メトロの歴史や特徴を知ろう

14の路線のうち、1・4・14号線は自動運転

パリがもっとも華やいだベル・エポック期の1900年に1号線が開通し、その後約30年間で14の路線が作られた、パリ市交通公団RATPが運営するメトロ(地下鉄)。市内全域を縦横無尽に走っているため、どの観光名所も駅から徒歩圏内にあり、移動にとても便利な乗り物です。運行時間は通常、5時30分ごろから24時30分ごろまで、金・土曜、祝前日などは翌1時30分ごろまでですが、路線によって異なります。

<観光に便利な路線>
1号線:パリ右岸を東西に貫く、観光の足として利用価値が高い路線。【最寄りの観光名所】凱旋門、シャンゼリゼ大通り、コンコルド広場、ルーヴル美術館、パリ市庁舎

4号線:パリ中心部を南北に貫く路線。【最寄りの観光名所】ノートルダム大聖堂、シャント・シャペル、サン・ジェルマン・デ・プレ教会

7号線:右岸の北東部から中心部を抜け、左岸の南へと通じる路線。【最寄りの観光名所】オペラ・ガルニエ、ルーヴル美術館

メトロの入口。この赤い看板がもっとも多い

黄色の「M」は遠くからでもよく見える

メトロの駅の入口は、当時流行していたアール・ヌーヴォー様式の建物を手がける建築家のエクトール・ギマールが設計しました。現存するのは2号線の終着駅であるポルト・ドフィーヌPorte Dauphine駅や12号線のアベスAbbesses駅で、そのほかの駅では、「METRO」と書かれたの赤色の看板や黄色の「M」の看板が目印となっています。

アベス駅はタイル張りのレトロなデザイン。黄色いイスもかわいい

駅構内は各エリアの特徴を活かしたデザインになっているところが多く見られます。例えば、ルーヴル美術館近くの1号線ルーヴル・リヴォリLouvre-Rivoli駅は彫刻の装飾が施され、まるで美術館のような雰囲気。ロダン美術館の最寄り駅、13号線ヴァレンヌVerenne駅は、ロダンの彫刻作品が展示されています。移動中に駅構内のデザインを見るのも、パリ観光の楽しみのひとつ。

メトロのチケットについて詳しく解説!

■1回券(Ticket t+)

1回券(Ticket t+)は紙のチケット

メトロは全線€2.15の均一料金。基本となる1回券(Ticket t+)は、RER(主要メトロ駅とパリ市郊外を結ぶ高速郊外鉄道)、バス、トラム、ケーブルカーの利用が可能です。有効時間はメトロ間、メトロ〜RERの乗り換えは2時間以内、バス間、トラム間の乗り換えはそれぞれ1時間30分以内。

1回券(Ticket t+)のほかに、旅行者用のチケットや近年導入された交通系ICカードもあります。種類が多く、ややこしいので旅行者向けの便利なチケットやパスに絞って紹介します。

その前に、パリの公共交通はゾーン1〜5(実際はゾーン6までありますが、観光客ほぼ利用しないので省きます)まであり、この区間によってこれから紹介するチケットやパスの料金が異なります。パリ市内の観光名所はゾーン1、ヴェルサイユ宮殿はゾーン4、シャルル・ド・ゴール空港、ディズニーランド・リゾート・パリはゾーン5。

■パリ・ヴィジットParis Visite

観光名所の割引などの特典が付く「パリ・ヴィジットParis Visite」 ※デザインは変更されている場合があります

メトロ、RER、イル=ドゥ=フランス圏内のフランス国鉄SNCF、バス、トラム、ケーブルカーが乗り放題になるツーリストパスの「パリ・ヴィジットParis Visite」。観光名所の入場料が割引になる特典付きで、オテル・ドゥ・ラ・マリーン€3引き、モンパルナス・タワー25%引き、ピカソ美術館€2引き、パンテオン€2.5引きなど。割引きとなる名所が限られているので、旅行者の誰もがお得に感じるというほどではないかも知れません。

購入したらチケットのMOMに姓、Prénomにアルファベットで名前を、JOUR Leに利用開始日を記入する必要があります。

<料金>
ゾーン1〜3:1日券€13.95、2日券€22.65、3日券€30.95、5日券€44.50

<購入場所>
メトロの自動券売機、大きなメトロ駅・RER駅の窓口、観光案内所

■ナヴィゴ・イージーNavigo Easy

使い勝手がいいナヴィゴ・イージー

キャッシュレス、ペーパーレス化が進んでいるパリでは、メトロのチケットも紙からICカードに変わっています。そのなかでも「ナヴィゴ・イージーNavigo Easy」は1回券、10回券、1日乗り放題などをチャージできる便利な交通系ICカード。メトロを1日に5回以上利用するなら、1回券より1日乗り放題の「ナヴィゴ・ジュールNavigo Jour」がお得。数日間滞在するけど、メトロに何回乗るか分からない人は1回券が10回分ワンセットになった「カルネCarnet de 10」が便利。

<カード作成料>
€2 ※有効期限10年

<チャージできるチケット、パス>
●1回券(Ticket t+):€2.15

●10回券(カルネCarnet de 10):€17.35

●1日乗り放題パス(ナヴィゴ・ジュールNavigo Jour):

ゾーン1-2、2-3、3-4、4-5 €8.65、

ゾーン1-3 €11.60、ゾーン1-4 €14.35、ゾーン1-5 €20.65

※メトロ、RER、イル=ドゥ=フランス圏内のフランス国鉄SNCF、バス、トラム、ケーブルカーが乗り放題。空港バスのロワシーバス、オルリーバス、予約が必要なフランス国鉄SNCFは利用不可

●エアポートチケット(ロワシーバスRoissybus):€14.50(ICカード料金。通常は€16.60)

●エアポートチケット(オルリーバスOrlybus):€10.30(ICカード料金。通常は€11.50)

<購入場所>
カード作成、チャージともにメトロの自動券売機(チャージは新型の自動券売機、またはチャージ専用機)、大きなメトロ駅・RER駅の窓口

■ナヴィゴ・スメーヌNavigo Semaine

月曜から1週間乗り放題の「ナヴィゴ・スメーヌNavigo Semaine」。裏に顔写真を貼る

「ナヴィゴ・スメーヌNavigo Semaine」は、メトロ、RER、イル=ドゥ=フランス圏内のフランス国鉄SNCF(指定席のある路線は除く)、バス、トラムが1週間乗り放題になるICカード。長期滞在者にはとても便利ですが、利用できるのは購入日から1週間ではなく、月曜から日曜までで、購入可能な期間は使用する前週の金曜から使用する週の木曜、利用可能な期間は月曜0時から日曜23時59分まで(固定)と決まりがあります。週末に到着しても月曜までは使用できないので、到着・帰国する曜日によって購入するか検討しましょう。

<カード作成料/購入場所>
€5/大きめのメトロ駅の窓口、RER駅の窓口

<必要なもの>
顔写真1枚(縦3.0cm×横2.5cm)※有効期間10年

<料金>
ゾーン1-5 €30.75、ゾーン2-3 €28.20、
ゾーン3-4 €27.30、ゾーン4-5 €26.80

自動券売機でチケット購入&チャージしてみよう

■1回券の買い方

写真右は旧型、左は新型の自動券売機。クレジットカード、硬貨、お札のいずれを使用できるかは、右上のイラストで分かる

旧式の操作ローラー。これを回しながら画面をスクロール。緑ボタンで決定、赤ボタンはキャンセル

メトロ駅の自動券売機には、旧型と新型の2種類があります。旧型は操作ローラーが付いているタイプ、新型はタッチモニターを採用していて、表示画面を直接タッチします。

基本となる1回券を購入してみましょう。まずはトップ画面で言語(英語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語)を選択します。英語がわかりやすいので「English」をタップ。なお、言語以外の部分をタップするとフランス語表示となります。

右側の「You don't have a Navigo Pass:touch here」をタップ。ナヴィゴ・イージーを持っていてチャージする場合は左側をタップします。

1回券を購入する場合は左側の画面、ナヴィゴ・イージーのICカードとチケットを購入する場合は右側の画面をタップ。

画面内の「Mobilis 1day」は2024年1月から「ナヴィゴ・ジュールNavigo Jour」に変更

次の画面でチケットの種類を選択します。1回券なので、一番上の「Ticket t+」を選択します。パリ・ヴィジットやエアポートチケット(ロワシーバス、オルリーバス)なども選ぶことができます。

1枚から9枚まで選べる。10枚購入はナヴィゴ・イージーのカルネとなる

「Ticket t+」をタップすると、何枚購入するか選択する画面になります。間違えたら「Back」、もう一度初めからやりたいなら「Cancel all」をタップ。

金額が表示され、問題なければ「Validate」、続けてほかのチケットを購入したい場合は「Next purchase」をタップ。支払いはクレジットカード、硬貨、お札が利用可能ですが、自動券売機によってはカードのみ、お札は使用できない、使える場合でも€5、€10、€20札のみ。支払い画面になると「Do you want a receipt?」とレシートが必要か表示されるので、YesかNoを選択します。

写真上が1回券、下はレシート

支払い後、自動券売機の下にある取り出し口からチケットが出てくるので、これで完了です。新旧どちらの機械も画面や手順は同じで、操作ローラーがあるかないかの差です。

■ナヴィゴ・イージーの買い方

ナヴィゴ・イージーのパスとチケットを購入する場合は、1回券の購入手順から、3番目の画面で右側をタップ。「How many people are travelling?(旅行者は何人ですか)」の表示画面になるので、必要な人数(枚数)を選択します。

次に、どのチケットやパスを購入するか選びます。選択肢は以下のようなものがあります。

●One-day transit pass:1日乗り放題(ナヴィゴ・ジュール)

●Single-journey ticket:1回券、カルネ(10回券)

●Journey tickets reduced rate:割引乗車券(子ども料金)

●Orlybus ticket:オルリーバス

●RoissyBus ticket:ロワシーバス

●Navigo Jeunes Week-end:26歳未満対象の土・日曜と祝日のみ利用できる1日乗り放題券

「Single-journey ticket」をタップすると、1回券かカルネ(10回)を選択できる画面に移ります。

1日乗り放題(ナヴィゴ・ジュール)を購入する場合「One-day transit pass」をタップすると、使用開始日を選ぶ画面に移ります。購入日から7日後まで選択できます。次の画面で1〜5までのゾーンを選び、支払いが完了すると取り出し口からナヴィゴ・イージーが出てきます。

■ナヴィゴ・イージーのチャージ方法

チャージ専用機械。支払いはクレジットカードのみ

ナヴィゴ・イージーを持っていて、新たにチケットやパスをチャージする場合は、「Rechargemet navigo」と書かれた専用チャージ機か、新型の自動券売機で行います。

自動券売機の1回券購入手順から、2番目の画面左側「Place your Navigo pass」をタップ。ナヴィゴ・イージーを指定の場所に置いてセットし、使用するチケットやパスを選択して購入します。

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メトロの乗り方と注意点、RERについてもチェック

写真の改札だと右側の改札は使えない

チケットを購入したら改札を通ります。改札は複数あり、すべて自動ですが、緑色の矢印が点灯している改札のみ利用可能。また、「Réserve Navigo」と書かれた改札は、ICカードのみ通過できます。

紙の1回券やパリ・ヴィジットの挿入口

日本のICカード(SuicaやPASMOなど)と同じようにしっかりタッチ

ICカードのナヴィゴ・イージーやナヴィゴ・スメーヌは写真の紫色部分にタッチ、紙の1回券やパリ・ヴィジットは専用の挿入口へ。紙のチケットは取り出し口があるので、必ずチケットを回収しましょう。検札が抜き打ちで行われるため、チケットを所持していないと罰金が課せられます。

ICカードをタッチ、紙チケットを挿入したら、すぐにレバーを押して入場します。駅によっては透明の自動扉が設置されている改札もあります。

9号線のPont de Sevres駅行きホームを指す看板

改札を通過したらホームに進みます。パリのメトロでは、基本的に路線番号+終着駅名が行き先の表示ですが、ホーム近くには終点までの駅名が記された看板が設置されているので、目的地に向かうか確認しましょう。

ホームには電光掲示板があり、2本目までの電車の到着時間が示されています。ベンチがいくつか置かれ、スナック菓子や飲み物の自動販売機もあり。また、安全性向上のため、ホームドアを設置する駅も増えてきています。

1号線、14号線、新型車両では自動ドア、旧型車両は押しボタンか手動式ドアが使われています。写真のように、旧型車両はハンドルを押し上げて開けます。停車直前にドアロックが解除されるので、降車時も乗車時と同様の操作をしてドアを開けて降ります。

車内には3人掛けの長イスやボックス席、ドア付近に折り畳みイスが配置されています。混雑してきたら折り畳みイスを畳む、降りる際には「Pardon(パードン)※フランス語ですみません/ここを通してくださいの意味」と声をかけるのがマナーです。

数字は出口番号、欧文は出口がある通り名

「Sortie 出口」の表示に従って、訪れる場所に近い出口へ向かいます。駅構内の至る所に出口の看板があるので、迷う心配なし。特に観光スポットは名称とイラスト付きなので分かりやすいです。ショップやレストランへ向かう場合は、店舗から近い出口とその通り名をチェック。

メトロの番号とその行き先(終着駅)の看板がある

ほかの路線に乗り換える際は、メトロの番号が書かれた看板通りに進めばOK。メトロ間の乗り換えは自由で、改札もありません。

メトロ利用について注意すべき点もいくつかお伝えします。まず、エレベーターやエスカレーターを設置する駅は一部に限られていて、ほとんどの駅では階段のみ。そのため、地上に出る際や路線の乗り換え時には、歩くことが多くなります。また、複数の路線やRER・フランス国鉄の駅でもある場合、駅構内は広く、予想以上に歩くことになります。メトロ1・4・7・11・14号線とRERのA・B・D線が乗り入れているシャトレ・レ・アールChâtelet Les Halles駅、メトロ4・6・12・13号線とフランス国鉄もあるモンパルナスMontparnasse駅など。乗り換えの際には気をつけてください。

駅構内や車内ではスリが多発しているので、カバンは前に持ち、お財布やスマートフォンをむやみに出さないようにしましょう。1号線は特に要注意です。

国営交通RATPではたびたびストライキ(フランス語でgrèveグリーヴ)が起こります。メトロが運休となる場合もあるので、そんなときは歩く、またはレンタサイクル、バスを利用しましょう。

メトロ駅構内の乗り換え案内には[RER]もある

RER(エール・ウー・エール)とメトロの違いも気になるところ。RERは主要メトロ駅とパリ市郊外を結ぶ高速郊外鉄道で、RATPとフランス国鉄SNCFが共同で運営しています。A〜E線まであり、ヴェルサイユ宮殿やシャルル・ド・ゴール空港など、パリ近郊へのアクセスに便利。ただし、治安の悪いエリアを通る線もあるので、メトロと同様、警戒が必要です。

料金はパリ中心部(ゾーン1)だとメトロと同じ€2.15、ゾーン2から5までの郊外では目的地によって料金が異なります。パリ・ヴィジット、ナヴィゴ・ジュール、ナヴィゴ・スメーヌの使用は有効ゾーン内であれば可能ですが、乗り越し精算はできないので、事前に目的地までのチケットを購入しましょう。また、改札を出るときもチケットが必要なのでなくさないように。

パリ観光に便利なメトロ情報はいかがでしたか。2024年7月26日から9月8日まで開催するパリ2024オリンピック・パラリンピック期間は、1回券が€4、カルネは€32(予定)など値上げされます(値上げ期間は7月20日から)。また、競技会場となる1・8・12号線コンコルド広場Concorde駅、1号線チュイルリーTuileries駅は6月17日から9月21日まで閉鎖されるなど、オリンピック開催前から変更となるので、訪れる人は最新情報をチェックしてください。


Text:木村秋子(editorial team Flone)
Photo:yoko

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