。さらに「太陽」ではセンターステージから水のカーテンが降り注ぎ、ファンに向けて《太陽だ/雨だ/大地だ/風だ/君がいないと息ができない/全てなんだ》と魂を込めて歌った。衝撃的なショウだった。

撮影=田中聖太郎

本編が終わると、あまりの完成度に場内は静まり返った。徐々にちゃんみなコールが始まり、拍手になり、アンコールを求める声に変わっていった。笑顔のちゃんみなが再びステージに出てきて「花火」「Angel」を歌った。最後にダンサー、バンドを一人ひとり紹介して、「TOKYO 4AM」で『AREA OF DIAMOND 2』を締め括った。

客出しの影アナもちゃんみなが担当し、「本編では言いそびれちゃったけど、カラコンを発売します。開発に1年もかけた力作です」とチャーミングに話した。テーマのフレームをしっかりとディテールまで表現しつつ、ライブとしてのエモーションも両立させた素晴らしい公演だった。


取材・文=宮崎敬太
撮影=アミタマリ、田中聖太郎