ammo、9箇所を巡ったワンマンツアー最終公演、ホームへの凱旋で見せた進化と不変「ずっとライブハウスでかっこいいバンドになる」
ammo『THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR』2024.4.25(THU)大阪・心斎橋BRONZE
東大阪発スリーピースロックバンドammo(アモ)が4月25日(木)、大阪・心斎橋BRONZEにて9箇所を巡ったワンマンツアー『THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR』の最終公演を開催した。同ツアーは2024年1月に発表したメジャーデビュー作「re: 想 -EP」と「re: 奏 -EP」を引っ提げたもの。
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定刻の19時を迎え紗幕が上がると、緑色に照らされたバックドロップが出現。岡本優星(Vo.Gt)と川原創馬(Ba.Cho)、北出大洋(Dr)の3人が登場し拳を合わせると、フロアからは温かい拍手が巻き起こり、ホームへの凱旋を祝おうとする雰囲気が漂う。
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岡本の「大阪、ammo、始めます! 初っ端から一つになれる気がする」という開幕宣言と共に、ライブは「ハニートースト」でスタート。ライブの終盤を飾ることも多い同曲が先陣を切ったことに不意を突かれたファンも多かったのか驚きの声が上がり、今宵が特別な日となることを確信させる。
「始まっちゃったね。最高の夜にしよう!」「パンパンの暑苦しいライブハウスへようこそ」と煽り続けながら、「これっきり」や「未開封」「深爪」とアップチューンを連打すれば、フロアのボルテージは早くも最高潮に。タイトルコールの度に上がる歓声やイントロで喜びを爆発させダイブするオーディエンス、北出のビートに呼応して握られる拳からは、一人一人に大切な歌があり、ライブハウスでそれぞれの物語や忘れられない日を紡いできた軌跡が伝わってきた。
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北出の16ビートと川原のオクターブ奏法が生み出す跳ねるようなリズムに会場が波打った「ねー!」、ammoのストロングポイントである、生活を切り取った生々しさと押韻を駆使した人懐っこさを兼ね備えた歌詞が特徴的な「Chill散る満ちる」を経て、ライブ中盤に投下された「紫春」はハイライトの1つとなった。「『THIS IS MODERN OLD STYLE TOUR』9本目。これで最後。BRONZEはホームだからじゃない、一番負けたくない場所だからこそ今日も全力。これまでの俺に勝ちにきた!」と決意を語り、弾き語る岡本の姿を白いスポットライトが照らす。ギターのボリュームが少しずつ上がり、川原と北出がアンサンブルに加わると、ブレイクの瞬間に観客からは「ワン、ツー!」の声。<鮮血の赤も青春の青も似合わなくなってしまったな 気が付けば秋 木が痩せれば冬>というラインと共鳴して、赤から青、オレンジ、白へと移り変わる照明も印象的であり、楽曲の世界観をより濃く縁取っていた。
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「BRONZEで歌ってきた曲」と呟いて披露されたのは、「寝た振りの君へ」。同会場で収録されたMVと、何度もプレイしてきたこの曲を改めて丁寧に紡いでいく3人の姿がオーバーラップする。映像と明確に違うのは、今夜はammoのワンマンライブであり、彼らの背後には大きなバックドロップが掲げられていること。何十倍にも大きくなったバンドの姿に、目頭を押さえるファンも見られた。「re: 想 -EP」収録の「koi」「ブルースを抱きしめて」と1stデモシングルの表題曲「寝た振りの君へ」という新旧のスローチューンを並べ、じっくりと聴かせた後は、ライブハウスで歌い続けることの覚悟が込められた「CAUTION」で再びアクセルを踏み込み、怒涛の後半戦へと突入。
「メジャーデビューをして何が変わった? 何も変わってない。BRONZEに初めて来たあの時からずっとライブハウスでかっこいいバンドになる……と、あの時の自分に言います。心斎橋BRONZEでかっこいいライブをやっています! 今日が俺たちの最高点!」とシャウトして、マッシブなツービートが炸裂する「星とオレンジ」へ雪崩れ込めば、視界は見渡す限りダイバーで埋め尽くされる。岡本が「おい!」と煽っただけで発生した<止まらない>の巨大なチャントは、メンバーの一挙手一投足を見逃すまいとするファンと3人の信頼関係によって支えられた、偶発的で瞬発力の問われるセッションのようであった。
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川原がベースを天へと突き立て、アグレッシブな演奏を加速させた「後日談」、まだまだ足りないとばかりに岡本が目を見開いて歌い上げた「突風」を連投すると、この日を分かちあった全員のTシャツはびっしょり。息も絶え絶えとなった客席に「まだ終わってないぞ!」と咆えると、1分間のショートチューン「包まれる」を投下。もはやサディスティックでさえある終盤戦に笑いが込み上げてくるが、思えばライブハウスとはくらくらするような熱狂の中で、愛するナンバーたちが爆音で鳴らされることに破顔する場所であったと再確認させられる。
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冷たい空調の風も生ぬるく感じるような熱気の中、セレクトされたのは「フロントライン」と「好きになってごめんなさい」。「寝たふりの君へ」と同じく1stデモシングルに収められた“始まりの歌”2曲を続けざまに持ってくる構成は、これまでの延長線上に今日があること、そしてまだまだ先へと歩み続ける彼らの姿を想像しない方が難しい。特に<好きになって 伝えたくて 俺は恋に恋してた>と赤裸々な恋心を吐露するミドルチューン「好きになってごめんなさい」は、無数のライブを経てバンドが十分な筋力をつけたことを証明するように、3人の重厚なサウンドが光っていた。
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「やまない愛はある」「賭け愛」とほっとするような楽曲で本編を締めくくると、すぐさま会場からはアンコールが発生。再びステージへ姿を現したメンバーがツアーを振り返っていると、メジャーデビューの顔となった曲「何°Cでも」がエンディングを彩る。<第一毎日お利口におしゃぶり咥えた青二才 再三度目の正直なんか四度目の嘘つきの始まり>の2行に合わせて、指を1から2、3、4へとサインするオーディエンスは、既にこの楽曲がアンセムとして浸透していることの証にほかならない。置き土産に「歌種」をプレイし、シンガロングを巻き起こして舞台から下りたものの、今夜はこれでは終わらないとばかりの歓声に3人は呼び戻される。更なる飛躍を誓うがごとく、未発表の新曲でツアーファイナルにピリオドを打った。
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これまでCDオンリーを掲げ、ローカルに密接したライブハウスで事件のような夜を生み出してきたammo。インディーズ時代の曲の再録で構成される『re: 奏 -EP』の配信リリースとメジャーデビュー、彼らにとって過去最大キャパシティとなったZepp DiverCity(TOKYO)での単独公演『reALITY』の開催は、ここまで3人を見届けてきたファンにしてみれば喜びだけでなく、寂しさを感じることもあっただろう。だからこそ、今回のタイトルに冠された『THIS IS MODERN OLD STYLE』は、最新を更新し続けながらオールドでダイレクトなやりとりを大切にしていくこと、変わらずに変わっていくことを改めて提示した決意であったのだと思う。ライブ中盤、岡本は前回の心斎橋BRONZEでのワンマンが『インディーズ最後の夜』と題された公演だったこと、本ツアーで9箇所を周ってきたことに触れ、「何倍も進化した俺たちを見せます」と語っていたが、まさしくこのMCは表題に込められた覚悟が溢れ出ていた。この原稿を執筆するにあたり「寝たふりの君へ」のCDを開いたが、帯に刻まれていたのは、岡本がライブ中幾度となく口にしていた「大阪、ロックバンド、ammo」の文字だった。最新でオールドなスタイルを見せつけたammoは、これからもホームを背負い、ロックバンドと向き合い、まだまだ進み続けていく。
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*写真の無断転載禁
取材・文=横堀つばさ 撮影=toya