山本由伸や山福也が抜けたオリックス投手陣を星野伸之が分析 「大黒柱」候補の山下舜平大は「15勝は狙える」
星野伸之が分析する2024年のオリックス
投手編
絶対的エースだった山本由伸、昨季にその山本(16勝)に次ぐ11勝を挙げた山粼福也がチームから抜け、新たな先発ピッチャーの台頭が求められるオリックス。春季キャンプやオープン戦では多くの若手がアピールするなど、競争が激化している。
長らくオリックスのエースとして活躍し、引退後はオリックスの投手コーチも務めた星野伸之氏が、古巣の春季キャンプを視察。ピッチャー陣の現状や期待の選手について語ってもらった。
オリックス投手陣の大黒柱としての活躍が期待される山下 photo by Sankei Visual
――ピッチャー陣の課題は、やはり山本由伸投手と山粼福也投手が抜けた穴をいかに埋めるかでしょうか?
星野伸之(以下:星野) 昨年は山下舜平大と東晃平が、規定投球回に満たなかったですが活躍してくれた。今年はこの2人がしっかり先発ローテーションを守って、規定投球回を達成する働きを見せてくれれば、由伸と福也の穴は埋められると思います。
――山下投手は一段と体が大きくなりましたね。
星野 そうですね。今回のキャンプでは朝のメニューにウエイトトレーニングが組み込まれていたようですし、山下はもともとウエイトトレーニングが好きですから。昨年は腰の故障でシーズン終盤に離脱してしまいましたし、シーズンを通じて戦える体作りを考えながらトレーニングをしていたんでしょう。(3月13日の)広島とのオープン戦で4イニングを投げましたが、危なげないピッチングでしたね(4回1安打無失点)。
昨年は間隔を空けながらの登板にもかかわらず9勝を挙げているので、"ローテーションの柱"として回れば15勝は狙えるんじゃないか、という期待感があります。一方の東は、すでに完成度が高いピッチャー。昨年のシーズン、クライマックスシリーズ、日本シリーズでも負けていません。昨年は10試合しか登板しませんでしたが、シーズンを通じてローテーションを守れたら、どれぐらい勝てるのか楽しみです。
――先発ローテーションは今挙がった2人と宮城大弥投手、田嶋大樹投手らが中心に回ると思われますが、そこに続いてきてほしい先発ピッチャーは?
星野 2年目の曽谷龍平です。本人と話した時に言っていたのは、「昨年は常に力んでしまっていた」ということ。なので、力の抜きどころを課題に挙げていたのですが、それがわかれば、逆に力の入れどころもわかってきます。それと、昨年の最後の登板でプロ初勝利をマークしたのですが、それは非常に自信になったと思います。ひとつ勝てて今年を迎えるのと、ひとつも勝てずに迎えるのとでは気持ちの面で全然違います。
あと、齋藤響介もいいボールを投げていますね。昨年は一軍の登板で4イニングしか投げていないので未知数ですが、出てきてほしいピッチャーですし、今年はある程度使っていきそうです。オープン戦で好投している山岡泰輔も、今年は先発で期待しています。
――昨年ファームで結果を残したピッチャーにも期待したいところですね。
星野 村西良太はアンダースローにしたことが功を奏し、ファームで最優秀防御率のタイトルを獲り、育成選手の佐藤一磨も最多勝利投手になりました。育成といえば、才木海翔や川瀬堅斗は非常にいい投げ方をしていますし、球威がある。それと、みんないい体をしていますね。若いのに"出来上がって"います。
ソフトバンクのキャンプを視察した時に思ったのが、オリックスの選手たちはやはり「体が大きいな」ということ。もちろん、柳田悠岐や山川穂高ら他球団でも大きい選手は目につきますが、オリックスは全体的に大きい。ほかのチームの選手たちと同じグラウンドで見た時に、その違いがよくわかります。
――ポテンシャルの高い若手のピッチャーたちが虎視眈々とチャンスを狙っている。
星野 そうですね。開幕にどんなメンバーが選ばれるかとかが注目されがちですが、結局のところ勝とうが負けようが1年間戦わなきゃいけないので、長いシーズンを考えると、期待の持てる若手ピッチャーが多いのは強みですね。中嶋聡監督もシーズンのどのタイミングでどんなピッチャーを上げるか常に考えていると思います。
【山本が抜けた穴は「全員で埋める」】――新外国人投手が3名加入しましたが、いかがですか?
星野 (ルイス・)カスティーヨと(アンダーソン・)エスピノーザは残りの先発枠を争う形になるでしょうね。カスティーヨは長身からサイド気味で投げるボールが打ちにくいと思いますが、長いイニングを投げられるかどうか。エスピノーザは真っすぐの威力はありそうですけど、決め球となる変化球がないのが懸念点です。
連戦が続くと先発ピッチャーは7、8枚必要になってくるので2人が入ってくる可能性はありますが、基本的には山岡や椋木蓮、曽谷、齋藤らと競わせる形でしょうね。そこに吉田輝星も絡んでいくかもしれませんし、「誰が出てくるか」という楽しみがあります。
――リリーフのアンドレス・マチャド投手は、どんな印象ですか?
星野 球威がありますし、球速も160km近く出たりしていますが、課題は制球ですね。スライダー、チェンジアップ、ツーシームの精度が上がってきたらバッターは相当に厄介じゃないかと。勝ちパターンを担うセットアッパー、もしくはクローザーとして期待されているでしょうし、今後の調整次第でどこまで状態を上げていくか注目です。
――昨年まで、「ここぞ」という試合には山本投手が登板し、多くの勝利を収めてきました。まさに大黒柱だったわけですが、その役割は誰が担っていくことになりそうでしょうか?
星野 3年連続で投手4冠(勝利、防御率、勝率、奪三振)を達成した由伸の代わりはいません。なので、「由伸の抜けた穴を全員で埋める」という意識を各ピッチャーが持つべきなのかなと。
イニング数に関しては、昨年は故障離脱であまり投げていない山下や、10試合のみの登板だった東が規定投球回数に達するか、それに近いイニングを投げられれば埋まるでしょう。勝ち星に関しては、西川龍馬を補強して厚みが増した打線の援護に期待したいところです。
得点力がアップして点差をつけられれば、先発ピッチャーにもう1イニング多く投げさせられる場面が増え、リリーフを休ませることができます。とはいえ打線は"水物"なので、リリーフを厚めにしてもいいのかなと。極端に言えば、由伸が登板する試合はベンチ入りしたリリーフ陣もゆっくりできる「休日」みたいなものでしたし、緊張感があったのは9回に投げる平野佳寿ぐらいだったはず。そういうピッチャーがいなくなったんですから、リリーフの人数を多めにするのもひとつの策だと思います。
(野手編:「西川龍馬は5番がいい」 今季の打順やポジションはより「変幻自在」>>)
【プロフィール】
星野伸之(ほしの・のぶゆき)
1983年、旭川工業高校からドラフト5位で阪急ブレーブスに入団。1987年にリーグ1位の6完封を記録して11勝を挙げる活躍。以降1997年まで11年連続で2桁勝利を挙げ、1995年、96年のリーグ制覇にエースとして大きく貢献。2000年にFA権を行使して阪神タイガースに移籍。通算勝利数は176勝、2000三振を奪っている。2002年に現役を引退し、2006年から09年まで阪神の二軍投手コーチを務め、2010年から17年までオリックスで投手コーチを務めた。2018年からは野球解説者などで活躍している。